新型BMW 340i Touring(F31)【試乗評価】豊かな生活を演出する良き相棒 [DBA-8B30]

今回の【試乗評価】は「新型 BMW 3シリース 340i Touring M Sports(F31・6代目)」。
2012年にフルモデルチェンジした、Mクラスのステーションワゴン(5ドア)です。

日本市場では、ミニバンやSUVの人気が高く、かつて大ブームを起こしたステーションワゴンは見る影もありません。ところが、逆にBMWのお膝元ヨーロッパでは、日常の足や長期休暇に出かけるためのロングツアラーとして未だに根強い人気があります。

まあ、もちろん、SUVの人気は世界的な傾向なので、ステーションワゴンだけが突出して売れているわけじゃありませんが、やっぱり、高速道路を長時間それなりのハイスピードで走り抜けようとすれば、重心が低くて荷物のたくさん積めるステーションワゴンの方が便利なのは確かです。

初代3シリーズが登場したのは1975年ですが、初代に用意されたのは2ドアセダンと2ドアカブリオレだけで、当時、ステーションワゴンはありませんでした。

その後、初代のコンセプトを受け継いだ2代目「3シリーズ」が登場すると、初めてステーションワゴンもラインナップに加えられます。初代の直線的なデザインを継承しながらも、なんとなく丸みが加えられていたんで、ちょっとだけエレガントな感じがしました。そういえば、バブルの頃、日本でバカ売れして「六本木カローラ」なんて呼ばれた事もありましたねえ。

比較的コンパクトなボディに、レスポンスの良い4気筒エンジン、もしくは上質なストレート6を積んで、ハンドリングも軽快。大人4人がなんとか座れるとなれば、人気が出るのも当然です。その後、モデルチェンジを繰り返して、3シリーズはどんどん大きくなっちゃいましたが、未だにこのスポーティなキャラクターだけは失われていません。ただ、でかくなった分、ラグジュアリーな快適性も増しているんで、この当時の軽快な3シリーズが好きなら、コンパクトな「1シリーズ」の方がしっくりとくると思います。

3シリーズセダンについては「新型BMW320i M Spots」、もしくは「新型BMW320d Luxury」のページをご覧ください。

じっくりと読む時間の無い人は、文末の「【試乗評価】のまとめ」をどうぞ↓
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「新型 BMW 3シリース 340i Touring M Sports(F31・6代目)」の概要

3シリーズには、ステーションワゴンの他に4ドアセダンと5ドアハッチバックの「グランツーリスモ」がありますが、先代モデルにあった2ドアクーペは「4シリーズ・クーペ」として独立したモデルになってます。

ステーションワゴンと聞くと、セダンよりも全長が長いイメージがあります。しかし、3シリーズ・ツーリングの全長はセダンとまったく同じなんです。全幅や全高、ホイールベースもセダンと変わりません。ステーションワゴンであっても、「3シリーズのスポーティなキャラクターを壊したくない」というBMWの設計思想がなんとなく透けて見えるようです。

先代よりも、全長で110mm、全高で25mm、ホイールベースは50mm拡大されてますが、全幅だけは1800mmのまま。これは、日本仕様だけの特別なしつらえ(欧州仕様の全幅は1811mm)で、ドアハンドルのデザインを薄くすることで実現してます。日本の狭い道路事情では「1800mm」がギリギリだという判断なんでしょう。日本の事情に合わせて細やかに作り分けられているなんて、なんだか嬉しくなりますね。

グレードは、基本となる「ベースグレード」の他に、「ラグジュアリー」と「スポーツ」2つのデザインラインがあります。さらにスポーティなグレードとして、「Mスポーツ」も用意。このグレードにはMスポーツ社製のエアロと足回りが装着されてます。

ライバルは、Mクラスのプレミアム・ステーションワゴン

ライバルは、「メルセデスベンツ・Cクラス ステーションワゴン」や「アウディ・A4 アバント」といった、Mクラスのプレミアム・ステーションワゴン。ただし、「アウディ」はFFベースなんで、やっぱり直接的なライバルといったら「メルセデスベンツ」でしょうねえ。

