新型 ポルシェ マカン ベースグレード 2.0L【試乗評価】SUVの外観を纏った高級スポーツカー [ABA-95BCNC]

ポルシェ・マカン・ベースグレードのフロント

今回の【試乗評価】は「新型 ポルシェ マカン ベースグレード 2.0L」。
2014年に登場した、5ドアのMクラス・クロスオーバーSUVです。

ディーラーに出向いて試乗をする場合、普通は営業マンが同乗するんですが、運が良ければ「自分ひとりで運転させてもらえる」なんてこともあります。ところが、今回はそのどちらでもなくて、なんと同乗してくれたのはポルシェ専属の整備士でした。購入意欲の低い「ひやかし」と見られたのか、それともポルシェならではの凝った趣向なのかは分かりませんが、とにかく普段聞けない貴重な話が聞けたので良かったです。

「ポルシェ・マカン」は、ポルシェ初のSUVとして人気の高い「ポルシェ・カイエン」の弟分という位置付です。カイエンよりひと回りコンパクトで軽量なボディを活かし、スポーツ走行の楽しめるSUVとして開発されました。

ポルシェ自身も「マカン」を「SUVで唯一のスポーツカー」と言ってますが、それは、軽量コンパクトなボディのせいだけじゃなくて、抑えられた全高による重心の低さってのも大きいです。重い上に重心まで高いとなれば、いくらポルシェでもそう軽快に仕上げることはできないでしょうからねえ。

ポルシェは、歴史のある名門スポーツカーメーカーですが、伝統的にスポーティな走りとある程度の使い勝手の良さ、もしくは合理性を大事にするところがあります。「ポルシェ・マカン」にもその伝統はしっかりと受け継がれていて、SUVとしての使い勝手の良さとスポーティな走りが上手いことバランスしてます。「ポルシェ製SUV」というブランドイメージからすれば価格も比較的リーズナブルで、ベースグレードならギリギリ600万円台から買えるってのも嬉しいポイントです。

上級グレードの「マカン S」については、「新型 ポルシェ マカン S【試乗評価】」の記事を御覧ください。

じっくりと読む時間の無い人は、文末の「【試乗評価】のまとめ」をどうぞ↓
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「新型 ポルシェ マカン ベースグレード 2.0L」の概要

純粋なポルシェの技術のみで作られている「911」や「ボクスター」なんかと違って、「マカン」の一部には「アウディ・Q5」と同じプラットフォーム(車台)が流用されてます。さらにベースグレードの場合はエンジンもアウディ系になんで、「Q5」の中では一番アウディ濃度が濃いです。

といっても共有されるパーツは3割程度ですから、兄弟車というほどじゃないです。乗り味にもポルシェならではのフィールがあるんで、「なんだ、見た目はポルシェだけど、中身はアウディのままじゃないか」という具合にガッカリさせられることはありません。

プラットフォームはVW系の「MLB」

プラットフォーム(車台)には、モジュラー思想によって作られたVW系の「MLB」を使ってます。モジュラー思想とは、色々な車種で幅広くプラットフォームを共有できるようにと、始めからある程度の柔軟性を持たせてある設計思想のことです。マカンに使われている「MLB」は中大型車種用ですが、この他にゴルフにも使われている中小型車種用の「MQB」があります。

エンジン縦置きのFFプラットフォームに、4輪を駆動する「AWD」システムを搭載。ドライ路面では前後トルク配分を「2:8」にセッティングして、後輪駆動に近い自然な動きを表現してます。

これに、デュアルクラッチ式トランスミッション「7速PDK」と、2.0リッター直列4気筒ターボを組み込みました。今回のベースグレードは、価格を安く抑えるため「アウディ・Q5」と同じエンジンを使っていますが、「GTS」や「S」、「ターボ」なんかの上級グレードは純粋なポルシェ製エンジンです。

