新型 スバル・WRX STI タイプ S【レビュー】マイナーチェンジによって走りの一体感と質感が向上 [CBA-VAB]

スバル・WRX STI タイプ Sのイメージ

今回の【レビュー】は「新型 スバル・WRX STI タイプ S」。
2014年に登場した、Mクラスの4ドアセダンです。

WRXの発売される前の年、ニューヨークモーターショー2013で「WRXコンセプト」というショーモデルが発表されたんですが。

これが2ドアクーペみたいに超カッコいいスタイリングで、「次のWRXがこれに近いカタチで発売されるならスゴイことになるぞ」と世界中のスバルファンが色めきたち、ただでさえ高い期待値をガンガン煽ってしまいました。

ところが実際に蓋を開けてみるといつものスバル調で、ズングリしたセダンボディに派手なエアロというもの。まあ、これはこれで「羊の皮を被った狼」的なカッコよさはありますが、その前に派手なショーモデルを見せられている分、ガッカリ感は半端なかったです。

デザイナーの育成とか、思い通り腕を振るわせることで息抜きをさせたいなんて思いもあるでしょうが、市販直前のコンセプトモデルだけはなるべく市販車に近いイメージにしてほしいと思います。もちろん、一番理想的なのはショーモデルに近いイメージに市販モデルを仕上げることですけどね。

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2017.07.03

元々「WRX」は1992年に登場した「初代インプレッサ」から派生したグレードで、その名からもなんとなく分かる通り「WRC(世界ラリー選手権)」に出場するために開発されたスポーツバージョンです。初代は軽量コンパクトなボディに、当時の自主規制一杯となる280馬力を発生するツインカムターボを搭載。シンメトリカルAWDと組み合わされ、かなりスポーティなモデルに仕上がっていました。

その後、インプレッサから独立して現在の「WRX STI」に格上げされたのが、「スバル・インプレッサ WRX(3代目)」が2010年にマイナーチェンジした時です。現在はWRCとも直接的な関係はなくなっちゃいましたが、それでもプライベーターを中心にラリーやサーキットで結構活躍しています。

じっくり読む無い人は、文末の「【レビュー】のまとめ」をどうぞ↓
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「新型 スバル・WRX STI タイプ S」の概要

マニアな人には分かりきった事ですが、実はこの「WRX」には中身の違う2つのモデルがあります。

一つはレヴォーグ系とパワートレーンを共有する「WRX S4」。こいつはスポーツバージョンというよりも、高性能な高級セダンとかロングツアラーといった方が近いかもしれません。その証拠にトランスミッションはレヴォーグ系と同じCVTで、最新のEyeSight(Ver.3)も搭載されます。エンジンは最新型の2.0L直噴ターボで「WRX」ほどの過激さは無いものの、スポーティな走りと日常領域での扱いやすさをバランスさせてます。特にサーキット走行なんかをする予定が無いなら、こっちのほうが乗りやすいと思います。もちろん、カッコよさやネームバリューで「STI」を選ぶのも間違いじゃあありません。

これに対して今回の「WRX STI」はスポーティな走りからサーキット走行までをこなす、本当の意味でのホットバージョンです。プラットフォームこそレヴォーグ系と同じですが、搭載されるエンジンは初代WRXから20年以上に渡って脈々と受け継がれる2.0Lツインターボ。古典的なターボエンジンのフィールを色濃く残すパワーユニットで、低速トルクが細く多少の扱いづらさはあるものの、回せば回すほど鋭さと気持ち良さを増しちゃいます。これに剛性感溢れる6速MTと左右対称4WDシステム「シンメトリカル4WD」が組み合わされ、ダイナミックな走りを演出するわけです。

その「WRX STI」の中でも「タイプS」グレードは、トランクリッドスポイラーや専用19インチアルミ、ビルシュタインダンパーなどを装備する上級グレード。オプションとしてレカロ社と共同開発したスポーツシートもあります。

プラットフォームは「SGP」じゃない

基本となるプラットフォーム(基本骨格)は「レヴォーグ」や「WRX S4」と同じです。少しだけ設計が前なので最近のインプレッサ系に使われている新世代アーキテクチャー「SUBARU GLOBAL PLATFORM」じゃありません。といってもスバルの場合は新しいモデルが出る度に改良して使っていますから、WRXの爆発的なパワーを受け止めるだけの十分な運動性能があります。

これに組み合わされるのは、古典的な味わいを残すツインカムターボと剛性感あふれる男っぽい6速MT。スバルの誇る左右対称4WDシステム「シンメトリカルAWD」です。

ライバルはランエボ?

