今回の【試乗評価】は「新型 レクサス HS250h バージョンL」。
2009年から2017年まで製造販売されていた、Mクラスの4ドアセダンです。
FRを中心にラインナップしてきた「レクサス」としては初となる、FFレイアウト(前輪駆動)を採用。同時にレクサスで最初のハイブリッド専用モデルでもあります。
同ブランド内の「レクサス・IS」とはサイズ的に競合するものの、あちらはスポーティな走りと上質感を追求したFRセダン。それに対して「HS」は、上質感や快適性能、環境技術を優先したFFセダンです。
基本となるプラットフォーム(基本骨格)は、「プリウス」にも採用される「MCプラットフォーム」。ただし、エンジンの排気量アップや足回りの強化、ボディ剛性のアップなどが行われ、ひとクラス上の仕上がりをみせます。
「トヨタ・SAI」とは、プラットフォームからボディ、パワーユニットまでも共有する兄弟車の関係。「プリウス」の高級バージョンというよりも、新しい発想で作られたプレミアムセダンです。「SAI」の上級モデルという側面もあります。
パワートレーンは、2.4リッターツインカムターボ+電気モーターに、電気式無段変速機を組み合わせるハイブリッド1種のみ。これに装備の違いによる4つのグレードが用意されます。この中でも「バージョンL」は、装備を充実させた上級グレードです。
ライバルは、「メルセデスベンツ・Cクラス」や「BMW・3シリーズ」、「アウディ・A4」などのMクラス・プレミアムセダン。
2013年にマイナーチェンジを実施。スピンドルクリルの採用を始めとする内外装の変更。バンブー(竹)素材や縞杢の設定。装備品の見直しや、足回りおよびボディ剛性の強化。スポーツモードの追加などが行われています。
※じっくりと読む時間の無い人は、文末の「【試乗評価】のまとめ」をどうぞ。
「新型 レクサス HS250h バージョンL」の外観
ボディサイズ、全長4710mmX全幅1785mmX全高1495mm。ホイールベース、2700mm。
フロント
マイナーチェンジに伴って大型「スピンドルグリル」と、L字型LEDヘッドライトを追加。前期型モデルには無かった上質感やダイナミックさが表現されています。
サイド
短いフロントノーズに、大きく伸びやかなキャビン(居住空間)。ロングホイールベース(前後ホイールの間が長い)。ふくよかなサイドパネル。レクサスの中級セダンにふさわしいエレガントなサイドビューです。
リア
傾斜の強いリアウィンドウに、ハイデッキ化されたヒップライン。ワイドに拡がるリアコンビランプ。オーソドックスな4ドアセダンらしく、バランスの良いまとまりを見せます。
マイナーチェンジによって、リアコンビランプ内にLEDライナーを追加。ハイブリッドカーの先進性とレクサスの上質感を巧みに織り込んでいます。
内装
しっとりとした樹脂にダークメタリックのパネル。木目素材やセミアニリンレザーが組み合わされた上質な室内。一昔前のトヨタテイストがそこはかとなく残りますが、それがかえって落ち着きのある上質感を表現しています。
メーターナセルには、大型二眼メーター。クッキリとしたフォントで表示が見やすい。
センターコンソール最上段には、ナビゲーション情報などを表示する大型ワイドディスプレイ。中段にはエアコンユニットとオーディオユニット。手前に大きく付き出したセンターコンソール最下段には、「リモートタッチ」を装備。PCマウスに似た操作感で、カーナビやオーディオ、エアコンを統合的に制御します。このあたりの操作体系は兄弟車である「トヨタ・SAI」とそっくりです。
マイナーチェンジに伴って、ステアリングや内装の一部に、バンブー(竹)素材を選べるようになりました。サラッとした感触で、日本的な上質感や清潔感を表現しています。
太く傾斜の強いAピラー(一番前の柱)がはるか前方にあるため、斜め前の死角はけっこう大きめ。それでも高いルーフと広い視界、アップライトなポジションによって、運転のしやすさはまずまずです。
シート
フロントシートには、上質なセミアニリンレザーにコシのあるクッションを採用。座面の左右には程よい張りがあり、お尻から太ももの裏に掛けて均一な力で支えます。背もたれの形状も絶妙で、長時間ドライブでも疲れが溜まりにくいです。
リアシートは、高いルーフによって広々とした頭上空間を確保。足元にもたっぷりとしたスペースがあり、足を組んでも十分座れます。背もたれ、および座面には人間の形に合わせて緩やかなカーブが施され、乗員の身体を程よい圧力で支えます。
荷室
