今回は「アルファロメオ アルファ GTV 3.0 V6 24V」を試乗レポートいたします。
このアルファGTVは、1996年にデビューしたFF駆動によるイタリアン・スポーツクーペです。
このクーペ・ボディに加えて、ルーフが手動オープンとなるスパイダーも同時にラインナップされていました。
外観
全長4290mmX全幅1780mmX全高1315mmのボディサイズを持ち、ホイールベースは2540mmとなります。
GTVのスタイリングは、当時ピニンファリーナに在籍していたデザイナー「エンリコ・フミア」によるものです。
ボディ全体を大胆なキャラクターラインがぐるりと周り込み、20年の時を経た現在でも十分に通用する素晴らしいスタイリングとなっています。
フロント
小さなヘッドライトユニットが控えめにレイアウトされ、アルファロメオの盾形グリルと一体となって美しくも個性的な外観を形作っています。
サイド
ボディサイドには大胆に斜めのラインが入れられ、ボディが上下に二分割されているように見えます。どうしてこんな突飛なデザインを、このように高次元でバランスさせる事ができるのか不思議になります。
リア
フロントから回り込んできたキャラクターラインは、リアウィンドウのボトムラインと一体化され、戦闘機のキャノピーのようなアグレッシブなデザインを作り出しています。
すぱっとナイフで切り落とされたようなリアエンドに、横に薄く長いリアコンビラインプが組み合わされ、個性と軽快感、スポーティさを同時に表現しています。
内装
左ハンドル仕様を無理やり右ハンドルに仕立て直しているため、ドライバーの足元スペースは小さめです。足が大きい人の場合はクラッチ操作に手こずるかもしれません。
シート
しっかりとした作りの分厚い皮に、硬く上質なスポンジが組み合わされ、重量感のあるどっしりとした座り心地です。コストと手間がしっかりと掛けられており、シートのブロックごとに小さく分割された立体的な構造が採用されています。
荷室
コンパクトなボディに、複雑な構造の新型マルチリンク式サスペンションが装備されているため、荷室容量は小さめです。
静粛性
風切音、ロードノイズ、エンジン音と盛大に車内に進入してきますが、スポーティな演出でまとめられているため大して気になりません。
エンジンとミッション
2958ccのV型6気筒DOHCエンジンに、5速MTが組み合わされます。
エンジンは、220ps/6300rpmの最高出力と、27.5kgf・m/5000rpmの最大トルクを発揮します。
車両重量は1420kgとなります。
アルファロメオは、伝統的にスポーツカーを作り続けてきたメーカーです。そのため、このGTVのようなクルマ作りには人一倍の強いこだわりをもっています。
そのため、スパイダーのようなボディの軟らかいクルマには非力なエンジンが与えられ、GTVのようにボディ剛性の高いスポーツカーには、パワフルな走りを存分に味わうための高出力エンジンが与えられます。
エンジン
エンジンは官能的でスポーティなフィールとサウンドを奏でる、「これぞアルファ」といった素晴らしいエンジンが搭載されています。
基本的に高回転型のエンジンですが、トルクバンドが広いため、低速域でゆるゆると流していても十分なトルクが得られます。そのため、街中でパワー不足を感じてイライラすることはありません。
トランスミッション
高回転型のエンジンをマニュアル・トランスミッションで引っ張り気味に繋いでいくと、リズミカルでダイレクト感のある気持ちの良い加速フィールが得られます。
足回りとハンドリング
前輪にマクファーソン・ストラット式サスペンション、後輪にはマルチリンク式サスペンションが装備されます。
大衆車のティーポをベースに設計されているとはいえ、リアサスペンションには新開発の鋳造アルミニウムサスが与えられ、フロントサスにも大幅な改良が加えられています。
このおかげで「GTV」はスポーツカーの名にふさわしい、しなやかでダイレクト感のあるスポーティな足回りを得ています。
この専用のリアサスは、コストが高く体積も大きいためその他の大衆車に流用することができません。このあたりの事情も含めて、GTVを唯一無二の贅沢なスポーツカーに仕立てている理由となっています。
足回り
スポーティな硬めの乗り心地ですが、ボディ剛性がしっかりと高められているため、車内に不快な振動が伝わることはありません。
ハンドリング
重いV6エンジンをフロントに搭載していますが、クルマの動きは軽快かつ素直な印象です。ドライバーの意思に忠実に反応する楽しいクルマとなっています。
評価のまとめ
バリトンを奏でるスポーティなV6エンジン、どこにも存在したことの無いアバンギャルドで個性的なスタイリング。この2つがGTVの大きなアドバンテージとなっています。
これだけの内容を当時443万円で購入できたのですから、お金を支払う以上の価値は十分にあったと言えます。
このスタイリングは20年を経た今でも古くなるどころか、現代のクルマたちと並べても遜色の無い十分な魅力があります。かなり予算が必要になりそうですが、しっかりとオーバーホールを行い、好きなカラーに塗装し直して個性的なネオ・クラシックカーとして乗り回すのもちょっと楽しそうではあります。
価格
新車当時の価格 | 4,430,000円