ライバルは「三菱 ランサー エボリューション」。だったんですが、ランエボは現在、生産、開発ともに凍結されてます。他に国内で買える2.0Lターボの4WDモデルとしては「VW ゴルフ R(310ps/38.7gkf・m)」がありますが、WRXやランエボと並べるにはちょっとイメージが違うような気がするんですよねえ。値段も150万円以上高いし。それを考えるとWRXは結構コストパフォーマンスが高いです。

参考:WRX STI(308ps/43kgf・m)

2017年にマイナーチェンジを実施

2017年にマイナーチェンジを実施。内外装のアップデートとともに走行性能の向上や安全装備の充実が行われています。

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外観

ボディサイズ、全長4595mmX全幅1795mmX全高1475mm。ホイールベース、2650mm。

フロント

スバル・WRX STI タイプ Sのフロント

ヘキサゴン型グリルにシャープなLEDヘッドライト。マイナーチェンジでダイナミックな形状となったフロントエアロバンパー。ボンネット中央にはターボを冷却するための大型エアインテークが装備されます。

おしゃれとか都会的なんて言葉とは無縁な、無骨な男らしさがたまりません!

サイド

ボリューム感たっぷりのボディに、筋肉質に張り出した前後フェンダー。クーペのようになだらかなルーフ。なんといっても目を引くのが、リアエンドに装着された大型GTウィング(写真はリップスポイラー)です。大きな19インチホイールと相まって、ボディ全体をスポーティに引き締めています。

それから、鮮やかなライトグリーンにペイントされたブレンボ製キャリパーも気になります。チェリーレッドといい、STIは不思議な色使いが好きですねえ。

リア

スバル・WRX STI タイプ Sのリア

なだらかに傾斜するリアウィンドウにハイデッキ化されたヒップライン。力強く大地を踏みしめるリアフェンダー。普通のセダンボディに大型リアスポイラー(写真はリップスポイラー)のミスマッチ感が最高です。

普通に街中を流すだけなら大した効果はありませんが、せっかくの「WRX STI」です。ここは思い切ってド派手な「大型リアスポイラー(オプション)」しちゃいましょう。

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内装

スバル・WRX STI タイプ Sの内装

ブラック基調の室内にチェリーレッドのアクセントを効かせた、スポーティでシンプルな室内。マイナーチェンジでインパネ加飾パネル(ハイグロスブラック)が追加され、ちょっとだけ上質感が向上しています。「SUBARU GLOBAL PLATOFOM」以降、内装のデザインも新しいデザインテーマに切り替わりましたが、一世代前となったこっちのデザインもシンプルなおかげで古臭さは全然ありません。

コックピットの中はディスプレイがいっぱい!

センタークラスター最上段には、車輌情報などを表示するマルチファンクションディスプレイ(5.9インチ)。中断にはナビゲーションなどを表示する大型ワイド液晶ディスププレイ(8インチ)。その直下にはエアコンのコントロールユニットがあります。これには大きなダイヤルが2個ついているので、手元を見なくても操作しやすいです。運転中はちょっと目を離すだけで何メートルも進んでしまいますから、こういった小さな工夫もおろそかに出来ません。

僕の個人的な好みとしては、最上段に今流行のフローティングディスプレイを置いて、その直下の空いたスペースにエアコン吹出口としたほうが、視線移動が少なく風量の調整もしやすいです。

メーターナセルには大型二眼メーターを装備。「ホワイトルミネセント」と呼ばれる白色照明のおかげで見やすいです。中央には小さな3.5インチ・マルチインフォメーションディスプレイがあります。

ドアミラーの場所を工夫して死角を減少させる

Aピラーの根本に大きな三角窓が配置され、ドアミラーの場所を少し後にズラしてます。そのおかげで斜め前方の死角が大きく減少。適切なドライビングポジションと見切りの良いボディも相まって運転しやすいです。最近のスバルは全部このタイプのドアミラーですが、こいつは普通のミラー(Aピラーの根本に設置するタイプ)よりも剛性や精度を確保するのが難しくコストが高いそうです。コストを掛ける以上の理由があるということなんでしょう。

僕の古いレガシィはこの場所にやたらとデカイドアミラーがあって、斜め前方に大きな死角を作ってます。なるべく気をつけて運転してますが、時に自車と歩行者の動きがピッタリとシンクロして完全に歩行者を見失うことがあります。「後付で買えられるなら替えてもらいたい」って感じです。

