新型 アウディ RS3 スポーツバック(2代目)【試乗評価】「Audi Sport GmgH」によるスペシャルチューンモデル [ABA-8VDAZF]

アウディRS3スポーツバックのアイキャッチ

今回の【試乗評価】は「新型 アウディ RS3 スポーツバック(2代目)」。
2015年に登場した、中小型サイズの5ドアハッチバックです。

アウディには、「Audi Sport GmgH」という専門のモータースポーツ部門があります。「RS3」は、そんな「Audi Sport GmgH」が手がけるスポーツモデルで、「アウディA3」をベースに特別なチューンが施されてます。「アウディA3」をベースにしたスポーツモデルとしては、この他に「S3」というのもあるんですが、あっちはアウディが直接チューンしてますから、「RS3」と比べると若干マイルドなセッティングです。

ということで、ベースとなった「A3」からスポーティな順に並べると、「A3」→「S3」→「RS3」という並びになります。

アウディA3前面画像

【試乗レポート】新型アウディA3 1.4 TFSI スポーツバック [DBA-8VCXS] 小さなプレミアムカー

2016年1月17日

搭載されるエンジンは、アウディ伝統の「5気筒エンジン」です。こいつは、元々1976年に登場した「2代目アウディ100」から採用されたエンジンで、4気筒エンジンよりはパワフルで6気筒エンジンより経済的ということで結構人気がありました。

その後、世界ラリー選手権で活躍した伝説の名車「アウディ・クワトロ(1980年)」にも搭載され、「アウディのスポーツモデルなら5気筒」という名声を確立していきます。そんなこんなで、世界中のメーカーからも「5気筒エンジン」が次々に登場する「呼び水」となったんです。

そういえば、1989年に登場した「初代ホンダ・インスパイア」にも5気筒エンジンが搭載されてましたねえ。「フロントミッドシップ」という特殊なレイアウトと相まって、自動車好きの間では話題となったもんです。

じっくりと読む時間の無い人は、文末の「【試乗評価】のまとめ」をどうぞ↓
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「新型 アウディ RS3 スポーツバック(2代目)」の概要

今回のモデルは、ドイツ本国では「2代目」となってますが、先代の「初代RS3」は日本市場に来てなかったんで、日本仕様としては初お披露目です。

「アウディA3」由来の5ドアハッチバックボディに、2.5リッター5気筒ツインカムターボを搭載。これに前輪駆動ベースの4WDシステム「クワトロ」を組み合わせてます。

冒頭でも書いたように、「A3系」の中では一番スポーティなモデルなんですが、なぜか外観はそんなにド派手じゃありません。どちらかといったら「おとなしい」感じがするくらいで、車に興味の無い人からは「A3と何が違うん?」なんて言われるかもしれないです。

まあ、それが「RS3」の魅力なんですが、「見た目はそんなじゃ無いのに、とてつもない性能を秘めている」なんてのが好きなマニアックな人にはたまらないと思います。俗に言う「羊の皮を被った狼」ってやつですね。

ただし、「A3」のベーシックモデル「1.4TFSI」が296万円なのに対して、「RS3」は762万円と500万円近く高いです。たとえ手元に購入資金があったとしても、奥さんを説得してこの差額を納得してもらうのは、かなりシンドイ作業だと思います。

プラットフォームなど

ベースとなっている「A3」の、さらにベースなのが「VWゴルフ」ですから、「RS3」と「ゴルフ」は兄弟みたいなもんです。ということで、基本的にプラットフォーム(車台)も共通で、「ゴルフ」と同じ「MQB」が使われてます。

「MQB」は、VWグループが開発した新世代のプラットフォームで、幅広い車種に展開できるようにフレキシブルな設計思想が取り入れられてます。最近流行りの「モジュラー設計思想」ってやつですね。

ライバルは

ライバルは、「メルセデスベンツ・A45 AMG」や「BMW・M2 クーペ」、「VW・ゴルフ R」など、プレミアムクラスの中小型をベースに、スペシャルチューンを施したホットバージョン。

「RS3」はFFベースの4WDなんで、この中で直接のライバルになるのは、兄弟車でもある「VW・ゴルフ R」と「メルセデスベンツ・A45 AMG」です。さらに価格帯で絞り込むと、ガチンコのライバルは「メルセデスベンツ・A45 AMG」でしょうねえ。

マイナーチェンジ情報

2017年マイナーチェンジ。内外装の小変更と、パワーユニットの出力向上が行われました。フルデジタルメーターの「バーチャルコックピット」や「バング&オルフセン・サウンドシステム」、「マトリックスLEDライト」とか「運転支援システム」なんかも標準で装備されてます。

