トヨタ アベンシス ワゴン Xi(3代目)【試乗評価】ひと味違う欧州車テイストのトヨタ車 [DBA-ZRT272W-AWXEP]

今回の【試乗評価】は「トヨタ アベンシス ワゴン Xi(3代目)」。
2009年にフルモデルチェンジした(日本市場への導入は2011年)、Mクラスのステーションワゴン(5ドア)です。欧州向けとしては4ドアセダンもありましたが、日本市場への導入はありません。

1998年に登場した「初代アベンシス」は、メカニズム的には「欧州版コロナ」といった成り立ちで、4ドアセダンの他に5ドアハッチバック、それからステーションワゴンもありました。当時、日本で販売されていた「2代目カルディナ」とステーションワゴンは兄弟車の間柄です。

新設計されたプラットフォーム(車台)に、既存のパワーユニットを搭載。ただし、ライバルの「フォルクスワーゲン・パサート」なんかと比べると作りが安っぽくて、良くも悪くも日本車って感じです。ということで欧州での人気もいまひとつ、思うような販売成績は上げれてません。

2003年に発売された「2代目アベンシス」は、そんな初代の反省を踏まえつつ、完全な欧州車基準で設計されてます。硬いボディに、どっしりとしたハンドリング。重厚感を伴いながらもしなやかな乗り味と、どれをとっても当時の日本車を上回ってます。パッケージングやスタイルもどことなく欧州車っぽいです。

この世代からは日本でも販売され、トヨタ初の欧州生産モデルとして地味ながらも良い感じに売れてました。欧州車のテイストを安くて壊れにくいトヨタ車で味わえるんですから、そりゃ人気が出るのも当然です。

じっくりと読む時間の無い人は、文末の「【試乗評価】のまとめ」をどうぞ↓
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「トヨタ アベンシス ワゴン Xi(3代目)」の概要

3代目アベンシスワゴンは、そんな2代目のコンセプトをそのまま引き継ぐキープコンセプトモデル。欧州では3代目ですが、日本市場向けとしては2代目になります。4ドアセダンとステーションワゴンを揃えますが、日本へ導入されたのはステーションワゴンだけです。

欧州市場をメインターゲットに開発された欧州専用モデルで、英国トヨタの「バーナストン工場」で製造されてました。

紛れもない生粋のトヨタ車だけど、完全な欧州基準で設計されてるんで、走りにはどっしりとした骨太感があります。日本市場では販売台数の少ない地味めのモデルでしたが、少量ながらも確実な売上を期待できる通好みのモデルです。

日本市場向けアベンシス、3年ぶりに復活!

発売当初は、欧州専用モデルとして販売されてましたが、「日本国内向けの中型ステーションワゴンが一台も無い」という事情から、3年ぶりに日本市場への導入が決まります。これは完全な想像ですが、国内のディーラーから「お客さんからのニーズはあるのに売るモデルが無いよ」という感じでせっつかれたんでしょうねえ。

初期モデルは、マイナーチェンジ前という微妙なタイミングだったんで、期間と台数を制限した限定モデルとして販売。その後、マイナーチェンジを待って、正式なカタログモデルとして逆輸入されてます。

