今回の【試乗評価】は「新型 日産 スカイライン 200GT-t ターボ(V37・13代目)」。
2014年にフルモデルチェンジした、Lクラスの4ドアセダンです。
1957年に初めて登場した「初代スカイライン」は、ついこの間、2017年に生誕60周年を迎えたところです。
初代は日産自動車じゃなくて、今はなきプリンス自動車(正確にはその前身)製の高級セダンとして登場。当時は、未舗装の悪路が多かったんで、車のサスもそれに対応してトラックベースの頑丈なサスを使うことが多かったです。これに対して初代スカイランは、乗り心地と耐久性のバランスを取った「ド・ディオンアクスル(リア)」と、「ダブルウィッシュボーン式サス(フロント)」を採用。これに軽量高剛性のモノコックボディを組み合わせてました。
搭載されるパワートレーンも強力で、1.5OHVで60馬力を発生。実に最高速度は125km/hにもおよびます。
先行して発売されていた「初代トヨタ・クラウン」に対抗するという意味もあったんでしょうが、とにかく技術的にはかなり革新的な車だったんです。
思い出に残る歴代のスカイランたち
スカイラインが登場して60年以上が経つということは、50年近く生きている僕の人生よりも長いんですねえ。まあ、言ってみれば、僕の人生のどこかに必ずスカイランがいたってことですから、人生の節目節目で印象に残っているスカイランもいくつかあります。
例えば、子供の頃、街で見かけることの多かった1972年登場の「4代目・日産スカイラン」。通称「ケンメリ」と呼ばれるこのスカイラインは、リアフェンダーの上に「サーフィンライン」という特徴的なキャラクターラインを持つことでも有名です。僕が子供のころは「なんでこんなラインがあるんだろう?」と不思議に思ったもんです。
そんな歴代スカイランの中でも、特に印象に残っているのは、なんといっても1989年に登場した「8代目・日産スカイライン」でございます。その頃は、あまり車に詳しくなかったんですが、とにかくカッコよくて「いつかはこんな車に乗りたい」なんて憧れを持って眺めていました。
「新型 日産 スカイライン 200GT-t ターボ(V37・13代目)」の概要
そんな歴史を受け継いで誕生した「13代目・日産スカイライン」は、海外では「インフィニティQ50」として発売されていたプレミアムセダンがベースです。ということで、これまでのスカイランとはちょっとばかり毛色が違っていて、かなり上質な車になってます。いわゆるプレミアム路線てやつですね。価格も先代より100万円近く高価で、ボディの前後に輝くエンブレムも「日産」じゃなくて、なぜか「インフィニティ」のまま。
「スカイラン」の名前を残したい日産サイドが、なんとか頑張ってモデル名だけは死守したものの、ブランド価値の低下を心配する「インフィニティ」側の意向を尊重して、エンブレムは残したって感じでしょうなあ。
想定される顧客層は、「走りの質感やスタイリングにこだわりのある40代男性」。月間の販売目標台数は国内高級セダン市場の縮小を考慮して、わずか200台となってます。まあ、日産からすれば、世界市場で十分に売れているからこれでも採算が合うってことなんでしょう。
プラットフォームなど
プラットフォーム(車台)は、日産フーガにも使われてるLクラス後輪駆動用の「FR-L」プラットフォームです。ただし、エンジンとトランスミッションは、ダイムラーとルノー・日産アライアンスによる業務提携プランによって提供される、メルセデスベンツ製「2.0Lツインカムターボ」+「7速AT」を搭載してます。このパワーユニットは基本的に「メルセデスベンツ・E250」と同じですが、E250用が「成層燃焼リーンバーン方式」なのに対して、スカイライン用は「均質燃焼ストイキ方式」となるなど若干の違いがあります。
先行して発売された、ハイブリッド版・スカイラインについては、下記のページをごらんください↓
ライバルは
ライバルは、「メルセデスベンツ・Cクラス」や「BMW・3シリーズセダン」、「アウディ・A4」など、Mクラスのドイツ製プレミアム・4ドアセダンです。
マイナーチェンジ情報
2017年にマイナーチェンジ。内外装のアップデートと共に、ドアを開けると同時にドライバーを光でお出迎えする「アンビエントLEDライトシステム」をオプションとして設定。ボディカラーには、新色「インペリアルアンバー」をはじめとして9色があります。
外観
ボディサイズ、全長4815mmX全幅1820mmX全高1450mm。ホイールベース、2850mm。
フロント
低く身構えたフロントノーズに、「インフィニティ」のシンボルがあしらわれた大型メッシュグリル。シャープなLEDヘッドライト。スポーティなスカラインと、上質なフィンフィニティのキャラクターを併せ持つフロントフェイス。
サイド
ロングノーズ&ビッグキャビンの美しいFRルック。なだらかなルーフラインに、ロングホイールベース(前後タイヤの感覚が長い)。筋肉質な抑揚をみせるサイドパネル。伸びやかで力強いサイドビューを構成しています。
リア
傾斜の強いリアウィンドウに、ふくよかなヒップライン。ハイデッキ化されたリアエンド。プレミアムセダンにふさわしい、上質感あふれる後ろ姿。
ワイドに拡がるリアコンビランプが、安定感を強調しています。
内装
上質な樹脂パネルに、シルバーに輝くガーニッシュ。有機的な曲線で構成されたスポーティな室内。フィニッシャーには本アルミがさり気なくあしらわれ、上質感を強調しています。
