新型VW シャラン【試乗評価】広大な室内とセダンライクな乗り心地 [DBA‐7NCZD]

2代目 VW シャラン ハイラインのアイキャッチ

今回の試乗レポートは「新型 VW シャラン TSI Highline(2代目)」。2010年(日本市場は2011年)にフルモデルチェンジした、フルサイズのミニバン(5ドア)です。

一世代前のモデルである「初代 VW シャラン」は、フォード(米)と共同で開発した5ドアのミニバン。1995年に発売され、欧州市場を中心に結構な人気がありました。「これなら日本でもイケるんじゃないか」と1997年に日本にも導入されましたが、当時はなぜか日本人の好みに合わず2年後の1999年に撤退してます。

この時代は、すでに「トヨタ・アルファード」とか「日産・エルグランド」なんかの国産モデルがガンガン売れていたので、まあ、そのあたりが理由かもしれません。「日本人の好みに合う」という意味じゃあ、快適装備を満載して至れりつくせりの国産勢の方が有利ですもん。

今回のモデルは、その「VWシャラン」が始めて代替わりした2代目モデル。1999年から数えると、実に12年ぶりの日本市場復活というわけです。

先代モデルについては、「初代 VW シャラン 1998年式【旧型試乗】」のページをご覧ください。

じっくりと読む時間の無い人は、文末の「【試乗評価】のまとめ」をどうぞ↓
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「新型 VW シャラン TSI Highline(2代目)」の概要

「初代 VW シャラン」は、大柄なボディに似合わない素直なハンドリングと、2.8リッターV6エンジンによるパワフルな走りを兼ね備えた魅力的な車でした。さらに、2列目、3列目シートを取り外してフラットな荷室に出来るという便利機能もありました。なんですが、日本の狭い住宅だと取り外した後のシート置き場にこまりますし、非力な女性の場合は、重いシートを担いで「ウンコラショ、ウンコラショ」と結構な大仕事になるんです。このあたりの使い勝手の悪さも、日本で受け入れられなかった理由のひとつでしょうねえ。

そんなこともあって「2代目 VW シャラン」では、そのあたりの使い勝手を一新。2列目、3列目シートを折りたたんでそのまま車内に収納できるようになってます。さらに、初代が普通のヒンジドアだったのに対して、2代目は現代的な「後席両側電動スライドドア」を標準装備。3列・7人乗り独立シートも設定しました。ということで、日本製フルサイズミニバンに負けないくらいの、快適性と使い勝手の良さを両立させとるんです。

プラットフォームなど

基本となるプラットフォーム(車台)には、現在主流となっているモジュラー式の「MQBプラットフォーム」じゃなくて、7代目パサートにも使われていた古いアーキテクチャーが使われてます。これにトルキーな1.4リッター・ダウンサイジングターボと、デュアルクラッチ式6速DSGを搭載。力強い走りと優れた燃費性能を両立してるんです。

ライバルは

価格、サイズともにライバル関係にあるのは、国産のフルサイズミニバン「トヨタ・アルファード」とか「日産・エルグランド」でしょう。サイズだけなら「メルセデスベンツ・Vクラス」も近いんですが、あちらはお値段がかなり高いです。

マイナーチェンジ情報

2015年にマイナーチェンジ。衝突の被害を軽減する「プリクラッシュブレーキシステム(自動ブレーキ)」を全グレードに標準装備してます。価格を抑えたエントリーグレード「トレンドライン」の追加なんかもあって、国産ライバルとも十分以上に張り合えるお値段となりました。

その他には、新開発された1.4リッター・ダウンサイジングターボの搭載もあります。旧型のエンジンと比べると、最大出力は150馬力と変わりませんが、トルクが1kgf・mほど向上してます。最大出力、最大トルクともに発生回転数がやや低くなって、多少扱いやすくなりました。さらに燃費性能も13.5km/lから、15.0km/lに改善。エネルギー効率と力強い走りを両立してます。

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外観

全長4855mmX全幅1910mmX全高1750mmのボディサイズを持ちます。またホイールベースは2920mmとなります。

サイズと車重が大幅にアップして、カテゴリーも一回り大きなフルサイズミニバンになりました。見た目にも威風堂々とした存在感があります。

遠目で見るとゴルフトゥーランとそっくりで、見分けも付きにくいのですが、実際に近づいてみると印象は大きく異なり圧倒的な迫力と存在感が感じられます。

フロント

2代目 VW シャラン ハイラインのフロント

重厚感あふれるフロントノーズに大きな角型ヘッドライト(バイキセノン)。ワイドに広がるフロントバンパー。真面目さと信頼感を併せ持つVWらしいフロントフェイス。

サイド

まさに質実剛健といった言葉がピッタリとハマるサイドビュー。短くスラントしたノーズに、傾斜の強いAピラー(一番前の柱)。なだらかラインで描かれた巨大なキャビン(居住空間)。端正なサイドパネルが組み合わされます。