グレードは、ベーシックな「Xi」と、装備を樹実させた豪華仕様「Li」の二種。

2018年4月、日本向けの生産を終了。現在のところ直接の後継モデルはありませんが、「プリウスα」が実質的な受け皿となってます。

その後、同じ年に欧州向けも生産を終了。現在、「アベンシス」の名を持つモデルはありません。

プラットフォームなど

プラットフォーム(車台)は、先代の「MCプラットフォーム」を進化させた「新MCプラットフォーム」。

これにボクシーにも使われている「2.0リッター・ツインカムエンジン」と、欧州向けにセッティングされた「7速CVT(マニュアルモード付き)」を組み合わせてます。

ライバルは

ライバルは、「フォルクスワーゲン・パサート」や「オペル・ベクトラ」といった、欧州の中型ステーションワゴン。欧州ではDセグメントというカテゴリーです。

日本車なら、「スバル・レガシィツーリングワゴン」や「ホンダ・アコードツアラー」、「マツダ・アテンザスポーツワゴン」なんかがライバルになるでしょうねえ。

マイナーチェンジ情報

2012年マイナーチェンジ。内外装の小変更とともに、装備を充実させた上級グレード「Li」を追加。

2015年ビッグマイナーチェンジ。内外装の大幅な変更とともに、先進安全技術「Toyota Safety Sense C」を全車に標準装備してます。

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外観

ボディサイズ、全長4820mmX全幅1810mmX全高1500mm。ホイールベース、2700mm。

マイナーチェンジによって、フロントまわりの印象が大きく変貌。フルモデルチェンジに近いインパクトがあります。

フロント

ワイド&ローのフロントノーズに、薄く有機的なLEDヘッドライト。フロントバンパーやグリルもよりアグレッシブなデザインへと変更されています。ヴィッツやC-HRとの強いつながりを感じさせるダイナミックなデザインです。

サイド

がっしりとした肉厚のボディに、なだらかなルーフ。薄く前後に長いキャビン(居住スペース)。しっとりとした上質感を感じさせる伸びやかなサイドビューです。マイナーチェンジによる大きな変更はありません。

リア

ふっくらとしたリアバンパーに、複雑な曲線で構成されたリアコンビランプ。有機的なラインが折り重なった美しい後ろ姿。リアコンビランプの間にはメッキモールド(シルバー)が効果的に配置され、中型ワゴンにふさわしい上質感を備えています。

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内装

内装デザインにも大幅な手が加えられ、トヨタらしい端正なデザインから新しさを感じさせるクリーンなデザインに変更されました。見た目のかっこよさなら後期型、使い勝手や居心地の良さなら前・中期型といった感じです。

メーターナセルには、砲弾型リングで飾られた大型二眼メーター。センターコンソール最上段には、エアコンの吹出口が装備され、遠く離れた後席へも快適な空気を送ります。中段にはナビゲーションなどを表示する大型ディスプレイ。エアコンユニットは、操作のしやすいダイヤル式。

Aピラー(一番前の柱)の傾斜が強く斜め前方に死角を作りやすいです。こういった形状のAピラーはカッコが良くなるので最近の車に多用されていますが、反面、死角が大きくなるというデメリットがあります。三角窓によってドラミラーがわずかに後退。Aピラー根本の死角は小さく抑えられています。ドアミラーの後ろに黒い車が隠れていたなんて事もあるので、こういった小さな工夫は意外と重要です。

ドア開口部まわりの剛性が高く、ドイツ高級車のような開閉音を響かせます。

ボディの端が見えにくく車幅も広いため、慣れるまでは取り回しに気を使います。ただし、ドライビングポジションが適正で運転自体はやりやすいと感じました。スタイリッシュなデザインの割に室内空間は広々、大人4人が座っても十分な余裕があります。

シート

フロントシートは、適度なコシとストロークを持ったクッションに、しなやかな表皮を貼り付けた快適なシート。肩周りにも十分なサポート能力があり、体全体を包み込むように支えます。

リアシートにも質感の高い快適なシートを装備。座面の長さ、背もたれの高さともに適正で、長時間ドライブも苦になりません。ルーフがなだらかに下降するものの、ヒップポイントがフロントより低いため頭上空間は十分。足元空間にもゆったりとしたスペースが確保され、大人二人で座っても狭苦しさはありません。

荷室

全長が100mm拡大され、それに伴って先代以上に広々となった荷室(543L)。家族4人であれば荷物のかさばるキャンプも余裕です。

荷室を拡大するための分割可倒式シートバックや、長尺物を積むためのトランクスルー機能付きセンターアームレスト。床下収納にトノカバー。荷物を固定するためのラゲッジフックなど、便利機能も数多く装備されています。

静粛性

Aピラー周りの風切り音とロードノイズがやや気になるものの、全体としてはクラス標準レベルの静粛性能を確保。欧州市場では走りの剛性感や実用性といったものが重視されるため、このクラスの大衆ワゴンにそれほど高い静粛性能は求められません。

エンジンとミッション

1986cc・直列4気筒DOHCエンジンに、CVTが(無段変速機)組み合わされます。
エンジンは、最高出力152ps/6200rpm、最大トルク20kgf・m3800rpmを発生。

