新型 マツダ デミオ 13S(4代目)【評価レビュー】欧州車に迫る質感の高い走り [DBA-DJ3FS]

マツダ デミオ 13Sのアイキャッチ

今回の【評価レビュー】は「新型 マツダ デミオ 13S(4代目)」。
2014年にフルモデルチェンジした、コンパクトな5ドアハッチバックです。

1996年に登場した初代「マツダ・デミオ」は、「フォード・フェスティバ」のプラットフォーム(車台)をベースにした、背の高いトールボーイスタイルでした。当時、流行していたミニバン路線をいち早くコンパクトカーに取り入れたってわけです。そう考えると、近ごろ路上にあふれている「ハイト系ワゴン」の先駆けとも言えます。

ケレン味のないプレーンな外観とか、コンパクトなボディに広々とした室内といった実用性の高さとかが受けて、マツダとしては久しぶりのヒットに。当時、経営の苦しかったマツダに一息つかせてくれた孝行娘なんです。

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この後発売された2代目デミオも、初代のコンセプトをそのまま受け継ぐ「トールボーイスタイル」を踏襲してましたが、3代目になるとこれを一新。室内の広さよりもカッコよさを重視した、スタイリッシュ路線に様変わりしてます。

このあたりで、他のメーカーからもコンパクトクラスの「ハイト系ワゴン」が続々と増えてきました。「トヨタ・ヴィッツ」とか「ホンダ・フィット」も、よりスペース効率を重視した設計へと寄せてきてたんで、「他のメーカーと同じことをしていても勝ち目は無い」とマツダも踏んだんでしょう。マツダからヴィッツみたいな車が出てきても、つまらないですからね。

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そんなこんなで、今回の4代目「マツダ・デミオ」は、先代のスタイリッシュ路線を引き継ぎながらも「CX-5」から続く「新世代マツダ商品群」の流れを踏襲。「魂動デザイン」と「SKYACTIVテクノロジー」を組み合わせた魅力的な車に仕上がってます。

4代目のコンセプトは、「車の質感とか完成度はボディサイズに比例するわけじゃない」というものですが、いわゆる「小さな高級車」とはちょっと趣が違うような。。。なんというか、贅沢な質感というんじゃなくて、疲れにくさとか運転する楽しさにつながる質感といった感じなんです。

じっくりと読む時間の無い人は、文末の「【評価レビュー】のまとめ」をどうぞ↓
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「新型 マツダ デミオ 13S(4代目)」の概要

今回のモデルチェンジの特徴は、ボディサイズやホイールベースを僅かに拡大しながらも、5ナンバーサイズを維持していることです。ということもあって、走行性能や使い勝手を向上させながら、取り回しの良さやらスタイリッシュな外観といった美点はそのまま残ってます。

ただし、今はスペース効率を優先したクルマづくりが主流なんで、ライバルと比較すると室内が多少狭く感じるのは仕方ありません。その分、デミオはスタイリッシュな外観とか走りの良さを打ち出して、少なくても確実なユーザー層を抑えるという戦略です。

環境技術も独自路線

環境技術に関しても、デミオは独自路線です。ライバル他車が続々とハイブリッド化を進めるなか、クリーン・ディーゼルエンジンで対抗してます。多少ノイズ(ディーゼルにしてはかなり静かな部類)は気になりますが、軽油はガソリンと比べると安いんで、トータルのランニングコストはハイブリッドカーと変わりません。ディーゼルならではの分厚い低速トルクがあるんで、スポーティなドライブフィールも楽しめちゃいます。

そんな中で、ガソリンエンジン搭載車はちょっとだけ影の薄い存在ですが、基本となる構造はディーゼルと変わりません。スムーズで効率の良い「SKYACTIV-Gエンジン」に高剛性ボディ、ストローク感たっぷりの上質なサスが組み合わされてます。

「SKYACTIVテクノロジー」とは

デミオに搭載されてる「SKYACTIVテクノロジー」とは、ハイブリッドとかフューエルセルといった何か具体的なテクノロジーのことじゃなくて、マツダが新世代モデルのために開発した技術全体の総称です。なもんで、これには「エンジン」や「トランスミッション」、足回りを含めた「シャシー」やら「ボディ」なんかもまるっと含まれます。