トランクリッド上端には標準で小さなリップスポイラー。オプションで大型リアスポイラーが付きます。この大型リアスポイラーは一見後方視界を大きく妨げそうですが、実はスポイラーの内側があまりにも大きいのでそこから十分な視界が確保できるんですよねえ。この辺りの事情はかつてのライバル「ランエボ」も同じです。

シート

スバル・WRX STI タイプ Sのフロントシート

フロントシートは、標準でウルトラスウェードと本革のスポーツシートを装備。しなやかな表皮にコシのあるクッションが組み合わされ、身体をガッチリと支えます。適度なサイドサポートもあるんで、少々スポーツドライビングをしたくらいで身体がズレることはありません。

タイプSグレードの場合は、オプションでスバルとレカロ社が共同で開発したレカロシートを選べます。標準シートよりもやや硬い印象でホールド感も高いですが、それほど疲れや痛みは感じません。どちらもチェーリーレッドをあしらった似たようなデザインなのに、並べてみれば明らかにレカロのほうがカッコいいです。まあ、その分お値段も高いんですけど。予算が許すなら大型リアウィングと合わせて装備したいアイテムです。

荷室

普通の実用セダンをベースにしているんで、荷室には460リッターの十分な余裕があります。幅、奥行きともに広大で、家族4人くらいまでなら荷物のかさばるキャンプ遊びも可能でしょう。

静粛性

スポーティな快音を室内に響かせてます。ただし、マイナーチェンジによって遮音材や吸音材が追加され、音質そのものは上質な印象となりました。WRXは実用性の高さも売りなんで、この辺りの改良は素直に嬉しいです。

エンジンとトランスミッション

1994cc・水平対向4気筒DOHCターボエンジンに、6速MTの組み合わせ。
最高出力308ps/6400rpm、最大トルク43.0kgf・m/4400rpmを発揮。

車両重量1490kg。JC08モード燃費は、9.4km/l。

エンジン

2.0Lのツインカムターボで4輪を駆動(フルタイム4WD)。中低速(2000回転以上)からぶ厚いトルクを発生するパワフルなエンジンで、軽くアクセルを踏み込むだけでシートバックに身体が押し付けられます。

最新の直噴エンジンを積む「S4」に対して、「STI」のパワートレーンは先代「インプレッサ WRX」のモノがほぼそのまま移植されてます。エンジンや駆動システムにいたっては、初代「インプレッサ WRX」に搭載されていた20年以上も前の年代物(もちろんモデルチェンジの度に改良され熟成されまくってますが)です。

エンジンの基本設計が古いので、トルクのフラット感は今ひとつ。走り出しなど極低速域ではトルクが細すぎてモッサリしちゃいます。その分、パワーバンドに入った時のメリハリというかトルク感は最高です。気持ちよく走るには「ある程度の知識と技量が必要」ってとこが、かえってマニア心をくすぐるんでしょうねえ。

マイナーチェンジによってブレーキ性能も強化されてます。ブレンボ製6ポッドキャリパー(リアは2ポッド)が装備され、高い制動力とコントロール性の高さを実現しました。

トランスミッション

6速マニュアル・トランスミッションを装備。マイナーチェンジによってシフトフィールも若干スムーズに。剛性感あふれる切れ味の良さとあいまって、ダイナミックな走りが味わえます。

乗り心地とハンドリング

前輪にマクファーソン・ストラット式サスペンション、後輪にはダブルウィッシュボーン式サスペンションを装備。

乗り心地

装着タイヤは245/35R19。タイプSグレードには標準で「ビルシュタイン製ダンパー」を装着。

スバルが誇る最上級ホットバージョンなので、乗り味はかなりスポーティです。ただ、セッティングが上手いのか、はたまたビルシュタイン製ダンパーの恩恵か、あたりがしなやかなのでそれほど不快感はありません。

マイナーチェンジでダンパーやスタビライザーのセッティングが見直され、フラット感とかしなやかさが向上。高速域での安定感も高く、速度を上げれば上げるほどフラット感が増していく感じです。少々の轍や横風くらいでは進路を乱されません。

目地段差やジョイントでは路面からの衝撃を拾いやすいんですが、衝撃の角がまろやかなんで不快な感じはありません。小さな衝撃はダンパーのしなやかなストロークでいなし、大きな衝撃はダンパーと高剛性ボディが一体となってガッチリと受け止めます。スポーツカーでありながら、ちょっとした高級感を感じさせるのもSTIの魅力です。

