専業主婦の「逸失利益」については、「実態のある賃金収入が無いという」考えから、以前は補償されないのが一般的でした。
もちろん、現在この考えは否定され、専業主婦であっても「逸失利益」が支払われます。
専業主婦に「逸失利益」が認められるようになったきっかけ
このように専業主婦に「逸失利益」が認められるようになったきっかけは、1974年の最高裁におけるある判決です。
当時、7歳の児童が交通事故で死亡し、裁判によって「逸失利益」の額が争われることになります。
最高裁の前段階となる控訴審では、高校を卒業してから結婚適齢期となる25歳までの7年間について、「逸失利益」を補償するという判決がくだされます。
これを受けた被害者家族は、25歳を過ぎてからの専業主婦期間についても、「逸失利益」が支払われるべきだと最高裁へ上告を申し立てます。
その後、最高裁では被害者家族の訴えを全面的に認め、専業主婦にも賃金補償として「逸失利益」を支払う必要があるという判決を下します。
これにより、専業主婦の労働にも賃金的な価値を見出すという流れが生まれ、女子労働者の全年齢平均賃金が「逸失利益」として計算されるようになったのです。
ただし、「体の不調により止むを得ず主婦業に従事していた」という人の場合、女子労働者の全年齢平均賃金が適用されると有利になるという考えから、いくらか減額されることが多いです。
パートタイマーの主婦の場合
パートタイマーの主婦における「逸失利益」の計算は、給与所得者に準じる扱いとなります。これは、フリーターや学生アルバイトも同様です。
基準となる基礎収入については、会社など雇い主側から所得を証明するものが発行されているはずです。多くの場合は、これをもとに「逸失利益」が計算されます。
ただし、パートタイマーやアルバイターで問題になるのが、「その仕事をいつまで継続して行う事ができたか」という継続性についてです。ある程度、長い期間継続して務めている実績があれば、それを元に計算するだけですが、勤めてからあまり時間が経っていない場合は計算が難しくなります。
また、賃金が女子労働者の全年齢平均賃金から大きく下まわるという場合、主婦としての基礎収入に賃金を合算して計算される場合もあります。
この後、何歳まで働くことができたのかという「就労可能年数」については、67歳、もしくは平均余命の半分のうち、長い方が採用されます。
65歳で平均余命が16年の場合、67歳よりも平均余命の半分を足した73歳の方が長いので、73歳までの期間をもとに「逸失利益」が計算されます。