今回の【試乗評価】は「新型 スズキ・ソリオ バンディット ハイブリッド SV(フルハイブリッド仕様・4代目)」。
2015年にフルモデルチェンジした、コンパクトカークラスのハイト系ワゴン(5ドア)です。
ソリオの前身となる「スズキ・ワゴンRワイド」は、軽自動車「ワゴンR」のプラットフォームとパーツをベースにボディサイズを拡大。コンパクトカーサイズに仕立てた「ハイト系ワゴン」の先駆け。コンパクトなサイズと広々した室内、使い勝手の良さが受けて大ヒットとなったモデルです。その後、他社からも「トヨタ・bB」や「日産・キューブ」といった似たようなコンセプトで作られたフォロワーを生み出しています。
2015年に登場した4代目ソリオは、その初代のコンセプトを受け継ぎながらも小型車用の新世代プラットフォームを採用。優れた燃費性能と安全性、高い運動性能を実現しています。
2016年には、これまでの「マイルドハイブリッド仕様」に加えて「フルハイブリッド仕様」を追加。
マイルドハイブリッドの基本構造はそのままに、駆動用モーターと駆動用リチウムイオンバッテリーを組み合わせ、トランスミッションにはダイレクトな変速フィールが魅力のロボタイズドトランスミッション「AGS」を採用しています。
ライバルは、「ダイハツ・トール」や「トヨタ・ルーミー」、「スバル・ジャスティ」などコンパクトカークラスのハイト系ワゴン。
「バンディット」は、「ソリオ」をベースに精悍な印象を強めたメーカー純正カスタマイズモデルです。
マイルドハイブリッド仕様のソリオについてはこちら↓
※じっくりと読む時間の無い人は、文末の「【試乗評価】のまとめ」をどうぞ。
「新型 スズキ・ソリオ バンディット ハイブリッド SV(フルハイブリッド仕様・4代目)」の外観
ボディサイズ、全長3710mmX全幅1625mmX全高1745mm。ホイールベース、2480mm。
フロント
二段構えのヘッドライトに、シャープなメッシュグリル。スポーティなエアロバンパーを装備。今流行りのカスタム系フロントフェイスです。
サイド
短いフロントノーズに大きなキャビン(居住スペース)。前後ギリギリまで切り詰められたオーバーハング(タイヤからボディ端までの長さ)。コンパクトにまとめられた道具感が気持ちいいです。
リア
真四角なリアエンドに、L字型リアコンビランプ。角ばった形状のリアバンパー。小さなボディに、がっしりとした安定感を与えています。
内装
直線基調で構成されたメカニカルな室内。シルバーメッキパーツやピアノブラック調パネルが組み合わされ、まずまずの質感です。
センターコンソール最上段には、三眼式センターメーター。視線移動が少なく表示も大きいため、視認性は良好。
中段には大型ワイドディスプレイ。メーカー純正タイプは、カクつき気味で使い勝手はいまひとつ。メニューも整理されていない印象です。
エアコンは大きなプッシュボタン式。ボタンの表面に立体的な凸凹があるため、手探りでの操作も可能です。
助手席シートアンダーボックスやインパネトレイ、カップホルダーなど小物入れも豊富に用意されます。
シート
フロントシートには適度なコシと硬さがあり、疲れにくい構造。表皮も柔軟で、腰の高い位置からお尻、太ももの裏にかけてモッチリと支えます。
リアシートには、ロングスライド&リクライニング機構を装備。足元、頭上空間には十分なスペースがあり、大人二人でゆったりと座ることができます。ただし、背もたれは高さが足りず形も平板、長距離(50km以上)ドライブには向きません。
リアシートには「ロールサンシェード」が装備され、強い日差しを程よく緩和。暑い夏のドライブを助けます。
荷室
リアシートを一番後ろまで下げると、手荷物程度しか積めませんが、リアシートを前にスライドさせたり、5:5で折りたたむことでさらに容量を拡大できます。
床下に駆動用リチウムイオンバッテリーを搭載するため、マイルドハイブリッド車に備わる「床下収納」はありません。
静粛性
負荷の少ない巡航時 エンジン回転が抑えられ 電気モーターの駆動力が高まる すぐれた静粛性を発揮
エンジンとミッション
1242cc・直列4気筒DOHCエンジン+電気モーターに、5速ATが組み合わされます。
エンジン:最高出力91ps/6000rpm、最大トルク12.0kgf・m/4400rpm。
電気モーター:最高出力13.6ps、最大トルク3.1kgf・m。
車両重量990kg。JC08モード燃費、32.0km/l。
エンジン
1.2リッターのツインカムエンジンに電気モーターを加えたハイブリッドシステムで、前輪を駆動(FF)。
