新型 ポルシェ 718 ケイマン(982・3代目)【試乗評価】911には無い、ミッドシップならではの楽しさ

今回の【試乗評価】は「新型 ポルシェ 718 ケイマン S(982・3代目)」。
2013年にフルモデルチェンジしたのが「2代目」で、そのマイナーチェンジバージョンがこの「3代目」という扱いです。

先々代、「ポルシェ・ケイマン(初代・987)」は、先行して販売されていた2ドア・オープンスポーツ「ボクスター(2代目・987)」をベースに仕立てられた2ドア・スポーツクーペ。ボクスターを僅かに上回るパワーが与えられ、その分価格も割高となっていました。

兄貴分であるポルシェ911が、「リアエンジン・リアドライブ(RR)」という特殊なレイアウトとなるのに対して、ケイマンやボクスターはスポーツ走行に有利な「ミッドシップエンジン・リアドライブ(MR)」です。

ポルシェ718ボクスターのフロント

新型 ポルシェ 718 ボクスター(4代目)【評価レビュー】素直で小気味いい走りと、トルクフルなフラット4ターボ [ABA-982H1]

2017年12月30日

そのため、911と同程度のエンジンや足回りを与えると「ケイマンの方が911よりも速い」なんてことになりかねません。といってもそこはマーケティングに長けたポルシェ。911よりも抑えた性能をケイマンやボクスターに与え、ポルシェ内のヒエラルキーをしっかりと守っています。

安いケイマンの方が911よりも速いなんて事になれば、ポルシェの商売もあがったりですからね。そこは抜かりありません。

車のキャラクターも異なり、911はスポーツカーにしては実用性が高く、2+2のシートを持つグランドツアラー的な立ち位置ですが、ケイマンはミッドシップレイアウトと軽量なボディを活かしたより純粋なスポーツカー。「走りを楽しむための車」といった感じが強いです。

※じっくりと読む時間の無い人は、文末の「【試乗評価】のまとめ」をどうぞ↓

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「新型 ポルシェ 718 ケイマン S(982・3代目)」の概要

「新型 ポルシェ 718 ケイマン S(982・3代目)」は、そんな「ポルシェ・ケイマン(初代・987)」の設計思想を受け継ぐキープコンセプトモデル。ポルシェ911(991)と多くの部品を共用するのも初代ケイマンと同じです。

2代目から3代目への代替わりでは、形式番号やモデル名が変更されていますが、実質的にはビッグマイナーチェンジと変わりません。

パワーユニット

搭載されるパワーユニットは、自然吸気の水平対向6気筒エンジンから新開発されたターボチャージャー付き水平対向4気筒エンジンへと変更。いわゆるダウンサイジングターボというやつで、最高出力、最大トルク共に先代よりも向上しています。

同時に「ケイマンの方が動力性能、価格ともにボクスターより上」という不思議なヒエラルキーは解消され、今回の構成は「動力性能は同じで価格はボクスターの方が若干上回る」という分かりやすいモノになりました。反面、「低価格モデルでポルシェのフラット6が味わえる」というお得感は無くなっちゃいましたね。

ライバル

ライバル車種は、「アルファロメオ・4C」や「ロータス・エキシージ」などの軽量ミッドシップスポーツ。

2016年にビッグマイナーチェンジを実施

2016年にビッグマイナーチェンジを実施。エンジンの変更および、内外装のアップデートを行っています。同時にモデル名も「ケイマン」から「718 ケイマン」へと変更。形式番号も変更され、フルモデルチェンジに準じる扱いです。うちのブログでも前期モデルを「2代目」、後期を「3代目」として紹介してます。

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外観

ボディサイズ、全長4379mmX全幅1801mmX全高1295mm。ホイールベース、2475mm。

フロント

ローアンドワイドなフロントノーズに、おにぎり型のヘッドライト。車に興味のない人が見れば911とほとんど同じに見えるかもしれません。

しかし、並べてみると実際の印象は全く異なります。ラグジュアリーで重厚感あふれる「911」に対して、「ケイマン」はスポーティで軽快。「値段なりの差はつけてあるなあ」という印象です。

サイド

短く切り詰められた前後オーバーハング(タイヤからボディ端までの長さ)、ほぼ車体中央に鎮座するキャビン(居住空間)。平っべたい”二等辺三角形”とでも言うんでしょうか、ミッドシップの特性を活かしたバランスの良いシルエットです。

デザインの重心が車体中央にあるため、前後左右、あらゆる方向に瞬時に移動しそうな身軽さがあります。「デザインが機能を表す」ってやつですね。

リア

小さく絞り込まれたキャビンに、大きく張り出したリアフェンダー。特徴的な薄型リアコンビランプ。

クオリティの高さや上質感よりも、若々しさとか軽快感が強調されています。値段を考えるともう少し上質感も欲しいところですが、「コストはスポーツ性能に全振りされている」と考えればこんなもんかな(+ポルシェとしてのブランド料)。

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内装

上質なレザーを貼り付けたインパネにメタル調ガーニッシュ。質感の高い素材で構成されたスポーティな室内。

メーターナセルには、中央にタコメーターを配した3眼メーター。右側は車輌情報などを表示する、”マルチインフォメーションディスプレイ”です。911伝統の5連メーターではありませんが、これはこれでまた違ったカッコよさがあります。

センターコンソールはポルシェ伝統の各種操作スイッチが沢山並ぶタイプで、911との共通性が高いです。その上部、なだらかに連結されるセンタークラスターには、エアコンのコントロールユニット(左右独立温度調整式)や、ナビゲーションなどを表示する「インフォテインメントシステム”PCM”」用ディスプレイがあります。