ハンドリング

軽快感あふれるスポーティなハンドリング。ドライバーの操舵に素直に反応してダイナミックに躍動する感じがたまりません。

上屋の動きが小さく抑えられているので、コーナリング中の安定感も抜群。まるで車が路面に張り付いているようです。高剛性ボディと高価なビルシュタイン製ダンパーが効いてますねえ。

S4やレヴォーグと違って「STI」には伝統的な油圧式パワーステアリングが使われてます。高速域でのビシッとした安定性を確保するため、低速域では若干重めのセッティング。スムーズでリニアなフィールは油圧式ならではの美点です。

マイナーチェンジでセンターデフが完全な電子制御式「DCCD」となり、ハンドリングの切れ味と安定性が向上。ダイヤルとスイッチによって前後重量配分(基本は前49:後51)を自在にコントロールできるため、FR的なハンドリングを重視したセッティングからAWDならではの安定感あふれる走りまで振り幅がスゴイです。

最小回転半径は、5.6m。ボディサイズとか大径ホイールの装着を考えれば、結構小回りが効いているほうだと思います。

先進安全技術など

先進安全技術は、メーカーオプションとして「アドバンスド・セイフティパッケージ」を用意してます。スバル伝家の宝刀「EyeSight」は残念ながら搭載されません。「WRX STI」は絶対的な台数が少ないとかMTとの相性なんかもあると思いますが、なんとか頑張って搭載してもらいたいところです。

この「アドバンスド・セイフティパッケージ」には、斜め後方の死角から接近する車を検知してドライバーに注意を促す「スバル・リヤ・ビークル・ディテクション(後方警戒支援システム)」、対向車を検知してハイビームを切り替える「ハイビーム・アシスト」、フロントグリルおよび助手席側ドアミラーに装備されたカメラで死角を映す「フロント&サイドビューモニター」、コーナーの角度に合わせて前方を照らす「ステアリング連動ヘッドランプ」など、「WRX STI」のスパルタンな印象からは想像できないほどの先進的な安全装置が搭載されてます。それだけに「これに”EyeSight”があれば」という口惜しさは残りますね。

【レビュー】のまとめ

「新型 スバル・WRX STI タイプ S」は、スバル車の中でも高峰に位置するホットバージョンです。パワフルな2.0リッターツインカムターボに、剛性感あふれる6速MTを搭載。エンジンの基本設計が古いため少々低速トルクは物足りませんが、その分、トルクバンドに入った時の力強さは圧倒的です。これに引き締まった足回りと軽快でスポーティなハンドリングが組み合わされ、「WRX STI」ならではのダイナミックな世界観を表現してます。

「WRX STI タイプ S」の乗り味はスポーツカーでありながら、なぜかちょっとだけ上質な感じがするんですけど、今回のマイナーチェンジでそのしっとりとした上質感とフラットな乗り味が増しています。ダンパーやスタビライザーの再調整が効いているんですね。

スバル最高峰のホットバージョンといっても、ベースとなっているのは普通の4ドアセダン。つまり室内や荷室の広さも4ドアセダンと同じなんで、スポーツカーとは思えないほど実用性が高いのもこの車の魅力です。

「家族のために実用性の高いセダンを探しているが、一人で乗る時はスポーティな走りも楽しみたい」とか、「地味な見た目とスポーティな中身のギャップに魅力を感じてしまう(いわゆる”羊の皮を被った狼”ってやつですね)」なんて人にピッタリな車だと思います。

中古車市場では

2017年式「スバル・WRX STI タイプ S」で380万円前後。2014年式で320万円前後(2018年11月現在)。

新車価格

4,060,800円(消費税込み)

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ABOUTこの記事をかいた人

akiroo

クルマ好きの40代男性。現在病気のため療養中です。

ブログは暇つぶし&リハビリ。週2で短時間のアルバイトをしていますが、普通の人のように毎日フルタイムで働くことはできません。

ブログの内容はあくまで秋ろーの個人的見解です。実際に車や商品、サービスを購入する際は、自分で試乗や調査をして確かめることをオススメします。

記事更新の時間は、大体、午後11時から12時頃にかけてを予定しています。

現在、古い「試乗関連」の過去記事を全面書き換え中。その分、新しい記事の投稿が少なくなります(2018年4月〜)