今回の【試乗評価】は「新型 スバル レガシィ B4 リミテッド(6代目・BN9)」を試乗レポート。
2014年にフルモデルチェンジした、Mクラスの4ドアセダンです。
先代レガシィB4&アウトバックは、北米市場に向けて大型化したボディが受け、大ヒットとなったモデル。日本市場でもまずまずの成績を収めますが、北米市場の売上にはかないません。ついに6代目レガシィでは、日本市場向けの主力車種「レガシィ・ツーリングワゴン」が落とされ、「B4」と「アウトバック」のみのラインナップとなりました。
ボディサイズもさらに拡大し、もはや日本の狭い路地裏や立体駐車場では持て余す堂々たるサイズ感があります。かつてのレガシィみたいな手頃なサイズ感がお好みなら、日本市場に特化した「レヴォーグ「や「WRX S4」がオススメです。
もちろん、サイズの問題を除けば、B4の完成度やまとまりの良さはかなりのレベルに達しています。ボディが大型化したことにより、居住性や安全性能も大きく向上しています。
※じっくり読む時間の無い人は、文末の「【試乗評価】のまとめ」をどうぞ↓
「新型 スバル レガシィ B4 リミテッド(6代目・BN9)」の概要
ボディサイズが大きくなったと賛否両論(否の方が多いんですが)を浴びていた先代から、さらに一回り大きさを拡大しています。
ターボモデルは無し!
パワートレーンは、2.5L水平対向エンジンプラスCVTのみ。「ベースグレード」に加えて、装備を充実させた「リミテッド」の2グレード構成です。
先代同様、レガシィ伝統のターボモデルはバッサリとリストラされています。「パワフルな走りを求めるなら、レヴォーグやWRXをとうぞ」といったところでしょうか。
ライバルは?
ライバルは「トヨタ・カムリ」や「日産・ティアナ」、「ホンダ・アコード」などの中級セダン。ただし、FFベースのフルタイム4WDと考えれば、直接的なライバルは見当たりません。「アウディ・A4」ではちょっと高級すぎますしね。
2017年にマイナーチェンジを実施。内外装の小変更とともに、足回りやパワートレーンの改良。EyeSightを始めとする安全機能のアップデートが行われています。
外観
ボディサイズ、全長4800mmX全幅1840mmX全高1500mm。ホイールベース、2750mm。
フロント
猛禽類をイメージさせる鋭いLEDヘッドライトに、やたらと分厚いフロントフード。せっかく薄いフラット4エンジンを搭載しているのですから、もっとシャープなデザインにして欲しいとろこですが、安全対策(歩行者保護とか)なんかのからみでこの程度の厚さは必要なのかもしれませんね。
マイナーチェンジによって、ヘッドライトやグリル、フロントバンパーのデザインが変更されています。抑揚のあるラインが増えてダイナミックな印象になりましたが、その分、ややゴチャゴチャした感じも。。。
サイド
ロングホイールベース(前輪と後輪の間が長い)に、なだらかなルーフライン。重厚感あふれる伸びやかさを表現しています。
もうちょっとボディが薄くてフロントオーバーハング(前輪からボディ先端までの距離)が短ければ、さらにカッコよくなるんですが。そうすると整備性が悪くなったり室内空間が狭くなったりとデメリットも増えるので、このあたりは難しいところです。
リア
なだらかに下降するルーフラインに、ハイデッキ化されたリアエンド。複雑な形状を巧みにまとめ上げた上質なリアコンビランプ。
リア周りはこの「レガシィB4」一番の見せころで、フラッグシップセダンにふさわしい上質感とカッコよさがあります。反面、無骨なレガシィらしさは薄まってしまいました。
内装
スッキリと機能的に整理された、シンプルで上質な室内。今回のマイナーチェンジでソフトパッド周辺にステッチが追加され、さらに上質な雰囲気になってます。
ナビゲーションを表示するモニターは、一回り大きくなり8インチに。ツライチのピアノブラック調パネルによって、エアコンとナビ周りの一体感が向上してます。
エアコンは運転席と助手席、左右で独立した温度調整が可能。調整ダイヤルの中に設定温度が表示されるため、直感的でわかりやすいです。
運転席周り
リミテッドグレードは、本革巻きステアリング&シフトノブを標準装備。
メーターナセルには砲弾型の二眼メーターを装備。メーターリングにはLEDイルミネーションが仕込まれ、あらかじめ用意された10色の中から好みの色が選べます。
メーター中央には、5インチの大型マルチインフォメーションディスプレイを装備。EyeSightの作動状況から各種車輌情報まで、運転に必要な情報を端的に表示します。
シート
しっとりとした柔軟性のある本革表皮に、ストロークの深い分厚いクッション。適度なサイドサポートが組み合わされ、身体全体を均一な圧力で包み込むように支えます。
リアシートは、座面の前後長、背もたれの長さともに適正。ロングホイールベースを活かして、足元空間にも十分以上のスペースを確保しています。アウトバックほどではありませんが、頭上空間の余裕も申し分ありません。大柄な大人二人で座ってもゆったりとくつろぐ事ができます。
荷室
幅、奥行きともにたっぷりとした、大容量トランクスペース(525L)を確保。家族4人くらいなら、2泊3日旅行も十分可能でしょう。リアシートの背もたれを分割して倒せば、さらに容量を拡大できます。
床下には大型サブトランク(18L)があるので、細々とした工具類や小物を収納する時に便利です。
静粛性
エンジンノイズの低減や遮音フロントガラスの採用、ボディ各部に仕込まれた遮音材によってクラスを超える静粛性を確保。