リア

2代目 VW シャラン ハイラインのリア

ふくよかなヒップラインに大きなリアコンビランプ。シャープなラインで構成されたリアバンパー。緻密な面とラインが与えられ、上質なシャランの世界観を存分に表現しています。

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内装

2代目 VW シャラン ハイラインの内装

がっしりとしたインパネに、華やかなメタリックパーツを効果的に組み合わせた、シンプルで使い勝手の良い室内。

2代目 VW シャラン ハイラインのナビ

センタークラスター最上段には、ナビゲーションなどを表示する大型液晶ディスプレイ。

2代目 VW シャラン ハイラインのエアコン

中段には手探りでの操作も簡単なダイヤル式エアコン(運転手、助手席、後席、3ゾーン独立温度設定)を装備してます。

2代目 VW シャラン ハイラインのメーター

メーターナセルには、視認性の高い二眼メーターをレイアウト。最新のフルデジタル式メーターも良いですが、こういった古典的メーターも視認性では負けていません。メーターの間には、マルチファンクション・ディスプレイ(モノクロ)が装備され、車両情報などを的確に表示します。

燃料タンクの巧みなレイアウトによる低い床と大柄なボディとが相まって、広々とした室内を実現。

比較的目線が高いため、大きなボディの割に取り回しは良好。適正なドライビングポジションもあって、運転のしやすい車に仕上がっています。

シート

2代目 VW シャラン ハイラインのフロントシート

フロントシートは、アルカンターラと本革を組み合わせたコンビシート。柔軟な表皮にコシのあるクッションが組み合わされ、体圧をキレイに分散します。身体を優しく包み込む形状で、肩まわりから腰、太ももの裏に掛けて身体をしっかりと支えます。

2代目 VW シャラン ハイラインのセカンドシート

セカンドシートには独立した3つのシートが並列にレイアウトされるため、それぞれのシート幅は狭め。それでも足元、頭上空間にはたっぷりとしたスペースがあり、大人3人が座っても窮屈感はありません。

サードシートは、クッションが薄く背もたれの高さも低め。それでも、後の席に行くほど目線が高くなる「シアターレイアウト」が採用され、窮屈感や閉塞感はありません。ガソリンタンクのレイアウトが巧みで、床がスッキリと低く、体操座りのような窮屈な姿勢を強いられることもありません。ただし、突き上げ感はセカンドシートより若干大きめ。

初代シャランは、シートアレンジのために一度シートを取り外す必要がありましたが、2代目シャランでは改良され、日本車のようにその場で折りたたんでフルフラットにする事ができます。ただし、そのせいで2列目3列目シートが若干小さくなっています。

シートの使い勝手を選ぶか、快適性を選ぶかは、ユーザーの好みにもよるので難しいところですが、2代目の人気を見ると日本市場では使い勝手のほうが重視されるようです。確かに狭い日本の駐車場で、大きなシートを付けたり外したりなんて面倒な事はやってられません。

荷室

リアゲートギリギリの位置にサードシートが装備されるため、荷室容量は大きく制限されます。それでも、幅と高さに余裕があるので家族4人で1泊旅行くらいは可能。さらにサードシートを折り畳めば、大きく容量を拡大(1164L)することができます。加えてセカンドシート倒してフルフラットにすれば、ワンボックスカー(2297L)のような使い方も可能です。

この「Highline」グレードは、電動スライドドアに加えてテールゲートも電動式。リアバンパーの下に足を差し込むだけで、ハンズフリーで開閉を制御することができます。

静粛性

車内にたっぷりと施された遮音材と吸音材、高剛性ボディによって、ノイズやバイブレーションはキレイに遮断。プレミアムサルーン並の高い静粛性を実現しています。

エンジンとミッション

1394cc・直列4気筒ターボエンジンに、6速DSGが組み合わされます。
最高出力150ps/5000-6000rpm、最大トルク25.5kgf・m/1500-3500rpmを発揮。
車両重量1820kg。JC08モード燃費、15.0km/l。

エンジン

1.4Lツインカムターボで前輪を駆動(FF)。スーパーチャージャーとターボの過給によって、先代以上の最大トルク(25.5kg)を発揮。

低速域では一部モッサリとするシーンもありますが、低速からしっかりとスーパーチャージャーが働き、中高速域ではターボが過給するため全域で力強い加速が可能です。街中など日常領域では必要十分以上のパワー感。低い回転からぶ厚いトルクを発生して、1.8tあまりの重量級ボディをスルスルと加速。急な坂道では、周りの流れをリードしてグイグイと駆け上がります。

