自動車のシート表皮には、ファブリック(布)や合皮(ビニール)、本革レザーといった素材が使われてます。こういった素材は、ボディの金属やインパネの樹脂なんかに比べると、比較的弱くて痛みやすいです。
そんなこともあって、ちょっとした不注意でタバコの火を落としたり、金属製の鍵やキーホルダーで引っ掻いて傷を付けるなんてことが起こりやすいんです。時には知らない間に子供がイタズラをして、穴を開けるなんてのもあります。
お金に余裕があればズバッと張り替えたいとこですが、懐が寂しい場合はそうもいきません。補修したシートと他のシートとの色合わせにまでこだわるなら、全部のシートを張り替えることになりますし。
こんな時、お金を掛けずに自分でシートを直せればお財布にも優しいですし、シート自体もきれいになります。「今はお金が無いけど、来年ならなんとかなる」というケースなら、それまでの繋ぎとしても使えます。
今回の【DIY】では、そんな時に役立つ「本革、合皮、布シートの補修方法(破れ、傷、焦がし)と補修キットの使い方」について解説していきます。
手順1「シート補修の準備」
それではまず、手始めとして、今回の作業で使う道具や材料を用意します。
- 一番重要なのが、シートを補修するためになくてはならない「シート補修キット(皮・合皮用)」、もしくは「シート補修キット(布・モケット用)」です。
- 次に、補修材を熱で圧着するための「家庭用電気アイロン」と、車内でアイロンを使うための「延長コード」。アイロンは小型の方が使いやすいですが、普通のサイズでも十分使えます。
- さらに、本革や合皮シートの傷を補修する時に使う「合皮補修シート」。布シートの傷には、手芸センターなんかで販売されている「アイロン圧着生地」を用意してください。
- 最後に、電気アイロンの熱からシート自体を守るために「厚手のタオル」もあると便利です。
手順2「布シートをタバコの熱で焦がした場合」
こういったケースは、「シート補修キット(布・モケット用)」を使います。
まず、キットに同梱されている接着剤を同じくキットに入っている7色の毛玉と混ぜ、愛車のシートに近い色に調整してください。
次にこの毛玉をシートの焦げで空いた穴にキレイに乗せ、後は家庭用アイロンの熱で圧着するだけ。上手くできれば、遠目からなら分からない程度の仕上がりになります。
手順3「本皮および合皮シートをタバコの熱で焦がした場合」
この場合は、「シート補修キット(革・合皮用)」を使います。
まず、キットに含まれるドロッとしたビニールの液体を混ぜ、愛車のシートに近い色に調整してください。
後は、これを本革シートや合皮シートの焦げ穴に乗せ、付属のハンダゴテでキレイに圧着します。ただし、ハンダゴテで熱を加えると補修材は多少の変色を起こす事も。予めシート以外の場所でテストしておいた方が無難でしょう。本皮や合皮シートは熱に弱いため、ハンダゴテが直接シートに当たらないよう厚手のタオルなどで保護しておくとさらに安心です。
といってもシートの色を完璧に合わせることはなかなか困難です。キレイな仕上がりを求めるのなら、お金を掛けてプロに依頼するしかありません。
手順4「布シートの傷や穴を補修」
こういったケースでは、身体のよく当たる場所とそれ以外の場所で作業手順が異なります。
身体がほとんど当たらない場所(シートの横や裏など)なら強度は必要ありません。先程の「手順2」で使った補修材を傷の間に詰めて、アイロンで圧着するだけです。
身体が良く当たる場所(座面や背もたれの前面)に傷がある場合は、簡易な補修をするとすぐに補修材が剥離する可能性があります。一度、簡易補修をして剥離してしまった場合は、見栄えを捨てて強度を優先するしかありません。
まず、手芸センターなどで販売されている、裏面にアイロンの熱で圧着するための糊が付いた「圧着生地(シートに近い色)」を購入し、これを傷よりも少し大きめにカットしてアイロンの熱で圧着してください。それでも身体が当たって剥がれそうな場合は、シートの色に近い糸を使って簡単に縫い付けるしかありません。見栄えは悪いですが傷の拡大を防ぐには有効です。
手順5「本革および合皮シートの傷や穴を補修」
本革・合皮シートの場合も、布シートと同様に身体が良く当たる場所とそれ以外の場所で作業手順が異なります。
ほとんど身体が当たらない場所でしたら強度はいりませんので、先程の「手順3」で解説した補修材を詰めてアイロンで圧着するだけです。本皮や合皮シートは熱に弱いため、ハンダゴテが直接シートに当たらないよう厚手のタオルなどで保護しておくと安心です。
ただし、身体の良く当たる場所では、見栄えよりも強度が必要になりますからこの方法は使えません。
こういった場合は、合皮ソファーの補修に使う「合皮補修シート」が便利です。使い方はこの補修シートを傷よりも大きめにカットして傷口に当て、アイロンの熱で圧着するだけ。この時もアイロンの熱でシートを痛めないように、厚手のタオルなどで保護しておいてください。
※作業手順は補修材のメーカーによって異なります。作業に入る前に必ず取扱説明書で手順を確認しておいてください。