今回の【評価レビュー】は「新型 BMW i3 アトリエ レンジ・エクステンダー装着車」を試乗レポート。
2013年に登場した、発電用エンジンを搭載する電気自動車です。5ドアハッチバックのコンパクトカー。
この「I」シリーズはBMW内のサブブランドで、「持続可能なプレミアムブランド」をコンセプトに、ハイブリッドカーや電気自動車をラインナップしています。
このコンセプトは単に燃費効率やゼロエミッションを達成するだけのものではなく、製造から使用、廃棄まで、車のライフサイクルをトータルにとらえて、100%リサイクルやエネルギー効率、CO2削減を実現しようとする取り組みです。
最近は「iPerformance」シリーズとして既存車種にもランナップを拡げています。
※忙しくてあまり時間の無い人は、文末の「【評価レビュー】のまとめ」をどうぞ。
外観
全長4010mmX全幅1775mmX全高1550mmのボディサイズを持ち、ホイールベースは2570mmとなります。
フロント
太く短いノーズに、ブルーのさし色が施されたキドニーグリル、つり目の不敵なヘッドライトが装備され、上質かつモダンなフロントフェイスに仕上げられています。
サイド
全体のプロポーションは、コンパクトなボディに大きなキャビン(居住空間)を載せた、「いかにもコンパクトカー」といったものです。しかし、フロントノーズからショルダーラインにかけて、複雑なラインが施され、巧みな視覚効果によって個性あふれるスタイリングとなっています。
リア
ルーフからリアエンドにかけてブラックアウトされ、一体的に表現されています。そこに浮き上がるようにLEDリアコンビランプが仕込まれ、近未来的なリア周りを構成しています。
ブラックアウトすることで、スタイリングに特別な視覚効果を与える手法は、コストを掛けずにスタイリングの印象を大きく変えることができます。特にボディサイズやコストに制約のあるコンパクトカーや軽自動車では、費用対効果の高い便利な手法として、その後発売される日本車に大きな影響を与えています。
内装
シンプルで清潔感あふれるモダンな室内。シンプルでありながら貧乏くさくならないところは、日本車にも真似してほしい点です。まあ、この車は500万円以上しますから、もう少し高級感があってもいいかなとは思いますが。
タッチパッド式でナビ情報などをコントロールする「iDrive」。
スリムなデザインのエアコンユニットは、ダイヤル式で手元を見なくても確実な操作が可能。
シート
前席は、軽量化するために、強固なバックシェルに薄いクッションが組み合わされます。薄いと言っても適度なコシがあるため、中距離(30km)程度であれば快適に移動することが可能です。
後席は平面的なデザイン。座面のサイズ、シートバックの高さともに適切で、大人でも十分座れますが、足先を前席の下に滑り込ませる必要があります。
荷室
床下に発電用エンジンを搭載するため、やや床が高いです。それでも、幅と奥行きに十分なスペースがありますので、家族4人であれば2泊3日旅行くらいは余裕です。
静粛性
エンジンノイズがまったくしないため、全体としては非常に静粛性が高いです。
発電用のエンジンが始動すると、低級ノイズが少々車内に響きますが、音質自体は低く抑えられています。
エンジン・電気モーターとミッション
647cc・直列2気筒DOHCエンジン+電気モーターに、CVT(無段変速機)が組み合わされます。
エンジンは、38ps/5000rpmの最高出力と、5.7kgf・m/4500rpmの最大トルクを発揮。
また電気モーターは、170psの最高出力と、25.5kgf・mの最大トルクを発揮します。
車両重量1420kg。JC08モード燃費は、24.7km/lとなります。
エンジン・電気モーター
日産ノートe-POWERと同じ、発電用エンジンを搭載した電気自動車です。直接エンジンを使って走ることはできません。
低速トルクの厚い電気モーターによって、低速から中速域まで力強い走りをみせます。バッテリーが不足すると、リアに搭載されたエンジンが始動してバッテリーに電気を供給。マイナーチェンジによってバッテリーの性能が向上しており、カタログ値で390kmの走行が可能です。
アクセルを戻すことで強力な回生ブレーキが働くため、流れに乗った普通の加減速であれば、アクセルペダルだけで操作することができます。ガソリン車やハイブリッドカーとは異なるドライブフィールですが、慣れてしまえばかえって運転しやすいです。
トランスミッション
電気モーターから直接駆動力を取り出す、電気式CVTを装備。ギアは1速に固定されますが、電気モーターのフレキシブルな特性によって、スムーズかつリニアな加速が可能です。
乗り心地とハンドリング
前輪にマクファーソン・ストラット式サスペンション、後輪にはマルチリンク式サスペンションが装備されます。
乗り心地
155/70R19のタイヤホイールを装備。
適度に引き締まったスポーティな乗り味。
扁平率が低く大きな径の特殊なタイヤホイール(しかも幅が狭い)を装備しているため、路面の衝撃をコツコツと拾います。
ハンドリング
硬い足回りのわりにステアリングフィールは、スローで鈍感な印象です。幅の狭いエコタイヤが装備されているため、グリップ感やロードインフォーメーションも希薄で、キビキビとした軽快感はありません。このあたりは燃費(電費)性能とトレードオフの関係にあるのである程度は仕方ありませんが。
最小回転半径が4.6mと小さいため、狭い場所でも簡単に切り返すことができます。
【評価レビュー】のまとめ
高価な大容量リチウムイオン電池と発電用エンジンを搭載するため、車両価格は割高です。燃費やコスパを重視する人には向きません。
ただし、先進的なコンセプトと個性的でカッコいい外観は、それだけでこの車に十分な価値を与えています。また、純粋な電気自動車と違って、ガソリンエンジンによる発電ができるという事は、充電スポットが少なく、充電に時間の掛かる電気自動車にとって大きなアドバンテージとなります。
「どうせ電気自動車に乗るなら、その先進性をスタイルからもアピールしたい」とか、「電気自動車に乗りたいが、近所に充電スポットが少なくて心配だ」という人にピッタリな車です。BMWのブランド力があれば、さらに説得力が増します。
中古車市場では
2017年式「BMW i3 アトリエ レンジエクステンダー付き」で、360万円前後。2014年式「BMW i3 レンジエクステンダー付き」で、260万円前後となります(2017年12月現在)。
価格
価格 | 5,570,000円(消費税込み)