ライバルは中大型高級クロスオーバーSUV

ライバルは、同じグループ内の「アウディ・Q5」や「BMW・X5」、「メルセデスベンツ・GLE」なんかの中大型高級クロスオーバーSUV。

2018年にマイナーチェンジ

2018年にマイナーチェンジ。内外装のアップデートと、装備の充実。新たに、設定された速度で前車に追従する「アダプティブクルーズコントロール」もオプションとして設定されました。ベースグレードに搭載されてる「2.0リッター直列4気筒ターボ」も改良され、若干トルクが向上。少しだけ燃費も良くなりました。

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外観

ボディサイズ、全長4680mmX全幅1925mmX全高1625mm。ホイールベース、2805mm。

兄貴分の「カイエン」が出た時は、それまでポルシェルックのSUVを見たことが無かったんで、「なんだか911を無理やりSUVにしたみたいで、違和感があるなあ」という印象だったんですが、今回のマカンは普通にカッコいいと思います。

新しいことに対応できないというのは、ちょっとばかり悲しいですが、まあ、カイエンのおかげで見慣れたんでしょうねえ。

フロント

ポルシェ911を彷彿とさせるフロントノーズに、おにぎり型のヘッドライト。誰がどうみても「ポルシェが作ったSUV」って感じです。

大柄で威圧感のあるカイエンに対して、マカンはコンパクトなんで、スポーティな小気味よさがありますね。個人的にも、マカンのほうが「911」に繋がるポルシェらしさがあって好きです。

サイド

リフトアップされた(持ち上げられた)ボディに、クーペのようになだらかなルーフライン。SUVのたくましさとクーペのカッコよさが、上手いこと盛り込まれています。一粒で二度美味しいってやつです。

リア

ポルシェ・マカン・ベースグレードのリア

スーパースポーツ「ポルシェ・918スパイダー」をモチーフにしたリアビューは、リアフェンダーが大きく張り出していて力強いです。

SUVにしては強く傾斜するリアウィンドウに、横に薄く長いリアコンビランプ。全体が滑らかな曲線で構成されているんで、プレミアムSUVにふさわしい上質感があります。

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内装

ポルシェ・マカン・ベースグレードの内装

しっとりとした樹脂パッドに上質な本革素材、鈍く輝くメタルフィニッシャー(シルバー)を組み合わせてます。911とかのスポーティなポルシェっぽさを残しながら、SUVのタフな感じもあります。

ボタンやシフトなど、ちょっとした作動パーツの操作感がとくかくウルトラスムーズで上質。特に、シュルル〜と引き出されるシートベルトの滑らかさにはまいりました。

シートの位置(座面)が、「一般的なセダンよりは高く、本格的なSUVよりは低め」という絶妙な位置にあるため、乗り降りがしやすいです。これなら、足腰の弱った家の両親(70代)も安心して乗せられます。

スマートキーは、一般的なプッシュスタート式じゃなくて、キーシリンダーにユニットごと差し込んで回すタイプです。このタイプのメリットとしては「キーを無くしにくいとい」う事と、古典的なキーとシステムが近いので「初めてでもすぐに馴染める」といった事があります。反面、「四六時中、カバンに入れっぱなしで使う」なんてズボラな使い方には向きません。

シート

フロントシートは厚みのあるがっちりしたシートで、座り心地が良いです。クッションには十分なストロークとコシがあり、表皮も柔軟。シートの形も良いため、体の圧力がキレイに分散されてます。これなら、長時間のドライブも苦じゃありません。

リアシートはフロントと比べればやや平板で、クッションも少し薄めです。といってもサイズ的には十分で、足元、頭上空間ともに広々。大人二人が快適に移動できるだけの、質感と十分なスペースがあります。

荷室

ポルシェ・マカン・ベースグレードの荷室

荷室空間は、幅、奥行きともに広くて、結構な荷物が積めそうです。リアエンドがクーペのようになだらかな形状をしているため、高さ方向は若干制限されますが、それでも500Lの容量があります。リアシートの背もたれを倒して収納すれば、さらに1500Lまで拡大できます。