手足を自然に伸ばした場所に「ステアリング」とか「ペダル類」があるんで疲れにくいとか、前輪のダンパーが適度に後傾しているため、素直なハンドリングフィールが得られるといった車の乗り味や使いやすさにも直結してるんで、個人的には「テクノロジー」というよりも「設計思想」とか「コンセプト」と言ったほうが近いんじゃないかなあと思ってます。

プラットフォームなど

先代デミオ(3代目)は、それまで使っていたフォード製プラットフォームを捨てて、マツダが開発した独自のプラットフォームを使っていました。デミオのイメージにピッタリあった、軽量コンパクトなクルマづくりができたのもこのお陰です。

4代目デミオはここからさらに一歩進めて、「SKYACTIVテクノロジー」で設計された新世代プラットフォームとなってます。もちろん、開発は3代目と同じマツダ内製。全長とホイールベースを拡大しながらも、取り回しの良い5ナンバーサイズに収めてます。

軽量コンパクトな先代デミオの美点を継承しながらも、乗り味とか環境技術の向上なんかを頑張って盛り込んだ感じです。

ライバルは

ライバルとなるのは、「トヨタ・ヴィッツ」とか、「ホンダ・フィット」、「スズキ・スイフト」なんかの国産コンパクトカー。欧州では「Bセグメント」と呼ばれるクラスで、クラスとしては「VW・ポロ」なんかの欧州勢も含まれます。

マイナーチェンジ情報

マツダは毎年のように年次改良を行ってます。その中から、目につく改良点をいくつかピックアップすると。

2017年。先進安全技術「アドバンスド・スマート・シティ・ブレーキ・サポート」を全車に標準装備。それまでの車両のみを検知するタイプから、歩行者も検知する高性能タイプへと変更されてます。

2018年。それまでベースグレードに搭載されていた「1.3リッター・ツインカムエンジン」を「1.5リッター・ツインカムエンジン」に載せ替え。このエンジンは、競技用のベース車両として販売されていた「15MB」に搭載されてたエンジンと基本的に同じですが、プレミアム仕様からレギュラー仕様に変更されて、運動性能よりも実用性や経済性を優先したセッティングとなってます。

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外観

ボディサイズ、全長4060mmX全幅1695mmX全高1525mm。ホイールベース、2570mm。

「CX-5」から始まる一連の「魂動デザイン」を使ってます。ひと言で言うなら、「動きのある力強さ」ってとこでしょうか。

フロント

短いフロントノーズに、クリっとした三角お目々(LED)。どっしりとした五角形グリル(シルバー)の組み合わせ。

同じ「魂動デザイン」を使っているといっても、「アテンザ」のようなエレガントな感じは少なめで、力強さとか凝縮感の方が印象に残るデザインです。

サイド

このクラスの5ドアハッチバックとしては、ノーズ(鼻先)が長く、キャビン(居住スペース)が小さい感じです。そのおかげで、スポーティでカッコいいスタイリングになってますが、反面、後席の居住性はライバルより劣ります。まあ、といっても、実用上問題になるような狭さじゃ無いですけど。

まあ、いくら売れるといっても全部の車がハイト系ワゴンみたいになってもつまらないですし、国産に一台くらいこんなコンパクトカーがあっても良いんじゃないでしょうか。

リア

ぐっと張り出したリアフェンダーに、小さく絞り込まれたキャビン。傾斜の強いリアウィンドウとかが一体となって、力強さとか安定感を感じさせるスタイリングを作ってます。

後ろ姿に、フォード製の古いコンパクトカー「Ka」を彷彿とさせる感じもあるような。。。そういえば、マツダは少し前までフォードグループでしたっけ。まあ、関係ないでしょうけど。「デザインを真似た」というよりも、「たまたま似た感じになった」ってレベルですから。

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内装

機能的に整理されたシンプルな内装で、アテンザとか、他の上級車種にも通じるモダンなカッコよさもあります。上質感は完全に欧州車レベルで、国産コンパクトカーと比べると頭ひとつ抜けた感じです。

メーターナセル

メーターナセル中央に、丸型の速度計が置かれてます。その両脇には、小さなファンクションディスプレイが2つ。シフトポジションやら燃料計、走行距離なんかを表示してます。

上級グレードには、速度計の代わりにスポーティなエンジン回転計が付くんですが、「13Sのようなベースグレードに、そんなスポーツカーみたいな演出はいらないよ」ってことなんでしょうねえ。

