試乗車は「新型 VWゴルフ TSI Highline」です。
最近の世間のイメージとは裏腹に質実剛健で真面目な車です。
新しいモデルが出ると、世界中のメーカーが買い付け、自社内の研究所でバラバラにして調査するという話は有名です。
いわば、自動車の教科書といっても過言ではありません。
前回のモデルでコストを掛けすぎたと考えたVWは、今回のモデルチェンジでコスト削減を実施しているようです。
外観
「質実剛健」を絵に描いたような、合理的なパッケージングです。
固まり感のあるクリーンなハッチバックスタイルですが、現行ポロと同じくらいだった初代ゴルフからは相当大きくなりました。
前回のモデルよりもライトが薄くなり、精悍で男性的な印象です。
派手なところは全くありませんが、よく見るとボディの面に抑揚がありじっと見ていても飽きません。じっくり造り込まれたデザインなのだと思います。
ヨーロッパでは「公務員が乗るような車だ」と揶揄されることもありますが、あちらの公務員はちょっとおしゃれなんでしょうか。
内装
こちらも質実剛健で合理的なレイアウトの内装です。
ぐっと質感も高くなり、上級ブランドのアウディに迫るいきおいです。
実務的なメーターで華美な演出はありませんが、フォントが見やすくシンプルなので機械的な美しさを感じます。
見晴らしがよく、ボディの見切りもいいので長時間運転しても疲れないでしょう。代々受け継いだゴルフの黄金比のようなものがあるのでしょうか。
シートは理想的な硬さとコシ、たっぷりしたストロークを持っており、腰痛持ちの僕も安心です。リアシートも大人が座れるだけのスペースがあります。
しかし、華やかだとかポップといった楽しげなものではありません。あくまで快適に運転する為の場所といった感じです。
エンジンとミッション
ゴルフはもっと快活に走るイメージでしたが、自分のイメージより若干もっさりとした印象です。良く言えば穏やかです。
ボディがある程度大型化しており、ダウンサイジングされた小排気量エンジンで引っ張っているので仕方ないです。
しかし、必要十分のパワーで街乗りに不足はありません。おそらく高速走行主体のセッティングになっているでしょうから。
ある程度の速度域でも快適なクルージングが可能でしょう。車内にはある程度の音が侵入して来ますが、不快ではありません。むしろ運転している実感があります。音量としても静かな部類です。
足回りとハンドリング
厚みのあるどっしりとした乗り心地です。ハンドリングはクイックというわけではありませんが、素直でリニアな特性で気持ちいいです。
よくスポーツタイプの車に乗っている人が、ゴルフに試乗して「ハンドリングの切れが悪いと」言うことがありますが、ステアリングのギア比はその車の個性に合わされるべきもので、けっしてクイックだから良いというものではありません、素直でリニアな特性を備えていれば小一時間ほどですぐに慣れるものです。
直進性も素晴らしく、ステアリングに手を添えているだけでまっすぐ進みます。余計な修正舵は必要ありません。フラットライドで路面をなめるような走りです。
あまりに気持ちいいので、好きな音楽を聞きながらずっとドライブしていたい衝動にかられました。
段差を超える際にはダンピングが良く効いているからか、タイヤが良いのか、振動がビシッと一発でおさまり不快感がありません。むしろ何度も段差に乗りたくなるような、そんな気さえする素晴らしい足回りです。
評価のまとめ
ゴルフは昔から一度は所有してみたい車のひとつです。今回の事があってもそれは変わりません。
ただ僕の好みから言うと、初代ゴルフと同じくらいのサイズのポロのほうが好きです。ポロは快活で小気味良く素直なハンドリングでまさに初代ゴルフです。
僕の中のゴルフのイメージから少し外れてきた現行のゴルフですが、ボディは大柄になりクラスとしても上級に以降しています。それゆえ質感が増して贅沢な感じさえします。製品としての完成度も高く、コストパフォーマンスは素晴らしいです。この値段でこの性能と質感の、しかもドイツ車が買えるというのは驚異的です。
主要諸元
全長(前後の長さ) | 4265mm
全幅(左右の幅) | 1800mm
全高(高さ) | 1460mm
車両重量(重さ) | 1320kg
動力システム(エンジン) | ガソリン
排気量(エンジンの大きさ) | 1394cc
エネルギー源(燃料) | ハイオク
駆動方式 | FF
トランスミッション | 7DCT
最高出力 | 103kW[140PS]/4500rpm-6000rpm
最大トルク | 250N・m[25.5kg・m]/1500rpm-3500rpm
燃費 | 19.9km/l(JC08モード)
価格 | 3,240,000円 (消費税8%込)