「3代目 トヨタ・アルファード(30系)」は、2015年にフルモデルチェンジしたLLクラスの高級ミニバンです。
コンパクトカーとかハイト系の軽自動車ばかりが売れる日本市場ですが、「アルファード」はLLクラスの割によく売れてます。その勢いは兄弟車の「ヴェルファイア」を合わせると、「プリウス」やコンパクトカー「ヴィッツ」を上回るくらいです。
中古車市場での人気も高く、ものによっては新車から3年後でも8割〜9割のリセールバリュー(下取り価格)が付くっていうんですから驚きます(もちろん走行距離やグレードによってバラツキあり)。
そんな超人気車「トヨタ・アルファード」ですが、モデルチェンジから3年後の2017年にマイナーチェンジを受けました。元々お値段の高い高級車ですから、新車(後期モデル)と多少安くなった「前期モデル」を比較検討している人も多いでしょう。そんなわけで今回は、「トヨタ・アルファード」の「前期モデル」と「後期モデル」を比較して、違いや特徴なんかを詳しく解説していきます。
購入する時の参考になれば嬉しいです。
トヨタ・アルファード(30系)「前期モデル」と「後期モデル」の違い
「前期モデル」とはマイナーチェンジ前のモデルの事で、「後期モデル」はそれ以降のモデルのことです。アルファードは2017年にマイナーチェンジを行ってますので、そこで変更されたポイントが「前期モデル」と「後期モデル」の違いってことになります。
具体的には、小変更された「外装デザイン」と「内装デザイン」、旧型エンジンから換装された「新型3.5リッターV6エンジン」、「6速AT」から多段化された「8速AT」、2世代目となって全車標準装備された「Toyota Sefety Sense」、強化された「ボディ剛性」、「足回りの変更」なんかがあります。
ということで、順を追って「外装デザインの違い」から解説していきましょう。
小変更を受けた「外装デザイン」
アルファードは、2017年のマイナーチェンジで「後期型」に切り替わり、外装デザインにも小変更を受けてます。
「前期型」にも十分な「高級感」とか「押し出し感」があったんですが、「後期型」はそのあたりがグッと強調され、さらに完成度の高さとか大人っぽさを加えた感じです。
特にフロント周りは、ギュッと引き締まった感じがしてカッコ良いですねえ。
フロント周り
マイナーチェンジで、ヘッドライトとグリル、フロントバンパー形状が変更されてます。
ヘッドライトは、グリルから伸びた細いフレームをヘッドライト内に巻き込むような複雑な形に変わりました。グリル自身もデザインが変更され、縦のラインを強調した立体的なデザインになってます。フロントバンパーも、フォグランプ周りの穴を大きくしてダイナミックな感じを出してます。
全体としてはアルファードらしい「押し出し感」を維持しながらも、上質感とか威厳、完成度を増した感じです。個人的には「一気に高そうな感じになったなあ」って思いました。
サイドビュー
マイチェンによるサイドビューの変更はほとんどありません。
フロントノーズ先端から伸びるAピラー(一番前の柱)に短いノーズ、逆スラントした特徴的なBピラー(前から2番目の柱)、巨大なキャビン(居住空間)、うねるような形状のサイドパネルもそもままで、車格にふさわしい威風堂々とした存在感があります。その上で、アルファードらしい個性もあるんですから言うことありません。
リア周り
リア周りは、マイチェンで、バックドアガーニッシュ(シルバー)とリアコンビランプ形状が変更されてます。
バックドアガーニッシュ(シルバー)は左右のリアコンビランプを繋ぐパーツで、前期型はシンプルな長方形です。これを後期型では左右に薄く伸ばし、リアコンビランプ内に進入させました。それにともなってリアコンビランプ形状も上下に薄く、さらに内部のクリアレンズ領域も薄い形に変更されてます。全体としては緻密に引き締まった感じがします。
小変更を受けた「室内」
アルファードの内装デザインは、直線を基調にしたガッチリ系のデザイン。決めの細かい樹脂パネルや木目調加飾パネル、メタリックパーツの組み合わせによって、高級車にふさわしい上質感もあります。
「前期モデル」と「後期モデル」の違い
「前期モデル」と「後期モデル」の違いは、セカンドシートの「ウォークイン機能」の手動化と、新グレード「エグゼクティブラウンジS」が増えたことによる新しいデザインバリエーションの追加。その他には、全グレードを通じてシート表皮やメーターグラフィク、インパネの加飾パネルなどのデザインも微妙に変わってます。
「ウォークイン機能」は前期モデルで「電動化」されてたんですが、これだとセカンドシートを前に寄せてサードシートに乗り込むのに少々時間がかかります。これを「手動化」することによって、ガコンっと一瞬で前に寄せられるようになったわけです。まあ、手動化すると動きに優雅さは無くなりますが、セカンドシートのVIPを待たせる時間は大幅に短縮されます。
新しいグレードは最上級グレード「エグゼクティブラウンジ」に追加された「エグゼクティブラウンジS」。ブラック&ホワイトのゴージャスな専用インテリアに、シルバー木目調加飾パネル、プレミアムナッパ本革シートがおごられる贅沢な仕様になってます。
大柄なボディの割に運転しやすい
アルファードの着座位置は高くボディも角ばっているので、大柄なボディの割に車幅感覚がつかみやすいです。
ゴージャスな3列シート
フロントシートは、嫌な振動が少ないので快適です。これに対してセカンドシートは、スライドドアのために開口部が広く振動を抑えにくい構造なんで、快適性が高いのは意外にフロントかなあと思いました。