2015年にマイナーチェンジ

2015年にマイナーチェンジ。内外装の小変更と新しいグレードの追加。エンジンの改良や、安全機能の強化が行われてます。340iはこのタイミングで追加された新グレードで、搭載されるパワーユニットは、新開発されたモジュラーエンジン「3リッター・直列6気筒・ツインカムターボ」です。

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外観

ボディサイズ、全長4645mmX全幅1800mmX全高1450mm。ホイールベース、2810mm。

フロント

低く身構えたフロントノーズに、薄型のキドニーグリルと、シャープなLEDヘッドライトを組み合わせてます。ひと目でBMWだと分かる、精悍なフロントフェイスです。

マイナーチェンジでフロントまわりが若干変更され、ヘッドライトがフルLED化されました。LEDリングは角ばったメカニカルなデザインに、ウィンカーのデザインにも手が加えられて、キリッとした感じになりました。全体としては、前期モデルよりも精悍な感じです。

同時に、無粋な箱型デザインだったミリ波レーダーのユニットも洗練され、目立たない奥まった位置に移動してます。前期型はあまりにDIY感丸出しでしたからねえ。

「M Sports」グレードについては、大きな変更はありません。バンパーやエアロの形状も従来通りです。

サイド

3シリーズ・ツーリングのボディサイズは、セダンとまったく同じです。といっても、ルーフが後方まで延長され、そこで傾斜の強いDピラー(一番後の柱)と連結されるため、セダンよりも薄く長いプロポーションに見えます。

まあ、要するに錯覚なんですが、そのおかげで、セダンよりも伸びやかでエレガントな雰囲気があります。

リア

強く傾斜したリアウィンドウに、力強いリアコンビランプの組み合わせ。

リアコンビランプのリフレクター形状が変更され、帯状のLEDライナーが折り重なるようにデザインされてます。そのせいか、ちょっとだけ上質感がアップした感じです。

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内装

ゴツゴツとした樹脂に、ピアノ調ブラックのパネル。控えめにあしらわれたメタリックパーツが、BMWならではのゴージャスな世界観を作ってます。

マイナーチェンジで素材が見直され、質感が向上しました。ひとつひとつの変更は小さいため、指摘されないと気づかないかもしれません。

ボディサイズはセダンと同じで、インパネ周りのデザインも変わりません。ただし、ツーリングワゴンは、荷室とキャビン(居住スペース)が一体になっているため、広々感は桁違いです。

ボディが曲線で覆われていてノーズも長いため、車両感覚はつかみにくいです。といっても、ドライビングポジションが適切で視界も広いため、とくに運転のしにくさは感じません。

センターコンソール

センターコンソール最上段の見やすい位置に、ナビゲーションなどを表示するカラーワイド液晶パネル。中段にはエアコンのコントロールユニット。手探りでの操作もしやすいダイヤル式です。左右でそれぞれ温度調整ができるため、室内の温度をめぐって言い争いになることも無いでしょう。高齢者と若者、女性と男性など意外と好みの室温は違うんで、この手の機能は助かります。

シート

フロントシートは、アルカンターラとファブリックのコンビシート。スポーティな形状で、やや硬めのクッションに柔軟な表皮が組み合わされてます。サイドサポートがしっかりとしているため、がっちり体型の僕にはちょっとだけタイトです。普通体型の人やスリムな人なら問題無いと思います。

車を買う前に、シートの座り心地を確かめないなんておっちょこちょいな人はいないでしょうけど、自分の体型が気になる人は必ず座ってみてくださいね。試乗ができればベストですけど。

リアシートは、シートサイズも十分で表皮の柔軟性にも問題ありません。ツーリングワゴンはセダンと違ってルーフが後方まで延長されているため、頭上空間も広々。足元にも余裕があるんで、大人二人で座っても快適に移動ができます。

