ガソリンや軽油を燃やして走るエンジンを搭載している自動車には、トランスミッションという変速機が使われています。
オートマチックトランスミッションや、マニュアルトランスミッションといわれるもので、3速から6速ほどの変速ギアが設けられている事がほとんどです。
変速ギアとは?
トランスミッションにはこの変速ギアと呼ばれる部品が使われていますが、この変速ギアを使うことでエンジンの回転を適切に変換し、自動車が力強くスムーズに走れるように調整しています。
単純に考えれば、エンジンの回転をそのままタイヤに伝えた方が、構造もシンプルになるしエネルギーの損失も無くなるので良いように思えます。
エンジンはトルクバンドが狭い
しかし、実際にはエンジンは低回転過ぎると自動車を動かすようなパワーがありませんし、高速走行時にもエンジン回転が速度と合わなければ、エネルギーの多くをロスしてしまう事になります。つまり簡単にいうと使える回転域が狭いのです。これを専門的には「トルクバンドが狭い」といいます。
自転車で例えると
これは普段みなさんが乗っている自転車で考えると分かりやすいと思います。自転車にも変速機が装備されていますが、走り始めはこの変速ギアを1速に入れてゆっくりと漕ぎ出し、速度が乗ってくるにしたがって、2速、3速と変速してやる事で、速度にあった回転で楽に自転車が漕げるように作られています。これが、始めから6速あたりにギアが固定されていたらどうでしょう?とても重くて漕げるものではありませんね。
自動車の場合も同じです。自動車に搭載されているエンジンは、力の出る回転域が狭い「トルクバンドの狭い」装置です。そのため、トランスミッション(変速機)を使ってギアを適切に選んでやることで、狭い回転域でも力強くスムーズな加速ができるようにしているのです。
かつてのスポーツカーはトルクバンドが極端に狭い
かつてのスポーツカーの変速機は、ギア比が近いクロスされたトランスミッションが使われていました。これは、当時のスポーツカー用エンジンのトルクバンドが極端に狭く、普通のトランスミッションではスムーズに走ることが出来なかったからです。
現代のエンジンはトルクバンドが広い
ところが現代のエンジンは技術が進んだ事もあって、低回転から高回転まで幅広いトルクバンドを持つようになっています。このようなトルクバンドの広いエンジンには、クロスされた多段式トランスミッションは必要ありません。
最近流行しているダウンサイジングターボは、このトルクバンドがさらにフラットで広いのが特徴のエンジンです。そのためトランスミッションには3速程度の変速ギアがあれば十分ですが、普通は5速以上の変速ギアが与えられています。このような現代の多段式ギアは、燃費向上やウルトラスムーズな加速、商品価値の向上などが狙いでしょう。