今回は「新型 スズキ ランディ 2.0X(3代目)」を試乗レポート。
2016年にフルモデルチェンジした、Mクラスのミニバンです。
「日産セレナ」をベースに、「スズキ」のバッジを張り付けた「OEM車輌」です。
ライバルには、「トヨタ・ノア」や「ホンダ・ステップワゴン」など、5ナンバーサイズミニバンの強豪がひしめき合っています。
外観
全長4690mmX全幅1695mmX全高1865mmのボディサイズを持ち、ホイールベースは2860mmとなります。
日産セレナと基本的なスタイリングは同じです。5ナンバーサイズぎりぎりに抑えられた、ボクシーなフォルムが特徴的です。
フロント
二段に分割されたヘッドライトに、大きな二段グリルが組み合わされます。日産セレナのようにがっしりとした「V型グリル」は装備されません。そのせいで、ちょっと穏やかな印象のフロントフェイスです。
サイド
巨大なサイドパネルに短いフロントノーズを持つ、典型的な5ナンバーサイズ・ミニバンです。Aピラーに装備された巨大な三角窓と、フロントで緩やかに切り下げられたサイドウィンドウ下端が、広々とした見晴らしの良さを予感させます。
リア
真四角の大きなリアエンドは、このクラスのライバルとほとんど同じディメンジョンを持ちます。ただし、リアで跳ね上げられたサイドウィンドウ下端と、その余白を使って巧みにレイアウトされたリアコンビランプが、ランディ(セレナ)ならではのガッシリとした個性を感じさせます。
内装
メカニカルで切れ味の良い、近未来的なインテリアデザインがほどこされます。ただし、上級グレードに装備されるソフトバッドや上質なステッチ処理はありません。
若干奥まった部分に小さなデジタル速度計がレイアウトされますが、視認性に問題はありません。焦点距離が遠いため、眼精疲労を防ぐ効果も期待できます。
シート
シートまわりには、ノア、ステップワゴンなどライバル他車と比較しても、充分な広さと余裕があります。
フロントシートには、充分なコシとストロークが与えられています。しかし、先代のようにもっちりとしたフランス車的な座り心地は失われました。
セカンドシートのセタークッションは、大きくスライドさせてフロントまで移動することができます。そのため、ゆったりと座りたい時は、簡単に独立キャプテンシートとして使うことができます。フロントシートよりクッションが薄いため、段差の不快な突き上げを感じます。
サードシートは、跳ね上げてボディサイドに折りたたむ方式です。スペースを有効に使うことはできませんが、「力の無い女性でも操作が簡単」というメリットがあります。先代同様、緊急用シートという印象は変わりませんが、わずかに座り心地が向上しています。10kmくらいであれば、なんとかなりそうです。
荷室
リアのハッチゲートには、リアガラス窓だけを開くことのできる、二重開閉機構が装備されます。「混み合う駐車場で小さな荷物を出し入れする」なんて場合に便利です。
静粛性
巡航時や市街地をゆったりと流す場合は、風切音やロードノイズ、エンジン透過音もよく抑えられています。ただし、アクセルを強く踏み込むと、エンジンノイズとバイブレーションが増大します。このあたりは、トヨタやホンダなどのハイブリッドシステムに、一日の長があります。
エンジンとミッション
1997ccの直列4気筒DOHCエンジン+電気モーターに、CVT(無段変速機)が組み合わされます。
エンジンは、150ps/6000rpmの最高出力と、20.4kgf・m/4400rpmの最大トルクを発揮します。
また電気モーターは、3psの最高出力と、4.9kgf・mの最大トルクを発揮します。
車両重量1680kg。JC08モード燃費は、16.6km/lとなります。
エンジン
2.0Lツインカムエンジン+電気モーターによる「ハイブリッドシステム」で前輪を駆動。このシステムは小さなモーターとバッテリーを使った、マイルド・ハイブリッドシステムです。
低速からしっかりとしたトルクを発揮するものの、燃費重視のセッティングのためレスポンスは今ひとつです。
急な坂道や合流地点など、アクセルを踏み込むとエンジンノイズが大きくなります。トヨタ・プリウスなどの「フル・ハイブリッド」とは、大きくフィールが異なります。といっても巡航時や市街地を流す時は、いたって静かでスムーズですが。
トランスミッション
ステップ感の無いスムーズな変速を行うCVTを装備。市街地走行ではCVT独特のネガも感じません。
足回りとハンドリング
前輪にマクファーソン・ストラット式サスペンション、後輪にはトーションビーム式サスペンションが装備されます。
足回り
ソフトで乗り心地重視のセッティング。高速域でもフラットライドな姿勢を維持します。
ただ、小さな段差や路面の継ぎ目では、セカンドシートを中心に不快な突き上げ感があります。
ハンドリング
ややロールや上屋の動きが大きいものの、ロールスピードが一定で予測しやすいため、不安感はありません。ドライバーの操作に対して素直に反応する、穏やかなハンドリングフィールです。
その他
CMでは、あたかも本格的な「自動運転システム」のように感じさせる「プロパイロット・システム」ですが、実際の性能はそれほどでもありません。限定的な条件で作動する「先進安全システム」や「全車速追従・車線維持・アダプティブクルーズコントロール」のひとつに過ぎません。
評価のまとめ
この「5ナンバーサイズミニバン」というジャンルは、日本固有のガラパゴス化されたジャンルです。そのため、日本独自の進化が繰り返され、今ではどの車を選んでも大きく後悔することはありません。
その中でも、この「スズキ・ランディ」は、ライバル他車に比べてわずかに広々感のある室内と、快適な乗り心地、プロパイロット・システムなどにアドバンテージがあります。
「普段はお父さんが通勤に使い、週末は家族そろってドライブやレジャーに出かける」とか、「お母さんが買い物や子どもの送り迎えに使う」なんてシーンにピッタリとハマります。
価格
価格 | 2,721,600円(消費税込み)