荒々しくスポーティな旧来のイメージは薄れ、大人の上質なセダンになってしまいました。車としては確実に進化しているんですが、「あんなに可愛かった甥っ子が、久しぶりに遭ってみると妙に大人びていてよそよそしい」なんて感じに近い寂しさがあります。
エンジンとトランスミッション
2498cc・水平対向DOHCエンジンに、CVTが組み合わされます。
エンジンは、最高出力175ps/5800rpm、最大トルク24.0kgf・m/4000rpm。
車両重量1540kg。JC08モード燃費、14.8km/l。
エンジン
2.5Lフラット4で4輪を駆動(フルタイム4WD)。
パワフルな2.0Lターボエンジンは廃止され、2.5L自然吸気エンジンに一本化されました。といっても大柄な4WDモデルとしては比較的軽い(1540kg)ため、結構軽快に走ります。
マイナーチェンジによってエンジンやトランスミッションが再調整され、スムーズさやレスポンスも向上。フラッグシップモデルにふさわしい上質感を備えました。ユーザーの高齢化に合わせてレガシィも大人になったちゅうわけです。
それでも「ターボモデルならではの強烈な加速感が忘れられない」という人には、レヴォーグやWRX S4の最上級グレードをオススメします。
トランスミッション
ベルトとプーリーを使って無断階に変速するCVTを装備。
ダイレクト感とすべらかさがさらに向上。CVTならではの不自然さはほとんど感じられません。
ドライバーの好みに合わせてドライブモードを変更する「SI-DRIVE」を装備。燃費に配慮した「インテリジェントモード」と、スポーティな走りを味わう「スポーツモード」、ダイレクトなアクセルレスポンスで刺激的な走りを表現した「スポーツ・シャープモード」の3モードがあります。
ふつうに街中を流すだけなら「インテリジェントモード」で十分です。逆に「スポーツ・シャープモード」は、反応がダイレクトすぎてちょっと扱いにくい感じがあります。
乗り心地とハンドリング
前輪にマクファーソン・ストラット式サスペンション、後輪にはダブルウィッシュボーン式サスペンションを装備。
乗り心地
装着タイヤは、255/50R18。
リミテッドグレードには、きめ細やかな動きで定評のあるKYB製ダンパー「スタブレックス・ライド」を装備。ダンパーの中を潤滑するオイルに二系統の経路を設ける事で、低速域でのしなやかな乗り味と高速域でのフラット感を両立しています。
アウトバックにも同じ仕組みのダンパーが装備されますが、ストロークが長いせいかあちらにはもう少しゆったりした感じがあります。僕が好きなのもアウトバックの足回りですが、これはどちらが優れているというものでは無く単なる好みの問題ですね。
マイナーチェンジによって足回りのしなやかさが向上。目地段差では路面からの突き上げを柔軟に吸収して、滑るように走り抜けます。
大柄なボディの割になぜか地味な印象のレガシィB4ですが、このスタブレックス・ライドの乗り味だけでも十分購入する価値があると思いました。
ハンドリング
パワーステアリングの改良によって、操舵感(レスポンスとか滑らかさ)が向上。
基本的に穏やかなフィールに終始しますが、緩慢というわけではありません。ドライバーの操舵に素直に反応して、狙ったラインを正確にトレース。自然な反応が気持ち良いです。
コーナリング中はある程度のロールを発生しますが、姿勢変化が穏やかで予測しやすいため違和感を感じにくい。たっぷりとしたストロークを活かして、タイヤをしっかりと路面に押さえつけます。
最小回転半径は5.6mと、ボディサイズを考えれば標準的なレベル。
先進安全技術
最新の「EyeSight ver.3」に、ドライバーの認識範囲を広げる「アイサイト・セーフティ・プラス」を追加。
予防安全技術として、衝突の危険を検知して衝突を回避、もしくは被害軽減をはかる「プリクラッシュブレーキ」や後退時の衝突を避ける「後退時自動ブレーキ」。誤動作による飛び出しを防ぐ「AT誤発進抑制制御(前進&後進)」を。
運転支援技術としては、設定した速度(0~120km/h)で先行車に追従する「全車速追従機能付きクルーズコントロール」や車線中央維持や車線逸脱抑制を行う「アクティブレーンキープ」、ふらつきや車線逸脱を知らせる「警報&お知らせ機能」を装備しています。
【試乗評価】のまとめ
「新型 スバル レガシィ B4 リミテッド(6代目・BN9)」は、スバルが誇るMクラスの4ドアセダン。
北米市場向けに大型化された先代レガシィの成功を受け、さらに一回り大きくなりました。大型化されたボディはデザインの自由度やボディ剛性の向上に使われ、先代よりも上質で存在感のある車に生まれ変わっています。
2.5L水平対向エンジンは、スムーズかつ上質なフィールで必要十分なパワーを発揮。組み合わされるCVTのダイレクト感も向上しています。
乗り味に定評のあるスタブレックス・ライドは、マイナーチェンジでさらに質感が向上。大人のフラッグシップセダンにふさわしい上質な乗り味と、素直で自然なハンドリングを両立しています。
マイナーチェンジでアグレッシブさを増したスタイリングは、少々まとまりの良さを失ってしまいましたが、このあたりの不器用さはいつもの事なのでまあ仕方ありません。
「子供が独立したので大柄なミニバンは必要無い、大人の上質なセダンに乗り換えたい」なんて人にピッタリな車です。
中古車市場では
2017年「スバル レガシィ B4 リミテッド(6代目・BN9)」で200万円台後半。2014年式なら200万円台前半となります(2018年8月現在)。
新車価格
3,240,000円(消費税込み)