今回の試乗レポートは「2代目 ホンダ インサイト L」。
2009年から2014年に渡って製造販売されていた、小型の5ドア・ハッチバックです。
プリウスの好調な販売成績を目にしたホンダの開発陣が、起死回生を狙って再び開発したハイブリッド専用車です。ベースとなるプラットフォーム(基本骨格)には、フィットと共通のものが使われています。
実験車的要素の強かった「初代インサイト」のクーペスタイルから一転して、実用的な5ドア・ハッチバックスタイルが与えられています。ライバルのプリウスに対向するべく189万円という戦略的な価格設定が行われ、デビュー当初は結構大きな話題となっていました。
ただし、エンジンを主体としたハイブリッドシステムのため、プリウスのような特別感は希薄です。その結果、ハイブリッドカーとしての魅力が理解されにくく、次第に販売台数を落としていく事になります。その後、グレイスと統合される形で「インサイト」は廃止され、現在は後継車種も存在しません。
外観
全長4390mmX全幅1695mmX全高1425mmのボディサイズを持ち、ホイールベースは2550mmとなります。
発売された当初は、「プリウスにあまりにも似すぎだ」と批判する人も多かったのですが、あらためて見るとワンモーションフォルムに共通性があるだけで、ディティールやフロントフェイスの印象は全く異なります。
フロント
左右のヘッドライトを太いフレームで一体化したスポーティなフロントフェイス。サイボーグのような近未来的なカッコよさがあります。上質感ではプリウスに及びませんが、スポーティな雰囲気や若々しさではインサイトの方が上回ります。
サイド
ロングホイールベースにロールーフキャビンが組み合わされた、クーペライクなサイドビューです。これに対してライバルのプリウスはちょっとズングリした印象です。
リア
強く傾斜したリアウィンドウと、ハイデッキ化されたヒップラインがスポーティな印象を強めています。ハイブリッドカーでありながら、ホンダらしいスポーティ感を忘れないところに、プリウスへの強い対抗意識を感じます。
リアウィンドウの下にはもう一枚四角いガラスがはめ込まれ、後方視界を拡大する工夫が見られます。実はこのガラス、CR-Xをモチーフとして初代インサイトが採用し、その後この二代目へと受け継がれたものです。
内装
プリウスと比べれば質感の低い内装です。といっても、フィットベースなのでそのへんは仕方ありません。おもちゃっぽいゴチャゴチャとしたデザインですが、モビルスーツのコックピットのような雰囲気があり中年男性をワクワクさせます。
フロントノーズが緩やかに傾斜しているため、先端が見えづらいです。
シート
比較的大ぶりなシートが装備されます。燃費のために軽量化されていることもあり、少し体圧が集中しがちですが、中距離(30km)程度であれば問題ありません。
リアシートは足元、頭上空間ともに窮屈感があります。といっても、成人男性二人が座るスペースはキッチリ確保されています。
荷室
大きなリアゲートを備えるため、荷物の出し入れは簡単です。荷室容量も大きく、家族4人であれば2泊3日旅行も十分可能です。
静粛性
ロードノイズ、風切音ともに大きめですが、フィットクラスと考えるなら我慢出来るレベルです。
エンジンとミッション
1339ccの直列4気筒DOHCエンジン+電気モーターに、CVT(無段変速機)が組み合わされます。
エンジンは、88ps/5800rpmの最高出力と、12.3kgf・m/4500rpmの最大トルクを発揮します。
また電気モーターは、14psの最高出力と、8kgf・mの最大トルクを発揮します。
車両重量1190kg。10モード/10・15モード燃費は、30.0km/l。ji08モード燃費は、26.0km/l。
エンジン
1.4Lのツインカムエンジン+電気モーターで前輪を駆動。エンジンが主体のハイブリッドシステムのため、普通のコンパクトカーと同じ感覚で乗ることができます。低速からモーターのアシストがしっかりと働き、市街地など日常領域でパワー不足を感じることはありません。ただし、急な坂道では若干もっさりとする場面もあります。
トランスミッション
ベルトとプーリで連続的に変速するCVTを装備。小さな電気モーターと協調して、必要十分のパワーを生み出します。
足回りとハンドリング
前輪にマクファーソン・ストラット式サスペンション、後輪には車軸式サスペンションが装備されます。
足回り
乗り心地はコンパクトカーとしてごく普通のレベル。良くも悪くもフィットといった感じです。
目地段差では路面の衝撃を正直に拾います。フィットと差別化するためにも、もう少し価格なりの上質な乗り味が欲しいところです。
ハンドリング
フィットの車台が使われているため、ホンダらしいキビキビとした軽快感も健在です。ドライバーの操舵にリニアに反応して、スッキリと切れ味の良いハンドリングをみせます。
最小回転半径が小さく、狭い場所でも簡単に切り返すことができます。
評価のまとめ
今になってみると、「も少し上質な乗り味とインサイトならではの強い個性があれば、モデルが消滅する事も無かったのに」と思います。せめて初代インサイトにあった「ホイールカバー」だけでも継承されていれば、プリウスのイメージに埋没する事も無かったでしょう。
安っぽいつくりによる安い価格が売りというだけでは、プリウスが同じように戦略的な価格を打ち出せば太刀打ちする術がありません。インサイトならではの個性と質感で勝負するべきでした。もしくはアクアのように全く違うクラスの車を出すというのも一案です。
ただし、人気が無いことが幸いして、最終モデル(2013年式)の低走行車がそろそろ100万円を切る価格で出始めています(2017年10月現在)。ハイブリッドカーならではの特別感は希薄ですが、ホンダらしいカッコイイスタイリングと、キビキビとした走りは大きな魅力です。
ファミリカーとして使えるハイブリッドカーを安い価格で探している人に、オススメしたい一台です。
価格
新車当時の価格 | 2,070,000円(消費税込み)