センタークラスター上段には、大型ツインディスプレイ(8インチワイド&7インチワイド)を装備。上下どちらのディスプレイにもタッチパネルが採用され、「上段にはナビゲーションなど優先度の高い情報を表示しておき、下段にはタッチアイコンなどの操作メニューを表示する」なんて使い方ができます。
シート
フロントシートは適度な包まれ感のある快適なシート。肩周りから腰、太ももの裏に掛けて、均一な力で体をシットリと支えます。
リアシートには、体のラインに合わせて自然な窪みをデザイン。背もたれの長さ、座面の前後長ともに適切で、体を支える機能が高い。なだらかなルーフ形状にも関わらず、ヘッドクリアランスは適切で、足元にも十分な余裕があります。大人が二人で座っても窮屈感はありません。
荷室
駆動用バッテリーが搭載されないため、ハイブリッド仕様よりもさらに広い荷室(500L)を確保しています。家族4人なら荷物のかさばるキャンプもなんとか行けそうです。
静粛性
室内にはしっかりと遮音材が施され、日常領域での静粛性は十分です。ただし、アクセルを強く踏み込むと、エンジンノイズを高めやすい傾向にあります。
エンジンとミッション
1991cc・直列4気筒DOHCターボエンジンに、7速ATが組み合わされます。
エンジン:最高出力211ps/5500rpm、最大トルク35.7kgf・m/1250-3500rpm。
車両重量1670kg。JC08モード燃費、13.0km/l。
エンジン
メルセデスベンツから供給される2.0Lツインカムターボで後輪を駆動(FR)。極低速域で若干トルクが不足するものの、実用域を中心にフラットなトルクを発生するパワフルなエンジンです。自然な吹け上がりで、1.7t弱の重量級ボディを軽やかに加速させます。
若干エンジンノイズは大きめですが、アクセルに対する反応はダイレクトで不快なターボラグもありません。スカイラインにふさわしいスポーティなパワーユニットです。
エネルギー効率と静粛性を高める、アイドリングストップ機能が搭載されます。ただし、再始動時の振動が大きめでプレミアムセダン用としては物足りません。
トランスミッション
トルコン式の7速ATを装備。ギアのつながりがスムーズで、変速ショックをほとんど感じさせません。トルクフルなエンジンの美味しいところを活かして、1.7t弱のボディを効率よく走らせます。
乗り心地とハンドリング
前輪にダブルウィッシュボーン式サスペンション、後輪にはマルチリンク式サスペンションを装備。
乗り心地
装着タイヤは、前後ともに225/55RF17。
適度な硬さを伴った、しなやかな乗り味。路面の段差を拾いやすいものの、サスペンションの取り付け剛性が高いため、衝撃の角は「まろやか」にいなされます。
高速域での安定性も高く、横風やわだちに進路を乱されにくいです。あらゆる状況下で、ゆったりとしたクルージングが楽しめます。
ハンドリング
パワーステアリングは重めのセッティングで、重厚感を伴った素直なステアリングフィールを実現しています。ドライバーの操舵に応じて、正確なラインを描きます。
リアの接地性が高く、コーナリング中も安定した姿勢を維持。うねりのある路面でも姿勢を乱されにくいです。
ハイブリッド仕様に搭載される「ステアリング・バイ・ワイア」ではなく、一般的な電動油圧パワーステアリングを搭載。機械としての熟成が進んでいるため、「ステアリング・バイ・ワイア」のような違和感はありません。路面の状況を正確に伝えて、気持ちの良いドライビングをアシストします。
最小回転半径は、5.7mと少々大きめ。狭い路地では切り返しに苦労しそうです。
その他
先進安全技術は、「全方位安全支援システム」を全グレードに標準装備。
このシステムには、予防安全技術として「インテリジェントFCW(前方衝突予測警報)」や、衝突を予測して回避、被害軽減をはかる「インテリジェント・エマージェンシーブレーキ」といった機能を装備。
運転支援技術として、前車との適切な車間を維持して設定した速度で追従する「インテリジェント・クルーズコントロール」や「ハイビームアシスト」、「アクティブAFS」、「インテリジェントペダル」といった機能を搭載しています。
【試乗評価】のまとめ
「日産 スカイライン 200GT-t ターボ(V37・13代目)」は、海外でプレミアムセダン「インフィニティQ50」として販売されるため、これまでとは一味異なる上質なクルマづくりが行われています。
さらにエンジンとトランスミッションには、メルセデスベンツ製2.0Lツインカムターボ+7速ATが搭載され、スムーズでトルクフルな走りを実現。ややエンジンノイズを高めるシーンがあるものの、日産製エンジンとは異なるフィールが味わい深いです。
ハンドリングは重厚感あふれる素直なフィールで、1.7t弱のボディをスポーティに走らせます。乗り味には多少の硬さがあるものの、衝撃の角がまろやかなため不快な印象はありません。
「上質なプレミアムセダンに乗りたいが、スポーティな走りも捨てられない」とか、「メルセデスベンツやBMWもいいけど、ちょっとご近所の目が気になる」なんて人に最適なクルマです。
中古車市場では
2017年式「日産 スカイライン 200GT-t タイプP ターボ(V37・13代目)」で300万円前後。2014年式「日産 スカイライン 200GT-t ターボ(V37・13代目)」で230万円前後(2018年6月現在)。
新車価格
4,164,480円(消費税込み)