センタークラスター

センタークラスター(ダッシュボード中央)最上段には、今流行りのフローティングディスプレイがあります。ここには、「マツダコネクト」によって統合されたナビゲーションとか、オーディオ、ハンズフリー通話機能なんかが表示されます。この位置にディスプレイがあれば視線移動も少ないし、元々、何もなかったデッドゾーンなんで、他のレイアウトを邪魔しにくいってのがメリットです。

その直下には、エアコンの吹出口が2つ。一見、丸型の吹出口がひとつだけあるようい見えますが、実際には左側にも薄型のルーバーがあります。個人的にはどっちも丸型にしたほうがデザインが安定するし、機能的にも良いと思うんですが。

最下段には、エアコンのコントロールユニット。大きなダイヤル式なんで、グローブを付けたままでも操作できそうです。

シート

フロントシートは、適度なサイドサポートに、コシのあるクッションを組み合わせてます。身体からの圧力をキレイに分散する構造なんで、長時間座っていても疲れにくいです。

リアシートはやや頭上空間が狭いんですが、実用上の問題は無いです。拡大されたホイールベースのおかげで足元の広さは十分。フロントシートの下につま先を差し込むこともできるんで、大人二人で座っても狭苦しさは無いです。肝心の座り心地はフロントほどじゃ無いけど、クッションのコシ、表皮の柔軟性ともに十分で、満足できるレベルに仕上がってます。

荷室

この手のコンパクトカーとしては、まずまずの奥行きがあるんで、家族4人で1泊旅行くらいなら行けそうです。リアシートの背もたれを分割して倒すことで、荷室容量の拡大もできます。ただし、スタイリッシュな外観の影響で、開口部はちょっと狭め。大きな荷物の出し入れなんかは手間取りそうです。

一部改良でトノカバーを追加。「外から荷物が丸見え」なんてことは無くなりました。

静粛性

遮音ガラスとトノカバーの装備で、室内の静粛性がちょっとだけ向上。エンジンにはアイドリングストップが付いてるし、加給の無い自然吸気なこともあって、クラス標準よりも静かな印象です。

エンジンとトランスミッション

1296cc・直列4気筒DOHCエンジンに、6速ATを搭載。
エンジンは、最高出力92ps/6000rpm、最大トルク12.3kgf・m/400rpmを発揮。

車両重量1030kg。JC08モード燃費、24.6km/l。

エンジン

1.3リッターのツインカムエンジンで前輪を駆動(FF)。出足が軽やかで、エンジン回転もスムーズ。自然吸気ならではの爽快な吹け上がり感が気持ちいいです。

クリーンディーゼルやダウンサイジングターボと比べれば、そりゃあトルク感は今ひとつですが、車重が軽いんでもっさりした感じは無いです。逆に価格が安いとか、鼻先が軽いといった「13S」ならではの長所もありますし。

排気量やクラスを考えれば、十分以上の動力性能だと思います。

トランスミッション

トルコン式の6速ATを装備。

ライバルの国産コンパクトカーが、効率やコストを重視して続々とCVT化してるのに対して、デミオはオーソドックスなトルコン式を採用してます。ダイレクトな変速フィールと、小気味いいステップ感が気持ちいいです。しかも、ギアは6段。コンパクトカーに6段ギアって、ちょっと前なら高級車用のやつですよ。

加えて、「もっと積極的に走りを楽しみたい」って人のために、マニュアルトランスミッションを用意しているのも嬉しいポイントです。走りってのは好みの部分もあるんで一概には言えないけど、そういうのを重視するならデミオは最有力候補になります。

僕は今「レガシィB4」に乗ってますが、こういうマツダの姿勢を見てると、次はマツダ車を買いたくなっちゃいます。最近のスバルは、マニュアルトランスミッションを次々と廃止してますからねえ。しかも後に残るのは、CVTばかりときたもんだ…

乗り心地とハンドリング

前輪にマクファーソン・ストラット式サスペンション、後輪にはトーションビーム式サスペンションを装備。

乗り心地

装着タイヤは、185/65R15。

高剛性ボディにストロークのあるサスが組み合わされてるんで、上質感と共に深みのようなものも感じられます。他の国産車とは一味ちがう欧州車レベルの足回り。といってもデミオならではの軽快な感じもあるんです。

