ドイツのフォルクスワーゲン(VW)とアウディは、資本関係の近いグループ企業同士です。フォルクスワーゲンは比較的価格の安い大衆車を中心に扱ってますが、これに対してアウディは、メルセデスベンツやBMWなんかと肩を並べるプレミアムカーが中心です。
そんな両社が製造販売する「VW ゴルフ」と「アウディ A3」は、欧州で「Cセグメント(中小型車)」と呼ばれるカテゴリーに分類されます。同じグループ内ということもあって、基本的なコンポーネントやプラットフォーム(車台)はほとんど同じ。よく言われるところの兄弟車ってやつです。
どちらも5ドアハッチバックとステーションワゴン、それから4ドアセダンもラインナップしてます。主力モデルが5ドアハッチバックという事情も同じなんで、このあたりのモデルを狙っている人からすると比較対象になりやすいです。
ということで今回は、そんな「VW ゴルフ」と「アウディ A3」について、「どの点が同じで、どこが違っているのか」、詳しく比較分析しながら解説していきます。購入の時に参考にしてもらえると嬉しいです。
「VWゴルフ」と「アウディA3」の基本は同じ、最大の違いは質感
「アウディA3」は現行型で3代目なんですが、ゴルフと同じプラットフォームを使うのは初代から変わらない「A3」の伝統みたいなもんです。
両車のホイールベースを比べてみるとどちらも「2635mm」でピタッと合ってますから、基本的な部分はほぼそのまま使われていることが分かります。
ちなみに、同じアウディでもより上級となる「A4」は、エンジン縦置きの前輪駆動をベースにしたアウディ独自のプラットフォームです。
アウディA3とA4の違いについては、下の記事を参考にしてください↓
「アウディA3とA4の違いを徹底比較!あなたにピッタリな車はどっち?」
「ゴルフ」は大衆車で、「A3」はプレミアムカー
そんな兄弟同然の成り立ちを持つ「VWゴルフ」と「アウディA3」ですが、最大の違いはその質感にあります。
ゴルフも初代から比べると随分立派になりましたが、それには「あくまでも大衆車としては」という注釈が付くんです。BMWやメルセデスベンツなどのプレミアムカーと比較れば、やはり見劣りしてしまいます。
これに対して「アウディA3」は、プレミアムカーにふさわしい上質感が与えられています。初代の頃は「見た目だけアウディで、中身はゴルフのままじゃないか」なんて揶揄されたこともありましたが、代を重ねるごとにドンドン質感が上がってます。
足まわりやエンジンのセッティングが違う
「アウディA3」はボディ剛性も高いですし、遮音性も優れています。サスペンション構造は、フロントにマクファーソンストラット、リアに4リンクと、構造としてはゴルフの上級モデルと同じですが、セッティングやパーツが変えてあるんでアウディの方が滑らかで上質です。これに対してゴルフのベーシックグレードは、フロントだけA3と同じで、リアにはよりシンプルなトレーリングアームを使ってます。
どちらもベーシックなグレードで比較すると、「アウディA3」のエンジンは1.4リッターのツインカムターボを搭載するのに対して、「VWゴルフ」の場合は1.2リッターのツインカムターボを積んでます。ゴルフも上級グレードを選べば、1.4リッターのツインカムターボになりますが、同じ排気量で比較してもアウディの方が上質です。まあ、これには遮音性とかも影響しているんで、どこまでがエンジンの影響なのかは分かりにくいんですが、質感が違うのは確かです。
さらに細かい違いを深掘りしていくと・・・
基本的な違いを抑えたところで、さらにここからは、両車の細かい違いについて深掘りしていきます。
2つの車輌を比較するにあたっては、分かりやすいようにどちらも一番ベーシックなグレードを使ってます。具体的には「VWゴルフ」が「TSIトレンドライン」で、「アウディA3」の場合は「スポーツバック1.4TSI」です。
「もっと詳しく違いを知りたい」とか、「購入するにあたって細かい内容が知りたい」なんて人は、ここからさらに読みすすめていってください。また、それぞれのモデルの【試乗評価】については、この下のリンクからどうぞ↓
ボディサイズとスタイリング
A3とゴルフは、同じプラットフォームを使いながらホイールベースまでピッタリ同じですが、ボディサイズは微妙に異なります。
A3のボディサイズが、全長4325mmx全幅1785mmx全高1450mmなのに対して、ゴルフは、全長4265mmx全幅1800mmx全高1480mm。
ということで簡単に言えば、A3の方が屋根が低く、前後に細長いプロポーションになってます。これに対してゴルフは、前後に短く幅と高さがある、ちょっとズングリしたプロポーションです。
