【試乗レポート】新型 BMW 218d グランツアラー Luxury [LDA-2E20]

BMW218d前面画像

今回の【試乗評価】は「新型 BMW 2シリーズ 218d グランツアラー Luxury(F46)」。
2015年に登場した、小型クラスのミニバン(5ドア)です。

BMWといえば、昔から「FR」とか「直列6気筒」なんてイメージが強かったんですが、今回の「2シリーズ(アクティブツアラー&グランツアラー)」は、なんと、BMW「初」の「FFレイアウト」を使っとります。

「アウディ」みたいな例外はあるものの、基本的に「FF」は大衆車のイメージが強いです。ビジネスとしては「MINI」のコンポーネントを使いながら、さらにラインナップを増やせれば「一粒で二度美味しい」んですけど。かといって、長年育て上げた「BMW」の高級イメージを毀損するわけにはいきません。もちろん、「BMW」としてもそのへんのことは分かっているとみえ、細心の注意を払って開発したんでしょう。そのかいもあって、BMWのブランドとミニバンの使い勝手の良さが上手いことバランスしてます。

昔ながらの濃い〜BMWファンにはどう思われるか分かりませんが、一般的なファンには十分受け入れられる車に仕上がってると思います。

じっくりと読む時間の無い人は、文末の「【試乗レポート】のまとめ」をどうぞ↓
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「新型 BMW 2シリーズ 218d グランツアラー Luxury(F46)」の概要

「BMW”初”のFF車」として2014年にデビューした「アクティブツアラー」をベースに、全長(+215mm)とホイールベース(110mm)を伸ばし「3列目シート」を装備してます。 

「グランドツアラー」は「BMW”初”のミニバン」ですが、「3列目シート」は先行して「X5」にも採用されてるんで順番としては二番目です。といっても「X5」の3列目は広大なスペースを活かすための贅沢装備ですが、こっちは限られたスペースを有効に使うための実用的な装備になってます。

日本の立体駐車場に入るギリギリの高さに抑えられた「アクティブツアラー」に対して、「グランドツアラー」の全高は1640mmなんで立体駐車場には対応してません。ボディが大きくなった分、車重も110kgほど重いです。

MINIの「UKL」プラットフォームがベース

BMW初のFF車といっても、急に2シリーズが登場したんじゃなくて、ベースには2001年から培われた「MINI」の技術と知見が生かされてます。

MINIの「UKL」プラットフォームとパワートレーンを使って作られた「2シリーズ・アクティブツアラー」をベースに、ボディをストレッチして開発されたのが「グランツアラー」です。つまり3車は血縁関係にあるといってもいいでしょうねえ。特に「アクティブツアラー」と「グランツアラー」は、使われているコンポーネントも見た目もほとんど同じ「派生車種」です。

2シリーズ・クーペはFRレイアウト

ちなみに、同じ「2シリーズ」内に「クーペ」と「カブリオレ」というスポーティでカッコいいモデルがありますが、あっちは「1シリーズ(F20)」のFRプラットフォームとパワートレーンを使って作られているんで、「アクティブツアラー&グランツアラー」とは全く成り立ちが異なります。同じシリーズ内に異なる成り立ちのモデルが混在しているのは、なんだか奇妙な感じがしますが、おそらく次のモデルチェンジでFF化される「1シリーズ」と合わせて、このへんのラインナップも整理されるんじゃあないでしょうか。

ライバルはいない!

グランツアラーは本格的な箱型ミニバンというよりも、本格的な箱型ミニバンというよりも、「ホンダ・ジェイド」や「プリウスα」に近いロールーフミニバンです。ただし、「ジェイド」はロールーフを強調したスタイリング重視のミニバンで、「プリウスα」はハイブリッド専用モデルなんで実質的なライバルはおりませんね。

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外観

ボディサイズ、全長4585mmX全幅1800mmX全高1640mm。ホイールベース、2780mm。

フロント

BMWの都会的な雰囲気を活かしたスポーティなフロントフェイス。3シリーズなんかの上級モデルと比べれば、少しおっとりした印象がありますね。BMWにとって新しいカテゴリーとなる、「FFミニバン」の新鮮なイメージも上手いこと盛り込まれてます。