床のボードを外すと底の浅い床下収納があるんで、工具とか雨具など、ちょっとした小物類を収納するのに便利です。

静粛性

エンジンのノイズ、バイブレーションともによく抑えられています。ボディには遮音材や吸音材、遮音性の高いガラスがふんだんに使われてるんで、車内はとっても静かです。

エンジンとミッション

1984cc・直列4気筒ターボエンジンに、7速PDK(デュアルクラッチ式)を搭載。
エンジンは、最高出力252ps/5000-6800rpm、最大トルク37.7kgf・m/1600-4500rpmを発揮。

エンジン

2.0リッター・ツインカムターボで4輪を駆動(フルタイム4WD)。

ポルシェ製のV6エンジンを搭載する上級グレードに対して、このベースグレードに搭載されるのはVW系の直4ターボです。アイドリングや低回転域では、若干、4気筒エンジンならではの安っぽさがありますが、回せば回すほどスムーズに吹け上がります。よく出来た自然吸気エンジンのような緻密な回転フィールを伴うんで、ポルシェの世界観ともバッチリです。

重量配分を最適化するため、エンジンはフロントアクスル(前輪の車軸)から後寄り、いわゆる「フロントミッドシップ」に搭載されてます。ダウンサイジングターボによって、低速から力強いトルクを発生。フラットなトルク特性もあって、必要十分以上のパワー感があります。街中でキビキビと走るだけなら、このベースグレードで十分でしょう。

ただし、低速からみっちりと詰まった緻密で重厚なフィールや、湧き上がるような力強さを求めるなら、上級グレードに搭載されるV6エンジンを選ぶしかありません。

トランスミッション

デュアルクラッチ式の7速PDKを装備。この手のトランスミッションとしては、ずば抜けて洗練されていて、シフトショックはほとんど感じられません。それでいてダイレクト感もあるんですから、これはもう無敵といっても良いくらい、CVTはいらないねって感じです。個人的にはVWの安いDCTも、それはそれで適度なショックがあって面白いんですが、やっぱりポルシェの方が一枚も二枚も上手です。

ステアリングコラムに装備された「パドルシフト」を手漕ぎで操作すれば、電光石火の早業でスパッと高速シフトを終えちゃいます。同乗してくれた整備士によると、マニュアルシフトの場合は0.1〜0.3秒で変速を終えてしまうそうです。

「減速する時のシフトも気持ちいいですよ」と勧められましたが、試乗コースの終盤で運悪く信号に掛かってしまい、減速のための十分な距離を取ることができませんでした。ちゃんちゃん。

その時の説明では、減速しながらシフトダウンを行うことで、ブリッピングによるエンジン回転合わせ(自動で空ぶかし)が入るんで、それが実に気持ちよくてクセになるという事でした。

乗り心地とハンドリング

前後ともにマルチリンク式サスペンションを装備。

乗り心地

装着タイヤは、前輪235/55R19、後輪255/50R19。

高剛性ボディに高性能スポーツサスをがっちりと組み付けてます。ほどよく引き締まった重厚感と、高級車にも通じるしなやかさが同居している感じで、まるで上質なスポーツハッチにでも乗っているようです。SUV特有の腰高感とかもほとんど無くて、ポルシェ自身が「このクラスで唯一のスポーツカー」と自認するだけのことはあります。

目地段差やジョイントなど、路面からの衝撃はしなやかに吸収して車内に鋭い衝撃を伝えることはありません。といっても、まったく何も感じないというわけではなくて、正確に路面状況を伝えてくるのは「流石にポルシェ」といったところでしょう。

ロールホールディング性が高いので、うねりのある路面を通過する時やコーナリング中もフラットな姿勢を崩しません。ベースとなっているのは「アウディQ5」ですが、そこからさらにスポット溶接を増やして剛性を強化しているのが効いているんでしょうねえ。ボディから「ミシっ」とか「ギシギシ」といった低級音が聞こえてくることはまず無いです。