A3の方がエレガントでスポーティ、ゴルフの方にガッチリとした重厚感を感じさせるのは、こういったプロポーションの影響が大きいと思います。
わざわざプロポーションを変えてある一番の理由は、それぞれの車に与えられた役割というか、コンセプトの違いです。A3はプレミアムカーとしての上質感を演出しながら、5ドアハッチバックの実用性とスポーティな雰囲気を両立させていますが、ゴルフはあくまでも実用車として、快適性や使い勝手の良さを最優先に考えて設計されています。
室内と荷室
ボディサイズの違いは、そのまま室内の大きさにも現れていて、中はゴルフの方が広いです。ただし、ホイールベースは同じなので、後席の足元スペースに大差はありません。
荷室形状は「A3」が前後に長く天井が低いタイプ。ゴルフは天井が高い分、前後に短いんで、どちらも荷室容量自体は380リッターとピッタリ同じです。「A3」の荷室は昔のインプレッサスポーツワゴンがやっていた、「5ドアハッチバック以上、ステーションワゴン未満」といった路線になってます。
室内の質感は、こういっちゃあなんですが、A3もゴルフも遜色ありません。どちらにもクラスを超えた上質感があります。ただし、デザイン自体は全くの別モノで、「A3」がスポーティでモダンな印象なのに対して、「ゴルフ」は質実剛健で保守的な感じです。
ドライビングポジションも微妙に異なっており、背の低い「A3」はその分着座位置も低めでスポーティ。これに対して「ゴルフ」は、若干アップライト(目線が高い)なポジションで、運転がしやすいと感じました。
動力性能
ベーシックグレード同士で比較する場合、「A3」が1.4リッターのツインカムターボで、最高出力、122ps/5000-6000rpm、最大トルク、20.4kg・m/1400-4000rpmを発揮。
これに対して「ゴルフ」は、1.2リッターのツインカムターボで、最高出力、105ps/4500-5500rpm、最大トルク、17.8kg・m/1400-4000rpmとなってます。
どちらも低速からフラットなトルクが出てるんで実用上の問題はありませんが、排気量が大きい分だけ「A3」の方がパワフルです。
ただし、「A3」と同じ排気量となる「ゴルフ」の上級グレード「TSIハイライン」の場合は、最高出力、140ps/4500-6000rpm、最大トルク、25.5kg・m/1500-3500rpm。となって、逆にゴルフの方がパワフルになっちゃいます。まあ、といっても「TSIハイライン」の場合は「A3」のベーシックグレードより価格が高いんで、性能が良いのは当然ちゃあ当然ですけど。
※このように色々なグレードに渡って細かく見ていくと、複雑で分かりにくいし、正確な比較もできないので、基本的に【徹底比較】の記事ではベーシックなグレードに絞って比較してます。
燃費
車重を比較すると「A3」が1320kgなのに対して、「ゴルフ」は1240kgと60kgほど軽いです。
同じエンジンを使う場合は、車重が軽いほうが燃費も良くなります。ただし、「A3」に使われている「1.4リッターツインカムターボ」の方がゴルフの「1.2リッターツインカムターボ」より効率が良いんで、実際の燃費は「A3」が19.5km/l(JC08モード)に対して「ゴルフ」は19.1km/lと、車重が重いにも関わらず若干「A3」の方が好燃費です。
価格
「A3」の価格が「2,960,000円」なのに対して、「ゴルフ」は「2,539,000円」と、プレミアムカーである「A3」の方が40万円以上も高くなってます。
「A3」のエレガントなスタイリングや上質感に価値を見いだせる人なら、コストパフォーマンスは高いです。
徹底比較のまとめ
「A3」がマイナーチェンジするまでは、カチッとした印象の「ゴルフ」と、柔らかで上質な雰囲気の「A3」というキャラクター分けがしっかりしていましたが、マイナーチェンジで「A3」もキリッとした感じになったんで、デザインだけで選ぶのは中々悩ましいもんがあります。
そんな中でもプレミアムカーである「アウディ・A3」には、ゴルフには無い上質な雰囲気とフィールがあります。立派になったといはいえ、ゴルフは良い意味で大衆車ですから、そのあたりの違いはハッキリしています。
当然ながら「アウディ・A3」の方が価格も高く、40万円以上も余計に払わないと買えません。このあたりの価格差に納得できるかどうかを考えれば、おのずとどちらの車が自分にふさわしいのかすぐに分かると思います。
僕自身が今、Cセグメントの5ドアハッチバックを買うとすれば、価格も手頃で車としての完成度も抜群の「ゴルフ」を選ぶでしょうねえ。まあ、でも「アウディ・A3」の手頃な上質感も捨てがたいんで、悩ましいところです。