誰がどう見ても一発で「あ、BMWだ!」とわかるのは、キリッとした「4灯LEDヘッドライト」に「薄型キドニー・グリル」が組み合わされとるからでしょう。「BMWならではの文法」ってやつです。

サイド

BMW218d側面画像

全長の短い「アクティブツアラー」と比較すると、Bピラー(前から2番目の柱)から後ろが新設計され、全長(+235mm)やホイールベース(+90mm)が長くなってます。ピラーやガラスの形状も微妙に違うんで、並べて見えれば違いがハッキリ分かるんです。

そのせいか、グランツアラーには、アクティブツアラーには無い「重厚感」とか「伸びやかさ」といったもんがありますね。

重厚感あふれる分厚いサイドパネルに、力強く描かれたキャラクターライン。さらに、ドアパネルの下側には、ナイフでえぐり取られたようなラインが入るんで、ボディ全体をダイナミックに引き締めとります。

リア

BMW218d後部画像

分厚いリアエンドに、BMWっぽさ満載のリアコンビランプ。レンズの中には、BMWの文法に則って細いラインが何重にも折り重なってます。フロントフェイス同様に少しおっとりした印象があるんで、「ファミリー向けミニバン」って感じです。

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内装

BMW218d内装画像

内装はモダンでちょっとだけ上質。電動車の「i3」に、なんとなく似ているような気がします。しっなやかなソフトパッドにステッチ、上質な木目パネル。本革素材、ピアノブラック調パネルなんかが、いい感じに組み合わされてますねえ。ベーシックなグレードでも十分上質ですが、「Luxury」や「M Sport」グレードを選べば3シリーズにも匹敵する質感になります。

メーターナセル

BMW218dメーター画像

メーターナセルには、BMWらしい緻密なフォントで描かれた「大型二眼メーター」を装備。表示が見やすいので、一瞬で重要な情報を確認できます。さらに、メーターバイザーの上には「ヘッドアップディスプレイ」があるんで、視線を少しずらすだけで速度などの主要な情報が見られるのも嬉しいポイントです。機能性は別にして、単純にこういったデバイスは近未来的なカッコよさもあるんで、ガジェット好きにはたまりませんねえ。

センターコンソール

BMW218dナビ画像

センターコンソール(ダッシュボード中央)最上段には、ナビゲーションなどを表示する大型ワイドディスプレイを設置。エアコン吹出口をはさんで、中段にはオーディオ&ビジュアルのコントロールユニット。最下段には、エアコンのコントロールユニットが配置されてます。

エアコンのコントロールユニットは、普通の車よりもだいぶ下にあるんですが、シフトから少し手を伸ばせば届く場所なんで、かえって操作性は良いような気がしました。加えて、温度調整はダイヤル式なんで、扱いやすいです。デュアル・エアコンとなっており、左右の席で別々の温度調整ができるのも便利だと思います。

シート

BMW218d前席画像

フロントシートには、若干硬めのクッションが入ってます。なんとなくMINIのシートにデザインが似ているんで、ベースフレームは同じかもしれません。サイズも適正で厚みも十分。適度なコシとか、ほどよいサイドサポートがあるんで身体がしっかりと安定します。長時間座っていても疲れにくい快適なシートです。

BMW218d二列目座席画像

セカンドシートは、若干平板なデザインですが、クッションの厚みは十分でサイズ感もあります。座面の前後長や背もたれの高さも問題ありません。フロントシートの背もたれ後部が、セカンドシート乗員の足が当たらないようにえぐられているため、足元にも十分な広さがあります。こっちもフロントシート同様、長距離ドライブでも大丈夫そうです。

「グランドツアラー」は「アクティブツアラー」と違ってボディの前後長が長く、ホイールベースも伸ばされているんで、そのスペースを使ってサードシートが設置されてます。

といっても、元々そんなに大きな車じゃないんで、「フルサイズのシート」ってわけにはいきません。なんとか短距離移動に限って使える「緊急用シート」って感じです。大人がここに座ると、座面から太ももが浮き上がって「体操座り」みたいな感じになっちゃいます。ただし、普段はサードシートを折りたたんで荷室として使うことが多いでしょうから、目くじらを立てて騒ぐようなもんじゃありません。

