今回は「新型 プジョー 5008 GT BlueHDi(2代目)」を試乗レポート。
2017年にフルモデルチェンジした、MクラスのクロスオーバーSUV(5ドア)です。
2009年に登場した(日本市場への導入は2013年)初代「プジョー・5008」は、同じPSAグループ「シトロエン・C4ピカソ」をベースにした3列シート7人数乗りのミニバン(5ドア)。日本のミニバンと比較すると全高が低くスライドドアも装備されません。どちらかといえば、3代目&4代目オデッセイに近いロールーフミニバンです。
今回モデルチェンジした2代目「プジョー・5008」は、初代のミニバン路線から一転。アウトドアテイストあふれるクロスオーバーSUVに生まれ変わりました。先行して発売された、「プジョー・3008(5人乗り2列シート)」のボディをそのまま延長(ホイールベース+165mm、全長+190mm、全高+20mm)して、7人乗り3列シートを実現しています。
普通、ここまで大きくコンセプトが変わると、名前自体を変えるか、もしくは新しいサブネームが付くんですが、こいつの場合はなぜか先代と同じ「プジョー・5008」のままです。
※じっくりと読む時間の無い人は、文末の「【試乗評価】のまとめ」をどうぞ↓
「新型 プジョー 5008 GT BlueHDi(2代目)」の概要
日本市場でこそミニバンは主力商品ですが、欧州では多人数乗りを必要とする人のための特殊なモデルです。それに対してクロスオーバーSUVは世界中で大きな人気を集め、今や定番のハッチバックやセダンと肩を並べるほど。
プジョーがわざわざ手持ちのミニバンモデルをクロスオーバーSUVに仕立て直したのは、そんなクロスオーバーSUVのカッコよさとミニバンの機能性を合わせ、販売台数の期待できる主力商品にしたいという願望があったのかもしれません。
プラットフォームについて
ベースとなるプラットフォーム(基本骨格)は、同じPSAグループ内の「DS7 CROSSBACK」や、「プジョー・3008」と同じ「EMP2プラットフォーム」。「プジョー・3008」のボディをストレッチ(延長)しているため、ボディ前半は3008とほとんど同じです。室内デザインも多くの部分を共用しています。このあたりは、専用ボディを与えられていた先代5008との大きな違いです。
パワートレーン
パワートレーンは、2Lディーゼルターボにアイシン製8速ATを組み合わせたモノ。見た目こそ逞しいクロスオーバーSUVですが、駆動方式は一般的な前輪駆動(FF)のみ。4WDモデルは用意されませんが、その代わり悪路走破性を高めるトラクションコントロール「アドバンスト・グリップ・コントロール」が用意されます。
この点については賛否両論があるみたいですが、都会派のクロスオーバーSUVで悪路にガンガン入っていくような人はほとんどいないでしょうから、実質的な問題はありません。まあ、それでも「見かけどおりの逞しさが欲しい!」という気持ちは分かりますが。
ライバルは?
ライバルは、同じPSAグループ内の「DS7 CROSSBACK」や「マツダ・CX-8」、「日産・エクストレイル」など3列7人乗りシートを備える都会派クロスオーバーSUVたちです。
外観
ボディサイズ、全長4640mmX全幅1860mmX全高1650mm。ホイールベース、2840mm。
先行して発売された「プジョー3008」のホイールベースを延長して「3列シート7人乗り」を可能にしています。スタイリングはほぼ3008のままですが、よく見るとリアドアから後ろに専用ボディですね。そのせいか、軽快感のある3008に対して5008はちょっと大人っぽい落ち着きのようなモノがあります。
フロント
分厚いフロントノーズに、ゴージャスなドットタイプのグリル。複雑な多角形をモチーフにしたLEDヘッドライト。プジョーのシンボルは百獣の王ライオンですが、3008&5008のフロントフェイスもどことなくネコ科の大型動物をイメージさせます。ライトのくぼみとかフロントバンパーの支柱が、どことなくライオンの「牙」に見えるんですよね。
サイド
5008を横から見ると3008との違いが良く分かります。5008はロングホイールベース化されたことによりリアドアからボディ後端が延長され、3008よりも伸びやかで大人っぽい印象です。
あと、Dピラー(サイドウィンドウ一番後ろの柱)が明確に見えるようになったのも大きなポイントで、ブラックアウト(黒く塗装)された3008に比べると上質感があります。
リア
「ルノー・アヴァンタイム」や「プジョー・RCZ」など、メッキモールド(というかシルバーの部分)を太めにして上質感とモダンな印象を演出するのはラテン系メーカーの得意技ですが、5008にもそのテクニックが巧みに織り込まれています。
張りのある四角いヒップラインに、ブラックガーニッシュと一体化されたLEDリアコンビランプ。このリアコンビランプもライオンの爪痕のようなデザインで、なかなかかっこいいです。
3008と比べると、立ち気味のリアウィンドウや視覚化されたDピラー、ちょっと大人しい印象のリアバンパー形状などが相違点。軽快な3008に対して「重厚感あふれる大人の色気」とでも言いましょうか。
内装
先進的な操作体系「i-Cockpit」を採用。小径ステアリングの外周にはみ出す形で、近未来的なデジタルメーターがレイアウトされています。最初は多少違和感があるかもしれませんが、ようはヴィッツなどにも採用される「センターメーター」がドライバーの前に移動しているだけですから、慣れれば問題ありません。
デザイン自体はベースとなった3008とほとんど変わりません。カクカクとした直線基調のデザインに、上質な樹脂とシルバーフィニッシャー(メッキモールド)が組み合わされます。高級感と近未来的なカッコよさを兼ね備えたデザインです。小さな宇宙船に乗っているようなワクワク感が止まりません!