ハンドリング

重いエンジンを積んだV6モデルよりも鼻先が軽いので、ハンドリングに軽快感がありますね。しかも、4WDの駆動配分を後輪寄りにしているため、FRに近い素直さとか気持ちの良さがあるんです。

ステアリングフィール自体には適度な重さとしっとり感があって、「スポーツカーと高級車の良いとこどりをした」ような欲張りなフィールが味わえちゃいます。

大柄なSUVに特有の、大きめのロール感とかユサユサとした揺れも控えめ。まるでハッチバックとかセダンのように僅かなロールを伴いながら、自然な身のこなしでコーナーを抜けていきます。

といっても、ステアリングの反応は基本的に穏やか。ステアリングセンターから1mm動かしてだけで、すぐにノーズの向きを変えるような過激さはありません。まあ、もちろん、「クラス唯一のスポーツカー」とポルシェ自身が銘打つだけあって、ドライバーの操作にリニアに反応する楽しさはあります。

営業マンの話では、ステアリングスピードを適度にスローにしてあるのは、長距離ドライブでの疲れを軽減するためだそうです。また、この特性は「911をはじめとする全てのポルシェに共通している」ということでした。

それから、アウディのプラットフォームをベースにしているのは事実だが、ポルシェ独自の設計も多く、エンジンはアウディよりもさらに後方に搭載され、駆動配分もポルシェの味とか走りの楽しさを出すため後輪寄りにしてあるそうです。それに伴って、タイヤサイズも後輪の方が太く(接地面がワイド)なってます。

【試乗評価】のまとめ

「新型 ポルシェ マカン ベースグレード 2.0L」は、ポルシェ911にも通じるスポーティな外観と、SUVならではの逞しさを併せ持つ「MクラスのクロスオーバーSUV」です。

ポルシェと言えば、「一線級のスポーツカーでありながら高い実用性を併せ持つ」というのが大きな美点です。

それはマカンも同じで、室内は結構広いし荷室空間にも十分な余裕があります。「手荷物の置き場に困る」なんてピュアスポーツならではの悩みはありません。もちろん、スポーティな走りとか上質な乗り味も忘れちゃいません。全ての要素がバランスよく配置された、欲張りな車になってます。

それから、「しっかりとメンテナンスをして、定期的な部品交換を忘れなければ意外と故障が少ない」というのもポルシェのメリットです。実際、これには合理的な理由があって、整備士の話では、「元々スポーツカーとして作られているため、はじめから高い負荷に耐える設計になっている」ということでした。一般的にトラブルが起きやすいといわれる「デュアルクラッチ式トランスミッション」も、「ポルシェの場合は、ほとんど大きなトラブルは起きない(整備士談)」ということです。

「スポーティな車が好きだけど、今回は家族のためにある程度実用性も重視したい」とか、「上質でスポーティなSUVが欲しい」、はたまた「流行りのSUVに乗りたいけど、ポルシェの世界観にも興味がある」なんて欲張りな人にピッタリな車だと思います。

中古車市場では

2017年式「新型 ポルシェ マカン ベースグレード 2.0L」で600万円台。2014年式で、500万円台(2019年1月現在)。

新車価格

6,990,000円(消費税込み)

ABOUTこの記事をかいた人

クルマ好きの40代男性。現在病気のため療養中です。

ブログは暇つぶし&リハビリ。週2で短時間のアルバイトをしていますが、普通の人のように毎日フルタイムで働くことはできません。

ブログの内容はあくまで秋ろーの個人的見解です。実際に車や商品、サービスを購入する際は、自分で試乗や調査をして確かめることをオススメします。

記事更新の時間は、大体、午後11時から12時頃にかけてを予定しています。

修正ばっかりしてると新記事の投稿ができないんで、新記事3に対して修正1くらいの割合でやってます(2019年6月〜)