荷室

サードシートを使っている状態でも、荷室には意外とスペース(468リッター)があります。これなら、家族4人で日帰り旅行くらいなら行けそうです。

「普段は1人から5人程度で使うことが多い」という人なら、サードシートを折りたたむことで”560リッター”の容量を稼ぐことができます。さらにセカンドシートをたためば”1820リッター”になりますから、これなら商用バン的な使い方もできちゃいますね。

静粛性

車外へは多少ディーゼルエンジンのノイズを響かせるものの、車内の静粛性は高いです。あらためて「ディーゼルだよ」と言わなければ、分かる人は少ないでしょう。このクラスなら十分に満足できるレベルだと思います。

エンジンとトランスミッション

1995ccの直列4気筒DOHCディーゼル(ターボ)エンジンに、8速ATを搭載。
エンジンは、最高出力150ps/4000rpm、最大トルク33.7kgf・m/1750-2750rpmを発揮。

車両重量1610kg。JC08モード燃費、21.3km/l。

エンジン

2.0リッター・ディーゼルエンジンで前輪を駆動(FF)。

新開発されたモジュラーエンジンで、低速から分厚いトルクを発生します。自然吸気のガソリンエンジンに換算すれば、3.5リッターくらいかな。最大トルクの発生回転が1750と低いのはもとより、それ以下の回転域でも十分なトルクがあるんでとにかく扱いやすいです。

アクセルに対する反応がリニアなんで、僅かにアクセルを踏み込むだけで自然に加速しちゃいます。逆に戻せば、戻した分だけ減速する感じです。いわゆる「車とアクセルの一体感が高い」ってやつで、「速度のコントロールがしやすい」と思いました。

急な上り坂や加速を必要とする合流ポイントでも、もたもたすることはありません。僅かにアクセルを踏み込むだけで、シフトダウンもせずに、スルスルと加速していくんです。

静粛性とスムーズさは3シリーズ以上

基本的にはミニシリーズに使われているエンジンと同じなんですが、セッティングというか味付けが違うんで、BMWにふさわしいスムーズな回転フィールとか上質感があります。静粛性とスムーズさだけなら、3シリーズ用ディーゼルエンジンよりも優れているかもしれません。

車の外にいれば、アイドリング中のノイズに僅かなディーゼルっぽさを感じますが、車内ではガソリンエンジンとの違いが分からないほど静かなんです。

トランスミッション

トルコン式の8速ATです。トルクフルなディーゼルエンジンに合わせたセッティングで、低い回転域を保ったままリズミカルにシフトアップしていきます。エンジン回転を無闇に挙げないセッティングなんで、ディーゼル特有のノイズやバイブレーションを高めないんです。

全域でアクセルの踏み込み量と加速がリンクしてるんで、「これは運転しやすいや」と思いました。

巡航中は静粛性と燃費を向上させるため、負荷の小さな「オーバードライブ」にギアが入ってます。まあ、それは特別なことじゃあないんですけど、そこから加速をしようとアクセルを踏み込むと、トルクに余裕があるんで同じギアを保ったまま悠々と加速できちゃいます。とにかく「扱いやすいなあ」という印象です。

乗り心地とハンドリング

前輪にシングル・ジョイント・ストラット式サスペンション、後輪にはマルチ・リンク式サスペンションを装備。

乗り心地

装着タイヤは、205/55R17。

「アクティブツアラー」よりもホイールベースが伸びて、それに伴ってボディも重くなってるんで、それが結果的に乗り心地に良い影響を与えてますねえ。適度に引き締まったしなやかな乗り味に、フラットな安定感とか上質さ、重厚感なんかが加わっとるんです。

高速域での安定性が高く、全高の高いミニバンにありがちな不自然な前後の揺れ(ピッチング)も控えめ。路面追従性も良く、4つのタイヤがガッチリと路面を掴み続けます。よく言われるところの「粘り腰」なんです。

ハンドリング

最小回転半径は、5.7m。

1シリーズや3シリーズなんかの「FR」にはちょっとだけ及ばないものの、「FF」としては自然でよく曲がる感じです。ステアリングの切り始めから正確に反応して、滑らかに曲がっていきます。余計な挙動や不自然な引っかかりが無いんで、スッキリとした印象なんです。