夏の暑い日なんか、セダンの場合はジリジリと後頭部に太陽からの熱線が当たりますけど、その点、ツーリングワゴンはルーフが後方まで延長されてるんで、その点は心配いりません。リアシートはガラスの透過率も低いんで(スモークが濃い)、なおさら涼しいですよ。

荷室

セダンとボディサイズが同じといっても、ボディ形状が違うんで荷室容量はセダンよりも大きいです。先代3シリーズと比較しても一回り大きくなっていて、495リッターの容量があります。

リアシートの背もたれを倒して折りたためば、さらに容量は拡大されて、最大容量は1500リッターです。

使い勝手もかなり良くなっていて、狭い場所で小物の出し入れをする時には、リアウィンドウ(ガラスハッチ)だけを開閉したり、両手が荷物でふさがっているときは、足をリアバンパーの下へ差し入れるだけでリアゲートを開閉するなんて事もできちゃいます。

静粛性

静かなストレート6と、車内にたっぷりと施された遮音材によって、プレミアムクラスにふさわしい静粛性があります。

エンジンとトランスミッション

エンジンに、2997cc・直列6気筒DOHCターボを搭載。
最高出力326ps/5500rpm、最大トルク45.9kgf・m/1380-5000rpmを発揮。

車両重量1730kg。JC08モード燃費、13.5km/l。

エンジン

3.0リッターのストレート6、ツインカムターボで後輪を駆動(FR)。

新世代の環境基準に適合した新しいパワーユニットで、前期モデル「335i」に搭載されていた3Lエンジンとは別物。いわゆる「モジュラーエンジン」というやつで、搭載される車種によって柔軟に排気量を変えることができるのが強みです。基本的に1気筒につき500ccという設計なんで、3リッターエンジンの場合は必然的に6気筒となります。燃費も前期モデルの12.7km/lから、13.5km/lへとかなり向上しとりますね。

1.7tを超える重量級ボディですが、3リッターエンジンにターボが付いているんで、力強さはかなりのもんです。低速から湧き上がるようなトルクを発生してグイグイと加速、数値でいうなら4.5リッター自然吸気エンジン並のトルクがあります。

伝家の宝刀「シルキーシックス」

BMWのストレート6といえば、従来から「シルキーシックス」と呼ばれるほど回転フィールに定評がありますが、今回もその期待は裏切ってません。低回転から高回転までよどみなく吹け上がり、シルキーの名にふさわしい緻密で芳醇なフィールを味あわせてくれます。ターボならではの荒々しさみたいなものは全然無くて、さしずめ大排気量の自然吸気エンジンのようですな。

このモデルは普通のガソリン車ですが、搭載されるバッテリーに燃費向上のためのちょっとした工夫がしてあります。例えば、バッテリーがフル充電されてる場合はオルタネーターを停止して、エンジンの負荷を低減させたり、ブレーキングの時は、出力の小さな回生ブレーキを作動させてバッテリーに充電するという具合です。単なる個体差かもしれませんが、ブレーキの立ち上がりに若干唐突な感じがあるのはコイツのせいでしょう。

トランスミッション

トルコン式の8速ATを装備。

最近のトルコン式ATはどんどん多段化されているんで、8速くらいじゃあ何も感じなくなっちゃいました。しかし、このトランスミッションは、そんじょそこらのトランスミッションとは作りが違います。

ダイレクトな変速感を活かしながら、スムーズで緻密なフィールも感じさせるんです。状況にあわせて瞬時に適切なギアを選択、必要なトルクを生み出します。これだけ効率が良ければ、燃費向上にも大きく貢献しているはずです。

乗り心地とハンドリング

前輪にダブル・ジョイント・スプリング・ストラット式サスペンション、後輪には5リンク式サスペンションを装備。試乗車には、オプションとして「アダプティブMサスペンション」が追加されてました。

乗り心地

装着タイヤは、フロント225/45R18。リア255/40R18。

重い車重を活かした、重厚感あふれるしなやかな乗り味。マイナーチェンジで足回りのセッティングが見直され、BMWらしい硬質感の中にもしっとりとした柔軟性があります。ひとことで言えば「熟成された」ってことです。

