ピストンとは
ピストンとは、レシプロエンジンのシリンダー内で、ガソリンが燃焼するエネルギーを受けて上下に往復運動しながら、クランクシャフトにエネルギーを伝える働きをする部品です。
つまり、ガソリンの燃焼エネルギーを直接取り出す働きをしているわけですから、エンジンの中でも特に重要な部品といえます。
このピストンは円筒形の形をしており、下部には「スカート」と呼ばれる薄い壁が設置されています。
スカートは、シリンダー内でピストンが斜めになる事を防ぐ働きがあります。その為、ピストンが倒れる可能性のある、クランクシャフトと直行する方向にだけスカートが設置されています。
またピストンは4ストロークの場合、エンジンが「吸気」「圧縮」「燃焼」「排気」をする間にシリンダー内を2往復します。
2ストロークの場合は、エンジンが「吸気・圧縮」「燃焼・排気」をする間にシリンダー内を1往復しています。
ピストンの材質
ピストンは直接ガソリンの燃焼エネルギーにさらされますので、高い強度が要求されます。
またピストンリングを介して、シリンダーと密着しながら高速で上下運動していますので、高い精度と低い熱膨張性が求められます。
さらに燃費やパワーを損なわないように軽量化も必要です。よって、最近ではこれらの条件を満たすアルミ合金が用いられることが多いです。
レースや高い出力を要求されるエンジンには、アルミ鍛(たん)造品のピストンが用いられます。このピストンはコストは高くなりますが、高い強度と軽量化を同時に実現できる高性能なピストンです。
一般の市販車には、コストが安くてそこそこの性能を実現できるアルミ鋳(ちゅう)造品のピストンが多く用いられています。
ピストントップの形
ピストンの上部、ガソリンの燃焼エネルギーを直接受けとめる部分を、「ピストントップ」といいます。
このピストントップはシリンダーヘッドと共に、燃焼室の形を構成する部品です。
エンジンを高出力型にするのか、低燃費型にするのかといった場合に、このピストントップの形は重要な役割を果たします。
高出力型にするなら、圧縮比を上げるため、凹形状をしているシリンダーヘッドに合わせて、ピストントップは凸形状とする必要があります。
低燃費型にするには、圧縮比を下げるため凹形状としなければなりません。
また、吸排気バルブがピストンヘッドと干渉しないように、少し形状を加工して「逃げ」を作る必要もあります。
ショートストローク型とロングストローク型
ピストンを上から見たときの直径を「ボア」、横から見たときのピストンの上下移動量を「ストローク」といいます。
この2つの値の比を表す指標を「ボアストーク比」といいます。
この比が「1:1」のエンジンは「スクウェア型エンジン」です。
また、「ボア」が大きく「ストローク」が小さいエンジンを「ショートストローク型エンジン」といい、その逆を「ロングストローク型エンジン」と言います。
ショートストローク型エンジンは、エンジン回転を高くして高出力なパワーを出したい時に向いたエンジン形式です。
ロングストローク型エンジンは、熱効率がよく低回転でも大きいトルクを発揮しますので、低燃費で使いやすいエンジンを作る時に向いています。