このクラスのミニバンには珍しい「トルクベクタリング」も付いていて、「旋回中に内側の駆動輪にちょっとだけブレーキを掛けて旋回性能を高める」なんて小技もやっちゃいます。このあたりの凝ったギミックが、BMWらしい自然なハンドリングをこのFFミニバンに与えているんでしょう。もちろん、長年に渡って培われたミニシリーズ由来のFF技術も、縁の下の力持ちとなってバッチリ貢献しとります。

ミニバンにしては自然なロール

背の高いミニバンにしてはロールが少なく、動きも自然なんで「おっとっと」なんて不安を抱かせません。コーナリング中の挙動も安定していて、ある程度のロールを許しながらグリップを高めて旋回していく感じです。ステアリングを切る量とボディの傾きがリンクしているんで、安心してドライブできます。

先進安全技術

先進安全技術は、「予防安全技術」として、衝突を予測して回避・被害軽減を図る「自動ブレーキ」を標準装備。その他には、60km/h以上で走行中に車線からのはみ出しをカメラが検知すると、ステアリングを振動させてドライバーに警告する「レーンディパーチャーウォーニング(車線逸脱警告システム)」も標準で付いてます。

運転の疲労を軽減する「運転支援技術」としては、オプション装備になりますけど、前車との間に適切な距離を保って設定された速度で追従する「アクティブクルーズコントロール(ストップ&ゴー機能付き)」とか、こっちもオプション扱いですけど、ドライバー眼前にあるフロントウィンドウに、ナビゲーションのルート案内や、オーディオ&ビジュアル情報、車輌情報などを端的に表示する「BMWヘッドアップディスプレイ」が選べます。

ヘッドアップディスプレイは、便利かどうかよりもとにかく近未来的でかっこいいんで、次の愛車には是非付けてみたいアイテムのひとつです。

【試乗評価】のまとめ

「新型 BMW 2シリーズ 218d グランツアラー Luxury(F46)」は、3列シートを持った小型「FFミニバン(5ドア)」です。

コンパクトな「FF」5ドアハッチバック「アクティブツアラー」をベースに、全長とホイールベースを延長。全高も高くしてます。その広くなったスペースを生かして、サードシートを設置。サードシートを倒せば、広い荷室として使うこともできちゃいます。

搭載されるパワーユニットも重くなった車重に合わせてアップデート。定速から分厚いトルクを発生して、重いグランドツアラーの車体をグイグイと加速させるんです。新世代のモジュラーエンジンなんで、ディーゼル特有のノイズも殆ど感じられませんねえ。スムーズなトランスミッションが組み合わされとるんで、これもノイズを抑える一因となってます。

重くなったボディとロングホイールベースの効果で、乗り味が良いのもグランドツアラーの美点です。適度に引き締まったしなやかさに、重厚感が上乗せされとります。

BMWといえば「FRならではの素直でスポーティなハンドリング」が有名ですが、この「FF」ミニバンにもその伝統がしっかりと受け継がれてます。1シリーズや3シリーズほどじゃありませんが、FFミニバンとしては十分素直でスポーティ。ロールも少なく自然なんで、とにかく運転が楽しいんです。

「人や荷物をそれなりに積めるコンパクトなミニバンを探しているが、運転もそれなりに楽しみたい」とか、「ファミリーカー丸出しのミニバンじゃつまらない、ちょっとだけ遊びとか高級感も欲しい」なんて人にピッタリな一台になります。

中古車市場では

2018年式「BMW 2シリーズ 218d グランツアラー Luxury(F46)」で300万円台後半。2015年式なら200万円台前半です(2019年2月現在)。

新車価格

4,900,000円(消費税込み)

ABOUTこの記事をかいた人

クルマ好きの40代男性。現在病気のため療養中です。

ブログは暇つぶし&リハビリ。週2で短時間のアルバイトをしていますが、普通の人のように毎日フルタイムで働くことはできません。

ブログの内容はあくまで秋ろーの個人的見解です。実際に車や商品、サービスを購入する際は、自分で試乗や調査をして確かめることをオススメします。

記事更新の時間は、大体、午後11時から12時頃にかけてを予定しています。

修正ばっかりしてると新記事の投稿ができないんで、新記事3に対して修正1くらいの割合でやってます(2019年6月〜)