新型 BMW 1シリーズ 118i M Sport(2代目・F20)【評価レビュー】マイナーチェンジによって精悍な顔つきに [DBA-1R15]

BMW 1シリーズ 118i M Sportのイメージ

今回の【評価レビュー】は「新型 BMW 1シリーズ 118i M Sport(2代目・F20)」。2011年から2019年まで製造販売されていた、スポーティな小型5ドアハッチバックです。

先代の「初代 BMW 1シリーズ」は、2004年にデビューしたコンパクトハッチ。3シリーズ(E90)のコンポーネントを使って設計された、Cセグメント唯一の後輪駆動(FR)でした。

コンパクトなボディにBMW伝統の「FRレイアウト」を組合せていたため、素直でスポーティなドライブフィールがありました。販売も好調で、全世界ではなんと100万台以上を売り上げてます。売上の内容も素晴らしく、既存のBMWモデルからユーザーを奪うんじゃなくて、ライバルメーカーの顧客を囲い込むかたちで売上を伸ばしてます。

現在、グループ内には1シリーズよりもさらにコンパクトな「MINI」がありますが、あちらはBMWブランドじゃないんで、現在もBMWのエントリーカーといえばこの「1シリーズ」になります。

ミニOneクロスオーバー前面画像

新型 ミニ クロスオーバー(R60)【試乗評価】高い実用性と薄まったキビキビ感 [CBA-ZA16]

2016年3月31日

BMW最小のエントリーカーといっても、フロントにエンジンを縦置きして後輪を駆動する「FRレイアウト(後輪駆動)」とか、「前後重量配分50:50」、「駆け抜ける喜び」といったBMWならではの魅力はしっかりと作り込まれてます。

ただし、このクラスのプレミアムコンパクトカーに、FRらしい走りの質感を求める人はそんなに多くないかもしれませんねえ。その証拠に「メルセデスベンツAクラス」とか「アウディA3」といったライバル達は、オーソドックスな「FFレイアウト(前輪駆動)」を使ってます。2010年登場の後継機、「新型1シリーズ(3代目)」もFFになっちゃいましたしね。。。

じっくりと読む時間の無い人は、文末の「【試乗評価】のまとめ」をどうぞ↓
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「新型 BMW 1シリーズ 118i M Sport(2代目・F20)」の概要

「2代目 BMW・1シリーズ」は、そんな初代のコンセプトをそのまま受け継ぐキープコンセプトモデルです。「フロントにエンジンを縦置きにして後輪を駆動する(FR)」とか、「スポーティな5ドアハッチバックの外観」、「優れた前後重量配分50:50」といった初代の美点もそのまま受け継いでます。

初代1シリーズには、クーペやカブリオレといった変わり種ボディもありましたが、今回からは「2シリーズ・クーペ」&「カブリオレ」として独立したモデルに移行しちゃいました。このあたりは、ちょうど「3シリーズ・セダン」と「4シリーズ・クーペ」の関係性に似てます。ということで、1シリーズとしては「5ドアハッチバック」だけのシンプルなモデル構成です。

FRのメリットとは?

FRレイアウト最大の魅力は、車の向きを決める操舵を前輪が担い、路面に駆動力を伝える仕事を後輪が担うんで「ステアリングフィールがスッキリとしている」ってことにあります。操舵に対する車の動きも素直なんで、運転が楽しいです。もちろん、最近のFF車も改良が進んでいて「FFならではの楽しさ」ってのは十分あります。このあたりは、どちらが良いとか悪いじゃなくて、純粋に趣味の領域になります。

反面、FRのデメリットとしては、「エンジンと後輪をつなぐドライブシャフトがあるんで、車内にでかいセンタートンネルが盛り上がっている」とか、「エンジンを縦置きにするためフロントノーズが長く、室内がせまくなりがち(特に前後長)」、「メカが複雑で重く、コストも割高」なんてのがあります。

コンパクトな5ドアハッチバックに「FFレイアウト」が多いのは、このあたりのデメリットを嫌ってのことです。

初代と比べるとボディがひと回り拡大

初代と比べると、全長とホイールベースを中心にボディをひと回り拡大。その分、後席のレッグスペースも広がって、居住性がグッと良くなってます。

コンパクトなサイズを維持しながら、高い実用性と取り回しの良さ、FRらしい素直なハンドリングを実現してます。このあたりを全部注文するなら、ほとんど日本で唯一の存在といっていいでしょう。

販売面も好調で、今では3シリーズの次に数の稼げるモデルに成長してます。「BMWの大黒柱」といえばちょっと言い過ぎですが、「屋台骨」って感じは十分あります。

グレード構成は3種+ホットバージョン

グレード構成は、1.5リッター3気筒ターボを搭載する「118i」、2.0リッター4気筒ディーゼルターボの「118d」、2.0リッター4気筒ターボを搭載する「120i」。それからホットバージョンとして、3.0リッター6気筒ターボを搭載する「M140i」もあります。