機能だけを見れば、”ライトウェイトスポーツカー”というよりも、ちょっとした”ラグジュアリーセダン”みたいです。もちろん見た目はしっかり”スポーツ”してるんでそのへんの心配はいりません。

シート

シートはヘッドレスト一体型のセミバケットシート。ガッシリとしたフレームにコシのあるクッション。しなやかな本革表皮を貼り付けています(18段階の調整機構&メモリー機能付き)。

身体にピッタリと合ったシャツを着る感じで、体圧をキレイに分散。腰が変に沈み込んで痛くなるなんてこともありません。スポーツドライビングから長距離ドライブまで快適にこなします。

荷室

キャビン後方、”ミッドシップ”にエンジンを搭載するため、後部のトランク容量はかなり小さいです。ただし、フロントにも小さなラゲッジスペース(150L)が設置されていますので、二人で1泊2日旅行くらいなら余裕でしょう。

静粛性

スポーティなエンジンサウンドが車内に響きます。フラット6を搭載していた「前期モデル」より、やや荒々しい印象で、なんとなく古いスバル製ボクサーエンジンのようです。

エンジンとトランスミッション

2497cc・水平対向4気筒ターボエンジンに、7速AT(PDK)を搭載。
エンジン:最高出力350ps/6500rpm、最大トルク42.8kgf・m/1900-4500rpm。

エンジン

2.5リッターのフラット4をミッドシップに搭載して後輪を駆動(MR)。軽いボディにレスポンスの良いトルクフルなエンジンが搭載され、とにかく走りが俊敏。中高速域だけで無く日常領域でのトルクも十分で、「意外に扱いやすいなあ」という印象です。

ビッグマイナーチェンジに伴って、”自然吸気フラット6”から”ターボチャージャー付きフラット4”に換装されています。フラット6の上質なフィールは失われましたが、その分、重低音を響かせるダイナミックなサウンドが印象的。動力性能も向上しているので、「前期型の方が良かった」なんて思う人は少ないでしょう。

トランスミッション

デュアルクラッチ式トランスミッション「7速PDK」を装備。状況に応じて適切なギアを選択するのは当然として、その変速スピードがとにかく”爆速”。ダイレクトでスムーズ、ケイマンの「俊敏」なキャラクターを構成する重要な要素になっています。

乗り心地とハンドリング

前後ともにマクファーソン・ストラット式サスペンションを装備。

乗り心地

装着タイヤは、前235/40ZR19、後265/40ZR19。

硬い殻を連想させる高剛性ボディに、これまた取り付け剛性の高いサス。あらゆる部分の完成度が高くしっかりと組み付けられているため、不快な歪みがボディに発生しません。

その結果、「硬く引き締まっているのにしなやかで上質」といったスポーツカーとしては極上の乗り味を実現しているんですね。

荒れた路面ではコツコツと衝撃を拾いやすいものの、不快は突き上げはまろやかに減衰。まるで「薄くしなやかな膜で包まれている」なんて錯覚を覚えます。

ハンドリング

重量バランスに優れたミッドシップレイアウトに、ポルシェの正確なハンドリングが組み合わされているので、とにかくステアリングフィールがシャープで俊敏。ドライバーのイメージするラインをそのまま路面に描きます。

リアの接地性とのバランスも良く、コーナリングスピードは圧倒的です。この軽快感というか、車との一体感こそケイマン最大の魅力ですね。

安全装備など

オプションとして、設定された速度で前車に追従する「アクティブクルーズコントロール」や、斜め後方の死角にある車を検知してドアミラー内LEDで警告する「レーンチェンジアシスト」。ブレーキやLSDと連動して、リアタイヤ(左右別)への駆動力を制御。旋回性能や安定性を高める「ポルシェ・トルク・ベクタリング」の設定があります。

【試乗評価】のまとめ

「新型 ポルシェ 718 ケイマン S(982・3代目)」は、ポルシェを代表するスポーツカー「911」の下に位置する2ドア・スポーツクーペ。グランドツアラー的要素のある「911」に対して、「ケイマン」は純粋に走りを楽しむスポーツカーといった趣が強いです。

軽量高剛性ボディにターボチャージャー付き2.5リッター・フラット4、しなやかで強靭な足回りが組み合わされ、俊敏で一体感の高い走りを楽しむことができます。

ラゲッジの狭さ(スポーツカーとしては十分だけど)や2つしかないシートなど、兄貴分の「911」と比較すれば実用性が低いっちゃあ低いです。まあ、そのあたりが気になる人は始めから「ケイマン」に興味を持た無いから問題ありませんけど。

中古車市場では

2017年式「ポルシェ 718 ケイマン S(982・3代目)」で、900万円前後(2018年9月現在)。ポルシェはオプション料が高額で、気軽にホイホイと付けていくとすぐに数百万なんてこともあります。中古車にはそのオプションがドッサリと付いている事が多いので、中古車価格を見る時はそのへんを割り引いてください。

新車価格

9,014,000円(消費税込み)

ABOUTこの記事をかいた人

クルマ好きの40代男性。現在病気のため療養中です。

ブログは暇つぶし&リハビリ。週2で短時間のアルバイトをしていますが、普通の人のように毎日フルタイムで働くことはできません。

ブログの内容はあくまで秋ろーの個人的見解です。実際に車や商品、サービスを購入する際は、自分で試乗や調査をして確かめることをオススメします。

記事更新の時間は、大体、午後11時から12時頃にかけてを予定しています。

修正ばっかりしてると新記事の投稿ができないんで、新記事3に対して修正1くらいの割合でやってます(2019年6月〜)