電子的に制御されたオートマッチックトランスミッション(AT)は、エンジンや車両の情報をコンピューターがモニターして最適なギアが選択されます。なもんで、ギアの制御に関しては大したドライビングテクニックはいらないんです。
これに対してマニュアルトランスミッション(MT)の場合は、車をそれなりにスムーズに走らせようとするなら、どうしてもある程度の知識と経験が要求されます(特に坂道発進とか、渋滞の時のストップ&ゴーとか)。
参考:スムーズなシフトチェンジのやり方(マニュアル・トランスミッション編)【運転のコツ】
そんなこともあって、初心者や免許をこれから取ろうというビギナー、その他には「しばらく車を運転していない」とか、「普段はATしか乗らない」なんて人が運転すると、どうしてもギクシャクとした不自然な走りとなりがちなんです。
そこで今回の【運転のコツ】は、そんなマニュアルトランスミッションに苦手意識を持つ人に送る「MT(マニュアル・トランスミッション)車を上手に運転するコツ」を紹介します。
スムーズなギアチェンジこそ、マニュアル・トランスミッションの喜び
マニュアルトランスミッション車の場合は、エンジン回転の高まりに応じて最適なギアを選択してやることで、車はドライバーの技量に応じたスムーズかつ力強い走りで答えてくれます。
このあたりの車と人間の濃密なやり取りこそ、車好きにとっては大きな喜びなんですよねえ。さしずめ、「マニュアルトランスミッションの醍醐味」といったところでしょうか。
それから、最初に「MT車の運転には、ある程度の知識と経験がいる」と書きましたけど、最近のMT車は昔の車ほどの難しさはないです。これは電子制御によるところが大きくて、エンジンはコンピューターで監視制御されてるし、クラッチにもギアをスムーズに変更するための様々な工夫が凝らされています(もちろんATのように気軽じゃないし、スムーズに走らせた時の喜びもあります)。
そんなこともあって、車をスムーズに走らせるために要求される知識や経験も昔ほどじゃありません。
「昔、MTで免許を取ったけど、今じゃATしか運転してないなあ」なんてMTに苦手意識のある人も、一度騙されたと思って最新のMT車に乗ってみてください。昔よりは運転が簡単になってるんで、驚くかもしれませんよ。
古い車のマニュアル・トランスミッションは、さらに操作が難しい
これに対して古いMT車の場合は、そういった電子制御の類は一切使われてません。シフトチェンジも油圧式じゃなくて、より制御の難しいワイヤー式なんてこともあります。そんなこんなで、こういった古い車(特にポルシェなんかの外国製スポーツカー)をスムーズかつパワフルに走らせようとするなら、現代的なスポーツカーに要求される以上の知識や経験がいるんです。
といってもこのような「運転の難しさ」は、逆に言えば「俺にはこの気難しいスポーツカーを自在に操る技術があるんだぜ!」なんて、大きな満足感というか喜びを与えてくれるのも事実。ちょっと練習して最新型のMT車を自在に乗りこなせるようになったら、次は古いスポーツカーに挑戦するのも楽しいんじゃないでしょうか。
マニュアル・トランスミッションを使って、スムーズに走るコツ
それでは、ちょっと前置きが長くなっちゃいましたけど、ここから【MT車をスムーズに走らせるためのコツ】を紹介していきます。
MT車をスムーズに走らせるための一番大切なコツは、まず、「2速や3速のギアを中心にして、走りを組み立てる」です。
例えば、急な上り坂や下り坂、コーナーの連続するワインディング、速度の出せない狭い路地なんかでは、「どのギアを選択すればスムーズに走れるのか」なかなか判断がつかないでしょう。
こういった時は深く考えず、とりあえず2速や3速など、中間的なギアを選んで走りましょう。その中で、「あれ?これじゃちょっとギアが低くて走りにくいぞ」とか、「このギアじゃ、十分なトルクが得られずギクシャクするなあ」なんてことに気づくはずです。
そんな気づきをポイントに、「次は早めにシフトアップしてみよう」とか、「ブレーキングとシフトのタイミングが違うなあ」なんて試行錯誤を繰り返していきます。いわゆる「トライアンドエラー」ってやつですね。
また、2速や3速のギアは力も強くエンジンブレーキもよく効きます。「アクセル操作だけで速度を調整しやす」なんてメリットもあるんで、MT車に不慣れな人でも比較的操作しやすいんです。
シフトタイミングを試行錯誤する事で、ドンドンあなたの技量は磨かれていく
ギクシャクとした運転の原因として、一番気をつけたいのは「早すぎるシフトアップ」です。「俺はギクシャクとした運転になりやすいんだよなあ」なんて自覚があるんなら、一度、ゆったりとしたタイミングでシフトアップしてみてください。意外とスムーズに運転できるかもしれませんよ。タイミングとしては、「ちょっとゆったりしすぎかなあ」くらいで丁度いいと思います。
そうこうしてるうちに、「今のはちょっとシフトが早すぎたなあ」とか、「おっ、スムーズに繋がったぞ」なんて小さな気付きがあります。それを頼りに自分のシフトタイミングを微調整して、どんどんブラッシュアップしていきましょう。数年後には、超絶テクニックを備えたベテランドライバーが出来上がっているはずです。
クラッチをつなぐ最適なタイミングを掴むには
最後に、「クラッチをつなぐ最適なタイミング」について、効果的に身につけるため練習方法をひとつ紹介しておきましょう。
クラッチは、エンジンからの動力を一時的に切断することによって、トランスミッションの変速を簡単に行うための装置です。
シフトチェンジの時は、「クラッチペダルを踏み込んで動力を切断」→「シフトチェンジ(変速)」→「クラッチペダルを戻して動力を接続する」という手順を踏みます。
この手順の中で特に気をつけたいのが、3番目の「クラッチペダルを戻して動力を接続する」です。ここでクラッチを乱暴に繋げば「ガツンっ」という衝撃が車内に伝わるし、逆にクラッチを接続する前ににアクセルをガバっと踏み込んじゃうと、「エンジン音だけがけたたましく鳴り響いて車は全然進まない」なんて、すごくかっこ悪い漫画みたいな運転になっちゃいます。
クラッチの繋がるタイミングは車によって千差万別
こんな事態を避けるには、「どこまでクラッチペダルを戻したらクラッチが接続されるのか」を予め知っておくことです。といっても、クラッチが繋がるタイミングは、車によっても違うしクラッチの摩耗具合によっても変わってきます。「○○ミリ戻したら繋がるよ」なんて確実なことは言えないんで、自分の車で試してみるしかありません。
やり方としては、ブレーキとクラッチを踏み込んでエンジンを始動したら、ブレーキを離しつつ、同時にクラッチペダルもゆっくりと徐々に戻していくだけです。このクラッチを戻す過程で、クラッチが接続されると車はじわっと前に進み始めます。このタイミングは2速でも3速でも同じですから、しっかりと体に叩き込んでスムーズなシフト操作に活かしてください。
このアイドリングからの「ノーアクセル&クラッチ接続」は、渋滞や市街地でじわっと前に進むときにも使える便利な小技です。普段から頻繁に活用して、いつでもどこでも使えるようにしておきましょう。