その他には外装デザインの違いによるバリエーションとして(「M140i」以外のモデル)、ベーシックな「ベースグレード」、スポーティな外装の「Sport」、カジュアル雰囲気を楽しむ「Style」。スポーティなエアロに専用スポーツサスを組み合わせた「M Sport」があります。

プラットフォームなど

基本となるプラットフォーム(車台)は、先代と同様3シリーズのものを改良して使ってます。

組み合わされるパワーユニットは、プジョーシトロエングループと共同で開発した「1.5リッター3気筒ターボ」です。元々、MINIクーパーSのために開発されたFF用の横置きエンジンですが、1シリーズに使うためFR用として縦置きに手直してます。低速から最大トルクを発生するセッティングで、街中で扱いやすく燃費も良いです。

ライバルは

プレミアムセグメントのコンパクトカー(5ドアハッチバック)としては、唯一のFRレイアウトなんで、他社に目ぼしいライバルは存在しません。

価格やサイズから考えると、「アウディ・A3」や「メルセデスベンツ・Aクラス」なんかがライバルになります。

マイナーチェンジ情報

2015年にマイナーチェンジを実施。内外装のデザインが変更され、フロント周りを中心に精悍な印象になってます。その他には、予防安全システム「ドライビング・アシスト」の装備やグレード体系の見直し、エンジンの改良なんかも行われました。

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外観

全長4340mmX全幅1765mmX全高1430mmのボディサイズを持ち、ホイールベースは2690mmとなります。

フロント

BMW 1シリーズ 118i M Sportのフロント

低く身構えたフロントノーズにシャープなLEDヘッドライト。スポーティなMスポ専用フロントバンパー。さらに薄型キドニー・グリルも装備。精悍で若々しい印象のフロントフェイスです。

上質感では3シリーズなどの上級モデルに及びませんが、1シリーズならではの小気味いいカッコよさが表現されています。

サイド

ロングノーズに薄く長いキャビン。前後ギリギリに配置されたホイール。傾斜の強いAピラー(一番前の柱)となだらかなルーフ。軽快感あふれるスポーティなサイドビューを形づくっています。

リア

BMW 1シリーズ 118i M Sportのリア

グラマラスなヒップラインに小さく絞り込まれたキャビン。大地を踏みしめるように力強く広がるリアフェンダー。Mスポ専用となるダイナミックなリアバンパー。何気ない後ろ姿にも、ガッシリとした力強さを感じさせます。

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内装

プラスチッキーな樹脂にピアノブラック調パネル。清潔感を感じさせるシルバーパーツが組み合わされ、シンプルでスポーティな室内を演出。

センタークラスター(インパネ中央)最上段には、ナビゲーションやオーディオ、車輌情報などを表示するフローティングディスプレイ(8.8インチ・ワイド・コントロール・ディスプレイ)。タッチディスプレイと見やすく整理されたグラフィックによって操作がしやすいです。

その直下、比較的高い位置にエアコン吹き出し口があり、離れた後席へも快適な空気をしっかりと届けます。エアコンは手探りでの操作もやりやすいダイヤル式。

メーターナセルには、BMW伝統の精密な大型二眼メーターを配置しています。ステアリングはスポーティなデザインがやる気にさせる「Mスポーツ・レザー・ステアリング・ホイール」。

Aピラーの根本には大きなドアミラーが配置されるものの、ピラーが手前にあるので死角は小さめ。運転席からもしっかりとボンネットが見えるため、車幅がつかみやすく運転しやすいです。ただ、Dピラー(一番後の柱)が太いので斜め後方の視界はけっこう制限されます。

シート

フロントシートは、ファブリックとアルカンターラのコンビシート。適度なサイドサポートを装備したスポーティな形状で、しなやかな表皮にコシのあるクッションが組み合わされます。体圧をキレイに分散して、腰の高い位置からお尻、太ももに掛けてガッチリと支えます。僕の身体には少し小ぶりですが、標準的日本人体型なら問題無いでしょう。

リアシートはルーフが低く、同クラスコンパクトカーと比較すれば少々狭いです。といっても、ヒップポイントが低く、大人二人で座るための適切なスペースは確保されています。スタイリッシュな外観とFRレイアウトを考慮に入れれば、十分すぎるパッケージングです。

荷室

スタイリッシュなハッチバックにしては荷室容量は大きめ。家族4人であれば、2泊3日旅行も可能です。リアシートの背もたれを倒せば、ステーションワゴンのような使い方もできます。