欧州車レベルの質感を目指しているだけあって、直進安定性も高いです。ただし、路面にある周期で「うねり」が連続していると、ピョコピョコと跳ねるような動きをすることがありました。

ハンドリング

キビキビとした軽快感あふれるハンドリング。といってもライトウェイトスポーツのような機敏すぎる感じじゃ無くて、適度に緩いバランスの良さがあります。しかも、手応えには良い感じの剛性感があるんです。

ワインディグに持ち込めば、鼻先の軽さを活かした素直な身のこなしでヒラリヒラリと連続するコーナーを走り抜けます。リアの接地性もしっかりとしているから、コーナリング中も安定してるんですよねえ。ひと言で言えば、ハンドリングと乗り心地の「塩梅」が良いってことです。

一部改良でパワーアシストが再調整されて、切りはじめの印象がさらに軽くなってます。僅かにステアリングを動かすだけで、スッとノーズが向きを変える感じです。

最小回転半径は、4.7mと小さめ。低速域からしっかりとパワステが効くこともあって、狭い路地での切り返しとか、駐車場での出し入れとかもやりやすくなってます。

先進安全技術

2017年の改良で、先進安全技術「i-ACTIVSENSE(アイ・アクティブセンス)」が全グレードに標準装備されました。

機能自体も強化されてて、従来から装備されてる「ブラインドスポットモニタリング」や「リアクロストラフィックアラート」、「AT誤発進抑制制御(前進のみ)」、「緊急自動ブレーキ(アドバンストスマートシティブレーキサポート)」とか「マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール(30km/h~高速域まで)」に加えて、

車両のふらつきを検知して警告する「車線逸脱警報システム」や、自動的にハイビームを制御する「ハイビームコントロールシステム」、後退時の衝突を検知して被害を軽減、もしくは回避する「スマートシティブレーキサポート(後退時)」とか、運転の状況からドライバーの疲労を検知して警告する「ドライバーアテンションアラート」、「交通標識認識システム」なんかが追加されてます。

さらに「緊急自動ブレーキ」は歩行者への対応を追加。「AT誤発進抑制制御」は後退時も作動するようにアップデートされました。

【評価レビュー】のまとめ

「新型 マツダ デミオ 13S(4代目)」は、5ドアハッチバックのコンパクトカー。ライバルには、「ホンダ・フィット」や「トヨタ・ヴィッツ」なんがあります。

自然吸気ならではの爽快なツインカムエンジンに、ダイレクトな「トルコン式の6速AT」を装備。ライバルが続々と効率を重視した「CVT」になっていく中、走りを重視したトルコン式(しかも6段ギアなんで効率もそんなに悪くない)を使ってるのが嬉しいポイントです。

足回りも国産コンパクトカーのレベルじゃなくて、欧州コンパクトカーに迫る質感があります。ストロークを活かした深みのある乗り味に、適度に軽快なハンドリング。乗り心地とハンドリングのバランスが良いんで、運転の楽しさを表現しながらも疲れにくいセッティングとなってます。

ライバルと比較すると室内が狭く、特に後席は必要最小限といった感じになってます。といっても、これは、「必要最小限の室内空間を確保したら、後はスタイリングのカッコよさに使う」という割り切った設計になっているからです。

「多少室内が狭くなっても良いから、カッコいい車に乗りたい」とか、「コンパクトカーでも味気ない車は嫌、それなりに上質感とか、走りの楽しさがある車が欲しい」なんて人にぴったりな車だと思います。

中古車市場では

2018年式「マツダ デミオ 13S」で130万円前後。2015年式で100万円前後(2019年3月現在)。

新車価格

1,490,400円(消費税込み)

ABOUTこの記事をかいた人

クルマ好きの40代男性。現在病気のため療養中です。

ブログは暇つぶし&リハビリ。週2で短時間のアルバイトをしていますが、普通の人のように毎日フルタイムで働くことはできません。

ブログの内容はあくまで秋ろーの個人的見解です。実際に車や商品、サービスを購入する際は、自分で試乗や調査をして確かめることをオススメします。

記事更新の時間は、大体、午後11時から12時頃にかけてを予定しています。

修正ばっかりしてると新記事の投稿ができないんで、新記事3に対して修正1くらいの割合でやってます(2019年6月〜)