JC08モード燃費は、14.6km/l。

エンジン

2.0リッター・自然吸気エンジンにバルブタイミング&バルブマチック機構を組み合わせた、トルクフルなエンジン。2.0リッターながら、2.5リッターエンジンに匹敵する動力性能があります。低速からフラットなトルクを発生して、スムーズに発進。急な坂道から加速を必要とする合流ポイントまで、流れに乗って必要十分の加速をみせます。

トランスミッション

ベルトとプーリによって無断階に変速するCVTを装備。トルクフルなエンジンを活かして、エンジン回転を低めに抑えながらスムーズに加速します。燃費よりもダイレクト感を重視したセッティングのため、CVT特有のモワーとしたフィールも最小限です。

マイナーチェンジによってCVT制御にも変更が加えられ、変速感が向上。1470kgの重量級ボディを今まで以上にスムーズに加速させます。7速マニュアルモードが装備され、積極的な変速も可能

足回りとハンドリング

前輪にマクファーソンストラット式サスペンション、後輪にはダブルウィッシュボーン式サスペンションを装備。

ハンドリング

欧州車のような重厚感あふれる自然なハンドリング。キビキビとした軽快感はありませんが、リニアな特性が強く狙ったラインで正確なターンを描きます。反応が自然なので運転が楽しいです。

リアの接地性が高く、コーナーの連続するワインディングでも姿勢を乱しません。ハンドリングと安定性のバランスが絶妙です。

最小回転半径は5.4mと、標準的なレベル。

足回り

装着タイヤは、205/60R16。

適度に引き締まったしなやかな乗り味(先代のアベンシスよりは若干柔らか)。

目地段差や橋脚ジョイントでは、路面からの衝撃を瞬時に吸収。鋭い衝撃を車内に伝えません。硬く引き締まったボディとストロークのある上質なサスがいい仕事をしています。

高速域での安定性も高く、フラットな姿勢を維持しながら路面に吸い付くようにヒタヒタと走ります。横風やわだちで進路を乱されることもありません。

その他

先進安全技術は、レーザーレーダーと単眼カメラを組み合わせた「Toyota Safety Sense C」を標準装備。

このパッケージには「衝突被害軽減ブレーキ」や「車線逸脱警報」、「ハイビーム自動切り替え装置」などが含まれます。

【試乗評価】のまとめ

「新型 トヨタ アベンシス ワゴン Xi(3代目)」は、トヨタが欧州専用モデルとして開発したMクラスのステーションワゴン(5ドア)。

普通のトヨタ車では感じられない重厚感あふれる乗り味と、素直なハンドリングが最大の魅力です。エンジンはトルクフルで必要十分な動力性能を持ち、トランスミッションも欧州のセッティングをそのまま持ち込んでいるのでCVTにしてはダイレクト。運転する楽しさを十分に味わうことができます。

シートの質感も高く、長距離ドライブで疲れることはありません。ステーションワゴンですから荷室容量も広々、全長の拡大と広い全幅によって室内空間にもたっぷりとした余裕があります。

対象となるユーザー層

「中型ステーションワゴンを探していたが、トヨタ車のラインナップに無くて残念な思いをしていた」とか、「欧州車の骨太な乗り味は好きだが、価格やランニングコスト、信頼性を考えるとどうしても踏み切れない」とか、「しっかりとした走りと、使い勝手の良い広々とした室内を持った車がほしい」と考えていた人たちに最適な一台となります。

中古車市場では

2017年式「新型 トヨタ アベンシス ワゴン Xi(3代目)」で230万円前後。最初の車検を済ませたばかりの2014年式なら130万円前後。一番古い2011年式なら100万円前後(2018年5月現在)。

新車価格

2,749,091円(税込み)

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ABOUTこの記事をかいた人

クルマ好きの40代男性。現在病気のため療養中です。

ブログは暇つぶし&リハビリ。週2で短時間のアルバイトをしていますが、普通の人のように毎日フルタイムで働くことはできません。

ブログの内容はあくまで秋ろーの個人的見解です。実際に車や商品、サービスを購入する際は、自分で試乗や調査をして確かめることをオススメします。

記事更新の時間は、大体、午後11時から12時頃にかけてを予定しています。

修正ばっかりしてると新記事の投稿ができないんで、新記事3に対して修正1くらいの割合でやってます(2019年6月〜)