静粛性

エンジンは3気筒とは思えないほど静かで、ロードノイズ、風切音もよく抑えられています。

エンジンとミッション

1498cc・直列3気筒DOHCターボエンジンに、8速ATが組み合わされます。
最高出力136ps/4400rpmと、最大トルク22.4kgf・m/1250-4300rpmを発揮。

車両重量1430kg。JC08モード燃費は、18.1km/l。

エンジン

1.5Lツインカムターボで後輪を駆動(FR)。直列4気筒1.6Lターボから、直列3気筒1.5Lターボに換装されましたが数値性能はほぼ同じ。最大トルクの発生回転数が若干低くっています。

低速からスムーズに吹けがる扱いやすいエンジンです。街中など平坦路では必要十分のパワーを発揮。3気筒にしては比較的静かで、アクセルを踏み込めばそれなりに小気味いいエンジンサウンドを発生します。ただし、バランサーシャフトが搭載されるといっても、古き良きシルキー6のような上質感はありません。

トランスミッション

トルコン式の8速AT(ZF社製)を装備。スムーズかつダイレクトで、気持ちの良い変速フィールをもたらします。

乗り心地とハンドリング

前輪にダブル・ジョイント・スプリング・ストラット式サスペンション、後輪には5リンク式サスペンションを装備。

乗り心地

装着タイヤは、前225/45R17、後245/40R17(前後異径)。

適度に引き締まったスポーティな乗り味。路面の段差ではコツコツと衝撃を拾いがちですが、アタリがまろやかなため不快な印象はありません。プレミアムコンパクトにふさわしい上質感があります。

長いホイールベースに前後50:50の優れた重量配分。低い全高、引き締まった足回り。それぞれの要素が絶妙に組み合わされ、低速から高速域まで全域で高い安定性を示します。

ハンドリング

FRらしい素直で自然なハンドリング。ステアリングセンターからの微小舵角にも正確に反応して、狙ったラインにキッチリとノーズを向けようとします。スッキリとした操舵感が気持ちいいです。

ロールの出方も最小限で、外側のサスを僅かに縮ませながら安定して姿勢で走り抜けます。リアの接地性とハンドリングのバランスが素晴らしいです。

最小回転半径は5.1mと、結構小回りが効きます。見切りの良いボディと相まって、取り回しは上々。狭い場所でも容易に切り返すことができます。

その他

先進安全技術は最新の「ドライビング・アシスト」を搭載。

このパッケージには「レーン・ディパーチャー・ウォーニング(車線逸脱警告システム)」や「前車接近警告」、「衝突回避・被害軽減ブレーキ」などが含まれます。

その他には運転支援技術として、先行車との距離を保って一定の速度で追従する「アクティブ・クルーズ・コントロール(ストップ&ゴー機能付き)」や、駐車場にある前後の障害物との距離を知らせる「パーク・ディスタンス・コントロール」といった機能も装備。

【評価レビュー】のまとめ

「BMW 1シリーズ 118i M Sport」は、1.5Lツインカム・ターボエンジンを縦置きにして後輪を駆動(FR)する、プレミアムコンパクト。スタイリッシュなハッチバック(5ドア)ボディが与えられ、室内には大人4人とその荷物を積むだけの十分なスペースが確保されています。

この車最大の魅力は、FRらしいスポーティなハンドリングと引き締まった上質な乗り味など、BMWならではのフィーリングを比較的安い価格(「118i(ベースグレード)」で317万円)で味わえる点です。少々大きくなりすぎた3シリーズと比較すると、BMWならではの小気味良さでは1シリーズの方が上回ります。

「BMWの上質なフィーリングを味わいたいが、3シリーズではちょっと高くて手が出ない」とか、「スポーティで上質なプレミアムコンパクトを探している」といった人には最適な車となります。

次のモデルチェンジでは、「現行 BMW・2シリーズ グランツアラー」などと同じ「FFプラットフォーム」に変更されるという噂です。BMWのFRフィールを比較的安価な価格で味わうなら、これが最後のチャンスかもしれません。

中古車市場では

2017年式「BMW 1シリーズ 118i M Sport」で250万円前後。2015年式で200万円前後(2018年7月現在)。

新車価格

3,840,000円(消費税込み)

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ABOUTこの記事をかいた人

クルマ好きの40代男性。現在病気のため療養中です。

ブログは暇つぶし&リハビリ。週2で短時間のアルバイトをしていますが、普通の人のように毎日フルタイムで働くことはできません。

ブログの内容はあくまで秋ろーの個人的見解です。実際に車や商品、サービスを購入する際は、自分で試乗や調査をして確かめることをオススメします。

記事更新の時間は、大体、午後11時から12時頃にかけてを予定しています。

修正ばっかりしてると新記事の投稿ができないんで、新記事3に対して修正1くらいの割合でやってます(2019年6月〜)