リアサスの荷室内への張り出しと、後席背もたれと荷室の間に搭載された駆動用バッテリーによって、荷室容量はある程度制限されます。それでも家族4人で2泊3日旅行くらいは十分可能。スクウェア(四角)な荷室形状と大きな開口部によって使い勝手は良好です。ただし、駆動用バッテリーが背もたれの裏に搭載されるため、トランクスルー機能はありません。
静粛性
マイナーチェンジによって追加された遮音材や吸音材。静かなハイブリッドシステムと強化されたボディ剛性との相乗効果によって、室内は一段と静かになりました。
エンジンとミッション
2362ccの直列4気筒DOHCエンジン+電気モーターに、CVT(無段変速機)が組み合わされます。
エンジンは、150ps/6000rpmの最高出力と、19.1kgf・m/4400rpmの最大トルクを発揮します。
また電気モーターは、143psの最高出力と、27.5kgf・mの最大トルクを発揮します。
車両重量は1640kgで、JC08モード燃費は、20.6km/lとなります。
パワーユニットとミッション
2362cc・直列4気筒DOHCエンジン+電気モーターに、CVT(電気式無段変速機)が組み合わされます。
エンジン:最高出力150ps/6000rpm、最大トルク19.1kgf・m/4400rpm。
電気モーター:最高出力143ps、最大トルク27.5kgf・m。
車両重量1640kg。JC08モード燃費、20.6km/l。
パワーユニット
2.4リッター・ツインカムエンジン+電気モーターによるハイブリッドシステムで、前輪を駆動(FF)します。動力性能は3.0リッター自然吸気エンジン並(総合出力190馬力)。街中では必要十分以上のパワーです。
出足はプリウスとよく似たフィールで、スーと滑るように加速。そこからアクセルを踏み込んでいけば、さらに力強さを増します。回生ブレーキの制御もスムーズで、ガソリン車から乗り換えても違和感は少ないです。
マイナーチェンジによって「スポーツモード」を追加。ステアリングやアクセル、トランスミッションの制御プログラムが変更され、活発な走りを見せるようになります。といっても普通に走るだけなら「エコモード」で十分ですが。
トランスミッション
ハイブリッドシステム全体でCVTの働きを担う、電気式無段変速機を装備。トヨタ自慢の優れた制御システムで、スムーズで切れ間の無い加速を行います。電気モーターからエンジンへの切り替わりにも違和感はありません。
乗り心地とハンドリング
前輪にマクファーソン・ストラット式サスペンション、後輪にはダブルウィッシュボーン式サスペンションを装備。前後ともにスタビライザーで強化。
レクサスブランド初のFF車ですが、走りの質感はプレミアムブランドにふさわしい上質なモノです。
乗り心地
装着タイヤは215/55R17。
プリウスやSAIと比較すると足回りが強化され、ひとクラス上の乗り味を実現。しっとりとした上質感を伴う柔らかさが心地良いです。
目地段差や橋脚ジョイントでは路面からの衝撃を柔軟に吸収。不快な振動を車内に伝えません。
高速域での安定性も高く、速度の上昇とともにフラットライドな印象を強めます。
ハンドリング
穏やかな印象を伴う自然なハンドリング。プレミアムセダンにふさわしい、しっとり感と適度な重さがあります。ロードインフォメーションも豊富で、タイヤとステアリングの一体感が強い。ドライバーの狙ったラインを外すこと無く、正確なターンを描きます。
ロールは比較的大きめですが、挙動が自然で予測しやすいため、違和感はありません。
最小回転半径は、5.6mと標準的なレベル。
【試乗評価】のまとめ
「新型 レクサス HS250h バージョンL」は、レクサス初となるハイブリッド専用車。
基本となるプラットフォームは「トヨタ・プリウス」と共通で、「トヨタ・SAI」とはプラットフォームからボディ、パワートレーンの多くを共有する兄弟車です。
といっても「SAI」のメカニズムをそのまま流用しているわけではなく、エンジンからボディ、足回りに渡ってレクサスブレンドにふさわしい作り込みが行われています。
端正な3ボックススタイルとロングホイールベースによって、室内には広々とした空間を確保。駆動用リチウム電池を搭載する割に荷室も広いです。
「使い勝手の良いミドルサイズのハイブリッドカーが欲しいが、プリウスでは小さすぎるし上質感も足りない」とか、「日本車で手頃なサイズのプレミアムセダンを探している」という人には最適なクルマとなります。
中古車市場では
2017年式「レクサス HS250h バージョンL」で400万円前後。2014年式で250万円前後(2018年6月現在)。
新車価格
5,705,000円(消費税込み)