新型BMW 435i クーペ(F32)【試乗評価】豪快な動力性能と美しいスタイリング [DBA-3R30]

BMW435iクーペ前面画像

今回の【試乗評価】は「新型 BMW 4シリーズ 435i クーペ M Sport(F32)」。
2013年に登場した、Mクラスの2ドアクーペです。

こういったクラスのプレミアムクーペは、「4ドアセダンでは地味過ぎて面白くない、かといってド派手はスーパースポーツに乗るのも気が引ける」とか、「適度なブランド力とパーソナルな雰囲気、それなりの実用性を両立したい」なんて考えている人に根強い人気のあるジャンルです。

先代3シリーズクーペは、そんな人たちに向けて開発されたモデルで、カッコいい外観と必要十分な実用性を両立していました。

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【試乗レポート】新型 BMW 420i グランクーペ [DBA-4A20]

2016年1月8日

今回試乗した「4シリーズクーペ」は、贅沢な2ドアクーペ「3シリーズクーペ」の実質的な後継車種となるモデルです。この2ドアクーペの他に、「4シリーズグランクーペ」と呼ばれる4ドアクーペ(5ドアハッチバック)と、2ドアオープンの「4シリーズカブリオレ」もあります。

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新型 BMW 320i M Sport(F30)【試乗評価】美しいボディと走りの喜び [DBA-3B20]

2015年12月23日

BMWがこの車に、「4シリーズクーペ」として独立したモデル名を与えたのは、「3シリーズ」よりもちょっとだけ上級なモデルとして売り出したかったからでしょう。それなら、多少価格が高くても文句は出にくいですもんね。

じっくりと読む時間の無い人は、文末の「【試乗評価】のまとめ」をどうぞ↓
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「新型 BMW 4シリーズ 435i クーペ M Sport(F32)」の概要

デザインのモチーフは「3シリーズセダン」と同じなんで、両車のイメージはよく似ています。セダンとプラットフォームやコンポーネントの多くを共用していますが、外板パネルの大半は4シリーズクーペ専用です。このあたりの手法は、先代の3シリーズクーペと変わりません。さしずめ、「BMWならではの伝統的な手法」といったところでしょう。

3シリーズセダンと比較すれば、全長が長く幅も広い、逆に全高は低くデザインされ、ロー&ワイドのカッコいいスタイリングになってます。

プラットフォームは「3シリーズ」と共有

モデル名は「4シリーズ」となって独立しましたが、基本となるプラットフォーム(車台)は「3シリーズ」と同じです。

さらに、2016年の改良で新開発されたモジュラーエンジンを導入。同時に「435i」は「440i」というグレード名に格上げされましたが、排気量自体は変わりません。

このエンジンは直噴化されており、ツインスクロールターボチャージャーや無段階バルブコントロールシステム、バリアブルカムシャフトなんかで高性能化。「435i」よりも出力と燃費性能が向上してます。

昔のBMWなら排気量とグレード名がリンクしていたんで分かりやすかったんですが、今は「排気量が同じでも出力が上なら、格上のグレード名が付けられる」というルールになってるんですねえ。

ライバルは「Mクラスのプレミアムクーペ」

ライバルは、Mクラスのプレミアムクーペ。「メルセデスベンツ・Cクラスクーペ」や「アウディ・A5」、「レクサス・RC」なんかでしょう。その中で「4シリーズクーペ」は、カッコいいスタイリングとスポーティな走りがアドバンテージです。

2017年にマイナーチェンジ

2017年にマイナーチェンジを実施。「LEDヘッドライト」と「LEDリアコンビランプ」のデザイン変更。装備品の充実。「マルチディスプレイメーターパネル」や「HiFiスピーカーシステム」の標準装備など、内外装のアップデートを中心に改良が行われました。

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外観

ボディサイズ、全長4670mmX全幅1825mmX全高1375mm。ホイールベース、2810mm。

BMW435iクーペ後部画像

実質的な先代となる「3シリーズクーペ(第5世代・E92)」と比較すると全高で25mm低く、全幅は45mm広い。つまり、もともと「ロー&ワイド」なクーペが、さらに「ロー&ワイド」になっているという訳です。