アクセル操作に対する反応はリニアかつダイレクト、速度の制御がしやすいです。回転フィールもスムーズで高回転域まで気持ちよく吹けあがります。

トランスミッション

2代目 VW シャラン ハイラインの6速DSG

デュアルクラッチ式6速DSGを装備。なめらかで切れ目の無いスムーズな変速制御。ストップ&ゴーの多い市街地モードでも、ギクシャク感は最小限に抑制されています。

足回りとハンドリング

前輪にマクファーソンストラット式サスペンション、後輪には4リンク式サスペンションを装備。前後共にスタビライザーで強化。

ハンドリング

ステアリングの取り付け剛性が高く、スムーズかつ高精度なフィール。操舵に対する反応も自然で、上質感を伴った気持ちの良さがあります。

中立付近の遊びがやや大きいものの、そこを過ぎれば正確に反応して、イメージしたラインを外すことはありません。エンジンをフロントミッドシップ(ボディ中心寄り)低い位置に搭載しているため、優れた重量バランスによってセダンライクな身のこなしをみせます。

最小回転半径は、5.8mと少々大きめ。ボディサイズ(全長4855mm、全幅1910mm)も大きく、街中や狭い路地では取り回しに苦労します。

乗り心地

適度に引き締まったしなやかな乗り味。重厚感を伴ったタッチの良さが気持ち良いです。MQB以前の古いプラットフォームですが、長年に渡って地道な改良が続けられ熟成の域に達しています。目地段差や橋脚ジョイントでは、路面の衝撃をキレイに減衰して車内に不快な衝撃を伝えません。

リアの接地性が高くコーナリング中も高い安定性をしめします。ハンドリングと安定性のバランスが絶妙。高速域でのフラット感が強く、ハンドルを取れられて進路を乱すこともありません。

ロングホイールベースボディと抑えの効いたサスによって、ピッチング方向の揺れもよく制御されています。速度を上げるほどその傾向は強まり、ドイツ車ならではの圧倒的なフラット感があります。

その他

予防安全技術として、衝突を予測して被害軽減をはかる「プリクラッシュブレーキ(シティエマージェンシーブレーキ機能付き)」や「リアトラフィックアラート(後退時警告・衝突軽減ブレーキ機能)」、「ブラインドスポットディテクション(後方死角検知機能)」を装備。

運転支援技術として、一定の車間を維持して前車に追従する「アダプティブクルーズコントロール(全車速追従機能付き)」や、車線内を維持する「レーンキープアシスト」、ステアリングの動きに併せて照射角を制御する「ダイナミックコーナリングライト」といった技術を装備。

【試乗評価】のまとめ

「VW シャラン TSI Highline」は、広大な室内にトルキーなターボエンジン、しっとりとした上質な足回り、素直なハンドリングを併せ持つフルサイズ・ミニバン(5ドア)。

上質感とシンプルな美しさを併せ持つ外観は、押し出しの強い国産のLクラス・ミニバンを苦手とする人にもピッタリ。

ただし、日本の市街地には少々大きすぎるボディは、乗る人を選びそうです。「自宅や勤務先の駐車場に駐められるかどうか気になる」という人は、購入の前に試乗して確認しておいた方が無難です。出来れば、通勤路や普段よく利用する道を実際にシャランで走ってみてください。

国産車では、「トヨタ・ヴェルファイヤ」や「日産・エルグランド」がライバルになります。見た目の迫力や巧みなシートアレンジでは国産車のほうが上手ですが、上質な乗り味と高い安定性、シートの重厚感あふれる座り心地はシャランの方が優れています。

マイナーチェンジで追加された「TSI Trendoline」は、安い値付けが特徴のお値打ち車ですが、その分装備も貧弱。特に安全装備は後付の出来ない重要な装備です。予算が許せば「TSI Comfortline」以上のグレードをオススメします。

「大きなフルサイズミニバンを探しているが、乗り味や走りの良さも重要」という人や、「国産Lクラスミニバンは、ちょっと派手すぎて気が引ける」なんて人に最適な車です。

中古車市場では

2017年式「VW シャラン TSI Highline」で350万円前後。2015年式で300万前後(2020年3月現在)。

新車価格

5,037,000円(税込み)

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ABOUTこの記事をかいた人

クルマ好きの40代男性。現在病気のため療養中です。

ブログは暇つぶし&リハビリ。週2で短時間のアルバイトをしていますが、普通の人のように毎日フルタイムで働くことはできません。

ブログの内容はあくまで秋ろーの個人的見解です。実際に車や商品、サービスを購入する際は、自分で試乗や調査をして確かめることをオススメします。

記事更新の時間は、大体、午後11時から12時頃にかけてを予定しています。

修正ばっかりしてると新記事の投稿ができないんで、新記事3に対して修正1くらいの割合でやってます(2019年6月〜)