目地段差では、オプション装着される「アダプティブMサスペンション」が路面からの衝撃を柔軟に吸収するんで、不快な感じはありません。うねりを超える時やコーナリング中も、ボディは自然な動きでフラットさを保ちます。マイナーチェンジで向上した、ロードホールディング性能が効いてるようです。

今回の3シリーズには、「ドライビング・パフォーマンス・コントロール」という、車の特性を任意に調整するデバイスが付いてます。こいつはエンジン特性からトランスミッションの変速スケジュール、サスペンションの減衰力(「アダプティブMサスペンション」装着車のみ)、ステアリング特性まで統合的に制御するんで、モードによって別の車に乗っている感じになります。個人的には、快適性を重視した「コンフォート」が一番好みでした。

ハンドリング

キビキビとしたスポーティなハンドリング。操舵に対する精度が高く、ステアリングを切った分だけダイレクトにノーズが反応します。とにかく気持ちよく曲がるんです。

軽量化したエンジンをフロントミッドシップに搭載しているせいか、鼻先が軽く軽快ですねえ。最適化された前後重量配分や、FRならではの素直なステアリングフィールなんかも効いているんでしょう。自然と運転が楽しくなります。

ロールもしっかりと抑え込まれており、ちょっとやそっとでは姿勢を乱しません。コーナーの連続するワインディングでも、フラットな姿勢を維持してスイスイと走り抜けちゃいます。

最小回転半径は、5.4m。ボディサイズとかスポーツサスの装着を考えれば、まあ、標準的なレベルだと思います。

【試乗評価】のまとめ

「新型 BMW 3シリース 340i Touring M Sports(F31・6代目)」は、Mクラスのプレミアム・ステーションワゴン(5ドア)です。

ステーションワゴンの利便性とカッコよさ、セダンと同等の走りを持った欲張りな車だと思います。まあ、ステーションワゴンがカッコいいと感じるのは、オジサン世代だけかな?

ステーションワゴンは利便性とか合理性だけじゃなくて、豊かな生活をイメージさせる「小道具」というか「脇役」のような役割もあります。特に「BMW」のような高級車を購入する人たちは、車に実用性以上の付加価値を求める傾向が強いんで、こういったイメージは大切です。

何をどうすれば「そんなイメージを持たせることができるのか?」というのは、なかなか一言でこうと言いにくいんですけど、「BMW 3シリーズ ツーリング」にはこの豊かなイメージが間違いなくあります。「週末に家族揃ってキャンプに出かけよう」とか、「彼女とロングドライブをかねてピクニックに」とか、「友人たちと趣味の釣りにでかけたい」なんて楽しいイメージがどんどん湧いて来るはずです。

「忙しい日常を忘れて、週末をゆったりと過ごすためのグランドツーリングカーが欲しい」とか、「ステーションワゴンを買って、自分なりの豊かな生活を演出したい」なんて人にピッタリな車だと思います。

中古車市場では

2016年式「BMW 3シリース 340i Touring Luxury(F31・6代目)」で450万円前後。2014年式「BMW 3シリース 335i Touring M Sports(F31・6代目)」で300万円台前半(2019年1月現在)。

新車価格

8,720,000円(消費税込み)

ABOUTこの記事をかいた人

クルマ好きの40代男性。現在病気のため療養中です。

ブログは暇つぶし&リハビリ。週2で短時間のアルバイトをしていますが、普通の人のように毎日フルタイムで働くことはできません。

ブログの内容はあくまで秋ろーの個人的見解です。実際に車や商品、サービスを購入する際は、自分で試乗や調査をして確かめることをオススメします。

記事更新の時間は、大体、午後11時から12時頃にかけてを予定しています。

修正ばっかりしてると新記事の投稿ができないんで、新記事3に対して修正1くらいの割合でやってます(2019年6月〜)