ベースとなっている「3シリーズセダン(第6世代・F30)」と比較してもその傾向は一緒で、セダンよりも「幅が広く薄い」精悍なスタイリングとなってます。

パッと見は同じように見えるセダンとクーペですが、並べてみるとその違いがよく分かりますねえ。全体を貫く大きなデザインモチーフは変わりませんが、細かな処理やバランスが全然違うんです。共通の部品も少ないんで、ほとんど専用ボディと言ってもいいくらいでしょう。

フロント

セダンと同じ「グリルとヘッドライトが繋がった」デザインモチーフを使ってますが、4シリーズクーペの場合は、よりワイド感を強調した「薄く幅の広い」デザインです。これに「M suport」が装着され、スポーティでダイナミックな感じを演出してます。まあ、惚れ惚れするくらいカッコいいお顔です。

サイド

低いルーフに小さなキャビン(居住スペース)。セダンと比較するとよりロングノーズ(鼻先が長い)で、ショートデッキ(居住スペースが小さい)な感じが強いです。しっかり人と荷物が積める実用車でありながら、こんなにエレガントな車はそうそうありません。

リア

端正なリアエンドを持つ「3シリーズセダン」に対して、「4シリーズクーペ」のリアエンドはダイナミックで力強い印象です。同じデザインモチーフを使いながら、全然違う印象を持っているのは、「グッと力強く張り出したリアフェンダー」や、「小さく絞り込まれたキャビン」なんかのコントラストが効いているんでしょうねえ。

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内装

BMW435iクーペ内装画像

4シリーズクーペと3シリーズセダンの内装を比較すると、クーペのほうが若干着座位置が低くスポーティなんですが、内装のデザイン自体はほとんどかわりません。

BMWらしいゴツゴツとした質感のインパネにピアノブラック調パネル。シルバーの加飾パネルや本革素材なんかを組み合わせているんで、けっこう豪華な感じになってますねえ。「M Sport 」グレードの場合は、さらに「3本スポークの本革巻きステアリング」も付くんでスポーティな雰囲気もあります。

BMW435iクーペメーター画像

メーターナセルには、BMW伝統の大型二眼メーターが装備されてます(写真は”420i クーペ M Sport(F32)”の内装)。華やかさや遊び心は控えめが、くっきりとした表示で視認性は高いです。機能優先のデザインですが、けっして野暮ったいということはありません。ドイツ製のいかにも精密な機械って感じで、かえってカッコいいくらいです。

※2017年のマイナーチェンジで、普通のアナログメーターから、フルデジタル表示の「マルチメーターディスプレイパネル」へと変更されました。アウディでお馴染みの、いわゆる「バーチャルコックピット」ってやつです。

BMW435iクーペナビ画像

センタークラスター(ダッシュボード中央)最上段には、高精度ワイド液晶ディスプレイがあります。横に長いデザインなんで、「左に広域マップ、右には詳細マップを表示する」なんて使い方をすれば、2つの情報をいちいち切り替えなくても済むんで便利です。

その直下には、オーディオのコントロールユニット。さらにその下、中段にあるのはエアコンのコントロールユニットです。つまみは小さいですが、ダイヤル式でけっこう高い位置にあるんで、操作自体はしやすいと思います。左右で別々に温度調整ができるのも、うれしいポイントですね。僕が若い頃は人より体温が高かったので、しょっちゅう助手席の人に「クーラー効きすぎじゃない」と注意されたもんですが、これならそんな心配はいりませんね。

シート

BMW435iクーペシート画像

フロントシートは、しなやかなダコタレザー(写真は”420i クーペ M Sport(F32)”のファブリックシート)に、薄めだがコシのあるクッションを組み合わせたセミスポーツシート。立体的な形状でサイズも「ほどほど」なんで、大柄な人には窮屈感があるかもしれません。といっても、体圧が集中して腰が痛くなるようなことはありませんから、長距離ドライブも苦じゃないです。

リアシートは、フロントドアから後ろへ潜り込むように入らないといけないけど、一旦、座ってしまえばセダンに近い快適性があります。シートの大きさも十分で、足元も広々。ルーフが多少頭に近い感じはありますが、頭につくほどじゃ無いです。大人二人で座っても、窮屈感はありません。

荷室

トランクスペースは、セダンと遜色無いくらいデカイです。これなら、家族4人で2泊3日旅行も余裕でしょう。さらに、リアシートの背もたれを”4:2:4”で分轄可倒すれば、ステーションワゴンなみの荷室が出現します。