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外観

ボディサイズ、全長4335mmX全幅1800mmX全高1440mm。ホイールベース、2630mm。

800万近くもするスポーツカーとしてはノーマルとの違いが少なく、かなり地味〜な印象です。はっきり言って外観からは値段が分かりづらいんで、パッと見だけなら「A3のスポーティグレード?」といった感じです。

といっても、それは欠点じゃなくて、「一部の車好きだけが凄さを分かってくれれば良い」てな感じで、人知れず高性能をアピールしたマニアックなオーナーにとってはたまらない演出になってます。いわゆる「羊の皮を被った狼」ってやつです。

フロント

メカニカルなデザインの専用フロントバンパーに、ハニカムメッシュ(ブラック)をはめ込んだ専用シングルフレーム。マイナーチェンジ後のヘッドライトもカクついたデザインなんで、全体としての収まりはバッチリです。車高が25mm低く、トレッドもワイド。それに伴ってフェンダーも広がっているんで、ワイド&ローなプロポーションになってます。

サイド

A3スポーツバックとの違いは、車高の低さと19インチ大径タイヤホイール、それからブラックアウトされたドアミラー、控えめなサイドスカートくらいです。

強く傾斜したAピラー(一番前の柱)とDピラー(一番後ろの柱)、大きな19インチタイヤの相乗効果で程よいスポーティ感があります。

リア

リア周りの演出も控えめで、ノーマルとの違いは、リアバンパー下に装着された「リアディフューザー」と二本出しの「エキゾーストパイプフィニッシャー」くらいです。

それでも、低い車高とワイド感を強調するリアコンビランプ、傾斜の強いリアウィンドウが組み合わされて、大人のスポーツって感じはあります。ギリギリで汗臭さを感じさせないさじ加減が絶妙ですねえ。

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内装

アウディRS3の内装

上質な樹脂にメタリック素材が組み合わされた、シックな室内。ステアリングや、シフトノブには「RS」のロゴがキラリと光ってます。

とにかくシンプルで上品な感じで、激しいところが一切ありません。このデザインを積極的に嫌う人はそうそういないと思います。長く乗っていても飽きにくい、「ご飯にお味噌汁」って感じのスタイルです。欧州ならさしずめ「ブレッド&バター」ってところでしょうか。

メーターまわり

アウディRS3のメーター

メータークラスターには、今流行りのフルデジタル式メーター「バーチャルコックピット」がはめ込まれてます。この手のメーターとしては、アウディが先駆者ということもあって、グラフィックが精密で一番カッコいいです。

使われているディスプレイは、12.3インチのTFT液晶。速度計や回転計はもとより、ナビゲーションから車輌情報まで表示できます。表示内容はドライバーの好みに応じて、ある程度のアレンジも可能です。

センタークラスター

アウディRS3のセンタークラスター

センタークラスター最上段には、ナビゲーションやオーディオ情報などを表示する「MMiナビゲーション」が付いてます。オーディオシステムは、バング&オルフセンサウンドシステム。

エアコンは運転席と助手席で別々に温度調整ができるデュアルタイプ。調整つまみはちょっと小さめですが、ダイヤル式で操作感も良いんで扱いやすいです。

シート

アウディRS3のフロントシート

フロントシートには、標準でナッパレザー製スポーツシート(電動調整機構付き)が付いてきます。

スポーツシートといってもガチガチのバケットシートじゃなくて、適度に包まれ感のある快適なタイプです。表皮にはしなやかな柔軟性があるんで、長距離ドライブも苦になりません。

リアシートは、フロントと違って平板な形状になってます。表皮の柔軟性、サイズ、形状ともに十分で、座り心地は良いです。足元、頭上空間ともに適度なスペースが確保されているんで、窮屈な感じもありません。

荷室

荷室スペースはベースとなった「アウディA3」のままなんで、かなりの余裕がありますねえ。リアシートの背もたれを「3:2:3」で分割して倒せば、ステーションワゴンのような使い方もできちゃいます。

エンジンとトランスミッション

2480cc・直列5気筒DOHCターボエンジンに、7速AT(S-トロニック)を搭載。
エンジンは、最高出力400ps/5850-7000rpm、最大トルク48.9kgf・m/1700-5850rpmを発揮。