マイルドハイブリッド用の「ISG」モーターに加えて、フルハイブリッド用モーター「MGU」と駆動用リチウムイオンバッテリーを搭載。通常のエンジン出力に電気モーターの駆動力が上乗せされ、低速からフラットなトルクを発生します。従来のマイルドハイブリッド仕様よりも、さらにキビキビとした活発な走りです。
フルハイブリッド化された事によって、条件が整えば(EOCモードで時速20キロ以下など)EV走行も可能ですが、電気モーターの出力が小さいため、少しアクセルを踏み込むだけですぐにエンジンが始動します。
フルハイブリッド化によって燃費効率が大きく向上。カタログ上の数値は、クラストップレベルとなる「32.0km/l」です。
トランスミッション
シングルクラッチ式5速AT(AGS)を装備。マニュアルギアボックス機構に自動変速装置を組み合わせた、いわゆる「ロボタイズド・ミッション」と呼ばれるトランスミッションです。
ハイブリッドシステムの大型化によってCVTを搭載するスペースが無くなった事が、このトランスミッションを採用する大きな理由ですが、同時にCVTでは得られないダイレクト感やエネルギー効率の高さも実現しています。
シングルクラッチトランスミッションの大きな欠点として、変速時の減速感やトルクの切れ間があります。しかし、ソリオの「AGS」は、変速時に電気モーターのアシストを行う事でこれを緩和しています。
つまり、ダイレクトなシフトフィールを残しながら、変速時の減速感だけを消し去っているのです。アクセルの踏み加減で速度調整もしやすく、完成度の高いトランスミッションといえます。
乗り心地とハンドリング
前輪にマクファーソン・ストラット式サスペンション、後輪にはトーションビーム式サスペンションを装備。
乗り心地
装着タイヤは、165/65R15。
背の高さの割にロールは適度に抑えられています。かといって足回りがガチガチに固められているわけでもなく、ほどよく引き締まったしなやかな乗り味です。重量増(40kg)による僅かな重厚感も感じられます。
低速域での快適性を重視したセッティングですが、高速域での安定性もそこそこで、フラットな姿勢を維持してまずまずの直進性を示します。
ハンドリング
マイルドハイブリッド仕様よりも若干重くなりましたが、追加された重量は車体の低い部分に集中しているため、ロールが大きくなったりハンドルが取られるようなことはありません。
程よい重厚感を伴った自然なステアリングフィールです。リアの接地性も高く、コーナリング中の安定感が増しています。
最小回転半径は、4.8m。コンパクトなボディと相まって、街中や狭い路地での取り回しも抜群。
先進安全技術
予防安全技術として、前方の車両や歩行者を検知して衝突を未然に防止、もしくは被害軽減をはかる「デュアルカメラブレーキサポート(夜間歩行者検知)」や「後退時ブレーキサポート」、「誤発進抑制機能」、「車線逸脱警報機能」、「ふらつき警報機能」を装備。
運転支援技術として、先行車との一定の距離を保ちながら設定した速度で追従する「アダプティブクルーズコントロール」や、先行車や対向車がいる時は自動でロービームに切り替える「ハイビームアシスト」、「先行車発信お知らせ機能」を装備。
【試乗評価】のまとめ
「新型 スズキ・ソリオ バンディット ハイブリッド SV(フルハイブリッド仕様)」は、コンパクトなボディに背の高いボディを組み合わせてスペース効率を最大限まで高めた、コンパクトカークラスのハイト系ワゴン(5ドア)。
高さの割にロールはよく抑えられており、ハンドリングも自然です。足回りは若干引き締められていますが、快適性を損なうほどではありません。しっとりとした上質感さえ伴います。
追加された駆動用モーターと駆動用リチウムイオンバッテリーによって、低速からフラットなトルクを発生。街中では十分以上の動力性能です。スペース効率の都合で採用されたロボタイズドトランスミッション「AGS」もダイレクトでスムーズ、電気モーターのサポートによって変速時の減速感も緩和されています。
マイルドハイブリッド仕様と比較すると20万円の価格差がありますが、これを燃費だけで取り戻そうとするのは難しいです。
ただし、フルハイブリッド仕様にはトルクフルな走りと「AGS」によるダイレクトな変速フィール。重量増によるほどよい重厚感があります。こういったモノに価値が見いだせるのなら、フルハイブリッド仕様をオススメしますが、コストパフォーマンスを重視する場合は価格の安いマイルドハイブリッド仕様がオススメです。
中古車市場では
2017年式「スズキ・ソリオ バンディット ハイブリッド SV(フルハイブリッド仕様)」で170万円前後(2018年6月現在)。
新車価格
2,046,600円(消費税込み)