床のフロアボードをめくれば、小物類を収納するためのツールボックスまであるんです。エレガントなクーペにセダン並の実用性があるんですから、車に興味の無い家族からも喜ばれると思います。

静粛性

シルキーな直列6気筒に、プレミアムセダン同等の遮音材が組み合わされるんで、うるさいはずがありません。上質なBMWの世界観を表現してます。

エンジンとトランスミッション

2979cc・直列6気筒DOHCターボエンジンに、8速ATを搭載。
エンジンは、最高出力306ps/5800rpm、最大トルク40.8kgf・m/1200-5000rpmを発揮。

車両重量1620kg。JC08モード燃費、12.7km/l。

エンジン

3.0リッターのストレート6(直列6気筒)、ツインカムターボで後輪を駆動(FR)。

排気量3リッターにターボが付いているんで、パワーは必要十分以上。軽くアクセルを踏み込むだけで強烈な加速感が味わえます。自然吸気エンジンに換算すれば、5リッター相当のトルク感といったところでしょうか。。。ターボなんで、古き良き「シルキーシックス」とは若干「趣」が異なりますけど、エンジンの回転フィールにはしっとりとした上質感があるんです。エンジンを始動したときだけ「ヴォオン!」と野太い排気音を響かせますが、勇ましいのはそこだけ。基本的にはスムーズさを強調したエンジンとなってます。

高回転まで引っ張っても息継ぎ無くトップエンドまでスムーズに吹け上がるんだけど、そこは伝統あるBMW製の6気筒エンジン。一直線に単調に吹けがるなんて無粋な真似はいたしませんよ。ドラマチックな抑揚を伴って気持ちよく吹け上がるんです。

トランスミッション

トルコン式の8速ATを装備。フラットで分厚いトルクを持つストレート6の特性を十分に活かした、賢いトランスミッションです。

低い回転を維持して、スムーズかつダイレクトに変速。普通に町中を走ったり巡航している分には、めったやたらと回転を上げない設定なんで、上質なプレミアムクーペにピッタリだと思いました。

乗り心地とハンドリング

前輪にダブル・ジョイント・スプリング・ストラット式サスペンション、後輪には5リンク式サスペンションを装備。前後ともにスタビライザーで強化。

乗り心地

装着タイヤは、フロント225/40R19。リア255/35R19。

基本的には「硬め」の乗り心地なんだけど、しっとりとした上質感や重厚感があるんで、全然不快じゃないです。というよりも、むしろ快適な部類に入ります。硬いボディと高価なスポーツサス、ステアリング周りや足回りの取り付け剛性が高いのも効いてるんでしょうねえ。硬いランフラットタイヤを感じさせない、見事な「脚さばき」だと思います。

目地段差や橋脚ジョイントでは、路面からの衝撃を拾いやすいんですが、衝撃の角がまろやかなのと収束が速いのもあって、嫌な感じはありません。余計な雑味が無いんで、スッキリとしてます。

ドライビングパフォーマンスコントロール

「ドライビングパフォーマンスコントロール」は、「足回り」の硬さや「ステアリングの反応」、「エンジンのレスポンス」とか「トラクションコントロールの効き」などを統合的に制御するシステム。「コンフォート」を選択すれば、ゆったりとした反応でくつろげる乗り心地になりますが、「スポーツ」や「スポーツ+」を選択すると足回りは硬くなりエンジンのレスポンスも鋭く、常に分厚いトルク域をキープ。ステアリングも俊敏になるんでスポーティなドライビングを楽しめちゃいます。

ただし、「スポーツ+」は足回りがかなり硬く、荒れた路面や段差の多い場所では使いにくいです。ダイレクトな衝撃をガンガン車内に伝えてしまうんですよねえ。

ハンドリング

低い重心(500mm)と、前後「50:50」の理想的な重量配分。これに高剛性ボディやら電子制御式の高性能な足回りなんかが組み合わされるんで、ハンドリングはスポーティで俊敏。正確なライントレース性能を持ってます。さらに、フロントフレーム周りの剛性も強化(プラス60%)されとるから、ステアリングとボディの一体感が高いですよねえ。プレミアムクラスらしい、しっとりとした”滑らかさ”とか”スッキリ”した感じもなかなかです。

右へ左へと曲がりくねったワインディングに持ち込んでも、4つのタイヤがしなやかに上下して路面を捉え続けます。いわゆる”フラットライド”な感じで、路面に張り付いたままコーナリング中もずっと安定した姿勢をくずしません。

