ドイツ、フランクフルトの自動車部品製造大手「コンチネンタル」社の、最高経営責任者(CEO)エルマー・デグナート氏は、「今後、自動車業界全体が電気自動車へシフトすることにより、現在コンチネンタル社が行っている多くの仕事が失われることになるだろう」と懸念を表明しました。
※動画はコンチネンタル社が製造販売するタイヤ「スポーツコンタクト6」です。
目次
- 電気自動車とガソリン車では車体構造が大きく異る
- 日本の部品メーカーも同じ問題を抱えている
- 代わりの仕事を作り出す
- コンチネンタル社を支えるタイヤ事業
電気自動車とガソリン車では車体構造が大きく異る
ガソリン自動車と電気自動車では、その構造が大きく異なるため、特にバッテリー関連、電気制御装置、パワーコントローラ、電気モーターなどの主要部品については電気自動車専用のパーツを使っています。
※電気自動車の構造については「【技術解説】電気自動車の構造と仕組み」を参照してください。
これらの部品は、ガソリン車でいえば、ガソリンタンク、燃料系、インジェクションなどの燃焼系、エンジン本体、給排気系システムおよび補機類などにあたり、多くの部分を代替することになります。これだけ聞けばどれだけ多くの部品が使われなくなるか分かってもらえると思います。
そのため、コンチネンタル社のように、ガソリンエンジン車のために多くの部品を供給している部品メーカーは、今後の身の振り方を間違えると会社の屋台骨を揺るがしかねない大惨事となりかねません。
日本の部品メーカーも同じ問題を抱えている
これは、コンチネンタル社だけではなく、多くの日本企業も直面している大きな問題です。
有名な投資家であるアメリカのバフェット氏は、「今後、自動車業界は電気自動車へ主要な商品が代替されていく事になるが、内装関連メーカーの場合は電気自動車以降にも需要が維持される」として、日本の内装メーカーに投資していたことがあります。これは、5年以上も前の話しですが、さすがに投資の神様といわれるだけあり、その先見性には驚くものがありますね。
代わりの仕事を作り出す
コンチネンタル社の最高経営責任者(CEO)エルマー・デグナート氏は、「商品が電気自動車に代替されていくのは仕方がないが、それによって失われる仕事に対して新たに生み出される仕事が少なくてはいけない。その新しい仕事を生み出すための時間は十分にあるが、この時間を有効に使って次の時代への成長戦略を打ち立て、早急に計画を作成する必要がある」と述べています。
実はコンチネンタル社の抱える218,000の仕事のうち、30,000の仕事が燃焼エンジンに関連するものだと言われています。
コンチネンタル社では今後数年間をかけて、電気自動車部品の開発研究に大きな資金をつぎ込む計画です。この電気自動車への代替を睨んだ大規模な投資計画により、コンチネンタル社は、業界の変動における悪影響を最小限に抑えようしています。
コンチネンタル社を支えるタイヤ事業
業界が電気自動車へとシフトしていく中、コンチネンタル社の中でも時代を超えて安泰な部門があります。それは、創業以来この会社の主要な事業となっている「タイヤ製造部門」です。というのも電気自動車の時代となってもタイヤは必ず使われるパーツだからです。もともとコンチネンタル社はタイヤの製造を行う会社でしたので、そのタイヤの品質には高い定評があります。ドイツのアウトバーンなど過酷な環境でも十分な耐久性を保つように、トレッド面にはがっしりとした強度が与えられています。業界での立ち位置も、ブリジストン、ミシュラン、グッドイヤーに続く第4位という立派なものです。
時代の変化に気付きながらもそこはとなく余裕が感じられるのは、会社の経営基盤となるこのタイヤ事業があるからかもしれませんね。