車両重量1590kg。JC08モード燃費、11.0km/l。

エンジン

2.5リッター・直列5気筒ツインカムターボで、4輪を駆動(フルタイム4WD)。

このエンジンは、「Audi Sport GmgH」の職人によって「手組み」される超精密な高性能エンジンです。

5850-7000rpmで最高出力を発揮する高回転型エンジンなんですが、同時に最大トルクを1700rpmから発生するため、低速域での扱いづらさとかギクシャクした感じはありません。出足からモリモリと分厚いトルクを発生して、1.6t近くのボディを軽々と加速させちゃいます。

5気筒エンジンならではの「不協和音」は控えめで、街中を軽く流す程度ならほとんど気にならないレベルです。

もちろん、アクセルを踏み込めばダイナミックなエンジンサウンドを奏でながら、豪快に加速していきます。しかも、クワトロシステム付きですから、その走りっぷりはかなり安定したモンです。

トランスミッション

アウディRS3のシフト

デュアルクラッチ式の7速AT「S-トロニック」を搭載。

乗り心地とハンドリング

前輪にマクファーソン・ストラット式サスペンション、後輪には4リンク式サスペンションを装備。

乗り心地

アウディRS3の19インチホイール

装着タイヤは、235/35R19。

特別にチューンされたスポーツサスを使いながら、トレッドを拡大。それに伴って車高も25mm低くなってます。

「RS3」は「A3系」の中では一番スポーティなモデルなんで、乗り味もそれなりに硬めです。といっても「不快で嫌になる」ってほどじゃありません。鋭い衝撃を薄いオブラートに包んでる感じで、自動車好きなら十分納得できるレベルです。

高速域での安定性も高く、うねりのある路面をしなやかに吸収してフラットな姿勢を保ちます。目地段差の吸収も柔軟で、長距離ドライブも苦になりません。

「もっとしなやかな乗り味が好み」という人には、オプションで用意される「マグネティックライドダンパー」がオススメです。費用も13万程度と、この手のオプション装備としては安いんで、気軽に取り付けられます。

ハンドリング

切れ味鋭い軽快なハンドリング。操舵に対する反応が素直でしかも正確なんで、車がひと回り小さく感じられます。

コーナリング中もうねりのある路面をしっかりと捉えて、狙ったラインを外しません。いわゆる「オンザレール」な感じで、ステアリングフィール自体も上質。まさにプレミアムなスポーツカーって印象です。

足まわりはスポーティに引き締められてますから、ロール自体も少ないです。加えてタイヤの接地感も穏やかに変化するんで、「不自然にロールして姿勢を乱す」なんてこともありません。コーナーに併せてステアリングを操作してやれば、自然な身のこなしでしなやかに走り抜けちゃいます。ということもあって、なんだか自分の運転が上手くなったような気がして仕方ないです。

最小回転半径は、5.1m。コンパクトなボディと相まって、小回り性能は高いです。ベースとなった「A3」の美点をしっかりつ受け継いでます。

【試乗評価】のまとめ

「新型 アウディ RS3 スポーツバック(2代目)」は、アウディが傘下に抱えるモータースポーツ部門「Audi Sport GmgH」が、「アウディ・A3」をベースにスペシャルチューンしたホットバージョンです。

引き締められたスポーツサスに、400馬力を発生する「2.5リッター5気筒ツインカムターボ」と、デュアルクラッチ式7速AT「S-トロニック」が組み合わされてます。

乗り味やハンドリング、動力性能は、まさに一級のスポーツカーって感じです。といっても、ベースが普通の5ドアハッチバックなんで、荷物はたくさん積めるし、居住スペースも広々、使い勝手はかなり良いですねえ。実用性は「A3スポーツバック」とほとんど同じなんで、日常の足として十分使えます。

「本格的なスポーツ走行を楽しみたいが、家族や仕事の都合で実用性も捨てられない」、さらに「プレミアムカーとしての上質な乗り味も欲しい」なんて事になると、「アウディ・RS3」以外に選択肢はそうありません。

ABOUTこの記事をかいた人

クルマ好きの40代男性。現在病気のため療養中です。

ブログは暇つぶし&リハビリ。週2で短時間のアルバイトをしていますが、普通の人のように毎日フルタイムで働くことはできません。

ブログの内容はあくまで秋ろーの個人的見解です。実際に車や商品、サービスを購入する際は、自分で試乗や調査をして確かめることをオススメします。

記事更新の時間は、大体、午後11時から12時頃にかけてを予定しています。

修正ばっかりしてると新記事の投稿ができないんで、新記事3に対して修正1くらいの割合でやってます(2019年6月〜)