最小回転半径は5.4mと、ボディサイズにしてはまずまず。狭い路地や混雑した駐車場でも、取り回しに苦労する感じは無いです。この車には、低速で舵の効きが良くなるパワステが付いてるんですが、そんな工夫も効いてるんでしょう。

先進安全技術

ミリ波レーダーとカメラを組み合わせた「ドライビングアシスト」を全車に標準装備してます。

予防安全技術

危険の芽を未然に摘み取る「予防安全技術」としては、車線逸脱を検知するとステアリングを振動させて警告する「レーンディパーチャーウォーニング(車線逸脱警告システム)」や、前車との異常な接近を検知して警告、ブレーキアシストも行う「前車接近警告機能」、車や人との衝突を予測して回避、もしくは被害軽減をはかる「衝突回避・被害軽減ブレーキ(歩行者対応)」が付いてます。

それから、2016年の一部改良では、「レーンチェンジウォーニング」も追加されました。こいつは、斜め後方の死角から接近する車を検知してドアミラーのインジケータを点滅、ドライバーに注意喚起を促すシステムですが、それでもドライバーが気が付かず車線変更を行うと「ステアリング制御」が介入して事故を未然に防ぐようになってます。

運転支援技術

ドライブの疲労を軽減する「運転支援技術」としては、前車との間に適切な距離を保ちながら、設定された速度で追従する「アクティブクルーズコントロール(ストップ&ゴー機能付き)」を用意してます。

【試乗評価】のまとめ

「新型 BMW 4シリーズ 435i クーペ M Sport(F32)」は、Mクラスのプレミアム・クーペ。

ベースとなっているのは「3シリーズセダン」で、ボディデザインもよく似ていますが、実際はほとんどのパネルが新たに起こされた専用ボディです。セダンよりもワイド&ローなプロポーションによって、エレガントでカッコいいスタイリングになってます。

こんだけカッコいいのに、それなりの実用性があるのも4シリーズクーペの美点です。フロントシートはもとより、リアシートにもセダンに近い快適性がありますし、荷室にいたってはセダン並みの広い空間が確保されてます。

ターボで加給された6気筒エンジンは、BMWらしいスムーズで上質な回転フィールを持ちながら、有り余るパワーで強烈な加速を生み出します。

スポーティなハンドリングと引き締まった乗り味

セダンよりも引き締まった足回りは、「Mスポーツ」サスペンションによってさらに硬くなってますが、「当たり」がまろやかなんでそんなに嫌な感じはありません。というか、ちょっと上質な印象があるくらいです。といっても「Mスポーツ」は他のグレードよりも乗り味が硬いんで、「もっと柔軟な乗り味が良い」という人には、「Luxury」や「Sport」といった穏やかなグレードをオススメします。

もちろんハンドリングにもBMWらしい俊敏さがあります。理想的な前後重量配分と重心の低さ、スポーティな足回りのおかげでしょうねえ。

エレガントで美しいスタイリングとそれなりの実用性。スポーティな走り。プレミアムカーらしい上質感。「全部をひっくるめて一台で実現したい」という贅沢で欲張りな人にピッタリな車です。

※2016年の改良で新開発されたモジュラーエンジン(排気量は同じ)が搭載され、「435i」から「440i」へとグレード名も変更されてます。

中古車市場では

2015年式「BMW 4シリーズ 435i クーペ M Sport(F32)」で400万円前後。2016年式の後継グレード「440i クーペ M Sport」なら530万円前後(2019年1月現在)。

新車価格

8,030,000円(消費税込み)現在「435i クーペ」グレードは廃盤。後継は「440i クーペ」となってます。

ABOUTこの記事をかいた人

クルマ好きの40代男性。現在病気のため療養中です。

ブログは暇つぶし&リハビリ。週2で短時間のアルバイトをしていますが、普通の人のように毎日フルタイムで働くことはできません。

ブログの内容はあくまで秋ろーの個人的見解です。実際に車や商品、サービスを購入する際は、自分で試乗や調査をして確かめることをオススメします。

記事更新の時間は、大体、午後11時から12時頃にかけてを予定しています。

修正ばっかりしてると新記事の投稿ができないんで、新記事3に対して修正1くらいの割合でやってます(2019年6月〜)