シート
フロントシートは、しっとりとした表皮にコシのあるクッションが組み合わされ、腰の高い位置からお尻、太ももの裏にかけて均一な圧力でもっちりと支えます。合皮にアルカンターラのコンビネーションもモダンで良い感じです。
セカンドシートは独立タイプの3人乗り。ややシート幅は狭めとなるものの、足元、頭上空間ともに十分なスペースが確保され大人二人で座っても狭苦しさはありません。ただ、僕の勝手な好みで言えば、二座のキャプテンシート方がゆったりとしていて使いやすいです。まあ、それだと、3列6人乗りになっちゃうんですけどね。
サードシートは、クッションも薄くサイズも小さめ。足元空間も狭く座面も低いため、足を立てて座ると膝が浮き上がったようになります。奥まった荷室の前にあるので、乗り込むにはセカンドシートの背もたれを倒さなければなりません。緊急用シートほど狭くはありませんが、せいぜい短距離用といったところでしょうか。クッションにはそれなりのストロークがあるので、小柄な小学生までなら問題なく座れそうです。
荷室
サードシートを起こして使っていると、荷室スペースはほとんどありません。買い物とか日帰り旅行程度なら十分ですが。
ただし、普段は5人までで使うことが多いでしょうから、サードシートを折りたたんで床下に収納することができます。これなら荷室容量は702Lとなり、4人家族で荷物のかさばるキャンプ遊びも可能です。
さらにセカンドシートを折りたためば、荷室容量を1862Lまで拡大することができます。
静粛性
アイドリング時は、「カラカラ」とディーゼルエンジン特有のノイズを発生します。
静粛性はガソリン車よりも劣るものの、ディーゼルエンジンとしてはまずまず。走り出せば結構静かです。ロードノイズや風切り音もよく抑え込まれています。
エンジンとトランスミッション
1997cc・直列DOHCディーゼル・ターボエンジンに、8速ATが組み合わされます。
エンジンは、最高出力177ps/3750rpm、最大トルク40.8kgf・m/2000rpmを発揮。
車両重量1690kg。JC08モード燃費17.8km/l。
エンジン
2.0Lのディーゼルエンジンで前輪を駆動(FF)。このエンジンはベースとなった3008と全く同じですが、車重が80kg増えたため、その分キビキビとした軽快感は薄まっています。それでも、2000回転という極低速域からたっぷりとしたトルクを発生するため、日常域では十分パワフルです。5008のゆったりとした上質感には、むしろこちらの方が「ふさわしいフィーリングだなあ」と感じます。
アイドリング時はディーゼルエンジン特有のノイズを発生しますが、一旦走り出してしまえばそれほど気になりません。
トランスミッション
トルコン式の8速ATを装備。分厚いトルクを活かして早めにシフトアップするギア比を設定。スムーズで上質な変速と高いエネルギー効率を実現しています。最近のトルコン式ATはスムーズで効率も良くなっているので、「わざわざCVTを選ぶ理由は少なくなってきているのかな?」と思う今日このごろです。
乗り心地とハンドリング
前輪にマクファーソン・ストラット式サスペンション、後輪にはトーションビーム式サスペンションを装備。
乗り心地
装着タイヤは、225/55R18。
適度に引き締まった硬質な乗り味。3008よりもホイールベースが長く車重も重いため、ゆったりとした重厚感を伴います。
目地段差や橋脚ジョイントでは、衝撃の角にしっとりとした丸みが付けられるため、ゴツゴツとした不快感はありません。
高速域での直進性も高く、軽くステアリングに手を添えているだけで矢のように直進していきます。中型クルーザーに乗っているようなフラットライド感が気持ちいいです。
ハンドリング
背の高いSUVにしては重心が低く、コーナリング中も安定した姿勢を保ちます。ステアリングフィールは3008よりも若干穏やかですが、自然な身のこなしで狙ったラインを正確にトレースします。
最小回転半径は5.8mと少々大きめ。まあ、大柄なクロスオーバーSUVですから、ビックリするようなもんではありません。
先進安全技術
先進安全技術には、レーンキープアシストやアダプティブクルーズコントロール、衝突被害軽減ブレーキなど一通りの機能は揃っています。スバルの最新型EyeSightなどと比較すると制御が若干ギクシャクしているんですが、まあ、スバルの技術には一日の長がありますのでこのあたりは仕方ありません。
【試乗評価】のまとめ
「新型 プジョー 5008 GT BlueHDi(2代目)」は、ベースとなった「プジョー・3008」のホイールベースを延長して、3列7人乗りシートを装備したロングバージョン。ミニバンボディの先代から一転して、逞しいクロスオーバーSUVに生まれ変わりました。
3008よりも長く重いため、重厚感あふれるしっとりとした乗り味です。パッと見の印象は3008と変わりませんが、よく見るとリアドアから後ろに専用ボディが与えられています。
これに分厚いトルクを発生する2.0Lディーゼルエンジンと上質なトルコン式8速ATが組み合わされ、「余裕のある大人のクロスオーバーSUV」ってな感じです。
「釣りやキャンプに使えるおしゃれな車を探している」とか、「子供が増えたので多人数乗りの車に替えたいが、ミニバンは生活感が強すぎて嫌!」なんて人に最適な車となります。
中古車市場では
2018年式「プジョー 5008 GT BlueHDi(2代目)」で、440万円前後(2018年9月現在)。ほとんどが走行距離の少ない試乗車(デモカー)あがりです。
新車価格
4,730,000円(消費税込み)