セカンドシートには普通のキャプテンシートと、「エグゼクティブブラウンジ」専用シートがありますが、普通のキャプテンシートでも十分快適です。逆に「エグゼクティブブラウンジ」専用シートは、座面がちょっと硬いような気もします。まあ、このあたりは好みの問題でしょうけど。
サードシートは、最近流行りのLクラスSUVなんかと比べれば十分なスペースとサイズ感があります。もちろん、セカンドやフロントシートよりは落ちますが、緊急用って感じじゃありません。使わない時は左右に跳ね上げて折りたたんでください。びっくするくらい広大な荷室が出現します。
パワーユニット
アルファードのパワーユニットは、「2.5リッター直列4気筒エンジン」と「3.5リッターV6エンジン」、「2.5リッター直列4気筒+電気モーターによるハイブリッドシステム」の3種があります。
「後期モデル」で変更されたのは「3.5リッターV6エンジン」だけ
この中でマイナーチェンジよる変更を受けたのは「3.5リッターV6エンジン」だけ。ほぼ新型エンジンといってもいい、レクサスGS用「3.5リッターV6エンジン」に変更されたんです。
シリンダーヘッドとエンジンブロックは新しく設計されたパーツになり、エンジン自体も直噴化されてます。性能も格段にアップしてまして、最高出力で280馬力から301馬力に、最大トルクは35.1kgmから36.8kgmになりました。ついでに組み合わされるトランスミッションもアップデートされ、6段ATから8段ATへと換装。パワーアップだけじゃなくて燃費も向上していて、9.5km/l(JC08モード)から10.8km/l(JC08モード)になってます。
「3.5リッターV6エンジン」のパワーフィール
新しい「3.5リッターV6エンジン」を搭載したアルファードは、アクセルをちょこっと踏み込むだけで軽々と走りだします。元々高回転型のエンジンだけど、街乗りなど低回転域でもトルク感は十分以上。
そこからさらにアクセルと踏み込むと、エンジン回転の上昇とともにさらに力強さを増していきますが、その回転フィールはあくまでも上質で滑らか。吹け上がり方も気持ち良いです。「良い車だなあ」って感じがします。V6エンジンのダイナミックな力強さを強調した前期モデルに対して、後期モデルにはゴージャスな上質感があります。
「前期モデル」の6段ATも十分スムーズなんですが、「後期モデル」は8段化されたことによってさらに段差感がなくなりました。アクセルに対する反応も極めてリニア。車を制御しやすいです。
乗り心地
「後期モデル」は「構造用接着剤」の使用を増やして、窓ガラスには「高剛性ガラス用接着剤」を使ってます。ということで、「前期モデル」と比べるとグッとボディ剛性がアップしました。その他には、ショックアブソーバーの減衰力見直しなんかも行われてます。
そのおかげでサスペンションがスムーズかつ正確に動くよになって、乗り心地が良いです。同時に質感もアップしているので、まさにミニバンの王様にふさわしい乗り心地になってます。といっても前期モデルの乗り心地が悪いってわけじゃ無いですよ。あくまでも両車を比べた時の感想です。
そんな「アルファード」の中でも「エグゼクティブラウンジ」系は専用の足回りになってます。ただし、アルファードは普通グレードの乗り心地も良いので、相対的にグレード間の差は小さめです。「エグゼクティブラウンジ」の座面がちょっと硬めということもあって、好みによっては普通のキャプテンシートの方が合うかもしれません。このあたりは、自分でディーラーに出向いて確認してください(座る人の体型や体重も関係するので)。
「2.5S」など18インチタイヤを装着するグレードは、少し硬めの乗り心地です。といっても路面からの衝撃は柔軟に吸収するんで、不快な感じにはなりません。若干スポーティな演出を加えながらも、重厚感のあるしなやかな乗り心地です。
ハンドリング
「後期モデル」では、ボディ剛性と足回りの改良によって、ハンドリングの一体感も上がってます。
背の高い重量級ミニバンなんで、キビキビとしたスポーティな動きは期待できませんが、ステアリング操作に素直に反応する癒し系のハンドリングです。
コーナーではそれなりにロールを許しますが、動きが素直で予測しやすいので嫌な感じはありません。リアの設置性も高く、安定した姿勢でコーナーをクリアします。
直進安定性も高くなっていて、軽くステアリングに手を添えておくだけでビシッと直進していきます。日本の高速道路で主体となる120km/hくらいまでなら、まったく問題無いレベルです。
先進安全技術
トヨタ車全体で、これまで車の価格やクラスによって分けられていた先進安全技術のグレードを「Toyota Safety Sens(第2世代)」に一本化。基本性能を共通化しつつ、車の価格やクラスによって細かい装備を分ける方針に改められました。といっても、名前は一本化されるけど性能はクラスによって違うってことだから、今までとそんなに変わらないのかな?
アルファードもこの方針に則って「後期モデル」では、「Toyota Safety Sens(第2世代)」を採用。さらに全グレードに標準装備されるという充実ぶりです(つまり、前期モデルでは一部グレードに付いてない)。こういう機能は命に関わるもんなんで、全グレードに付くのは素晴らしいと思います。
「Toyota Safety Sens(第2世代)」の基本構成は、ミリ波レーダー+単眼カメラのツインセンサー。第2世代では、夜間の歩行者検知や自転車検知機能を追加してます。
前車との間に適切な距離を保って、設定された速度で追従する「アダプティブクルーズコントロール(全車速対応)」機能も追加されました。レーン内を自動的に維持する「レーントレーシングアシスト」機能付きです。