可変バルブリフトとは
バルブの開くタイミングについては、「可変バルブタイミング機構」というバルブの開くタイミングを、エンジンの回転によって調整するシステムが開発されています。
今回説明する「可変バルブタイミング機構」はバルブの開くタイミングではなく、エンジンの回転によってバルブの開くリフト量を最適に調整するシステムです。
バルブの開くリフト量とは、言い換えればカムがバルブステムを押して、バルブを押し上げる量ともいえます。
具体的には、バルブの傘の円周×バルブのリフト量から求められる面積が、実際の吸排気バルブの開口部の面積となります。
高回転型のスポーツエンジンが高回転まで回っている時には、このリフト量を大きく取ってやり、バルブの開口部面積を最大にしてやると燃焼効率も最大となります。
逆に低回転時には、バルブのリフト量を絞って、バルブの開口部面積を小さくしてやった方が燃焼効率は良くなります。
高速と低速で切り替えるタイプ
このようにして、可変バルブタイミング機構と同じく、エンジン回転によってバルブのリフト量を適正に変化させる「可変バルブリフト機構」が生み出されました。
しかし、この可変バルブリフト機構は複雑な機構を必要とするため、その後より効率の良い仕組みを考えだそうと、様々なアイディアが試されました。
その様々なアイディアは徐々に収斂していき、結果的に大きく2つのタイプが残る事になります。
そのひとつが、ホンダの「V-TECHエンジン」に代表される、高速側と低速側で2段階にバルブリフト量を切り替えるタイプです。
これはカムシャフトに2つのカムを用意しておき、エンジンの回転に応じて、高速用のカムと低速用のカムを切り替えるという仕組みです。
1989年に発売されたインテグラに搭載された、1.6L直4DOHCエンジンに採用されていました。
低速時と高速時で全く違ったキャラクターを持つ、柔軟性の高いエンジンでした。
連続的にリフト量を可変させるタイプ
もう一つのタイプは、国内で2007年に登場したトヨタのヴォクシーとノアに搭載されていた、「バルブマチック」という仕組みです。
これはドイツのBMWが先行して開発した「バルブトロニック」と同じシステムです。
カムシャフトとロッカーアームの間にカムを挟み込み、カムが回転することでロッカーアームのレバー比を変えてやり、連続的にバルブリフト量を可変するという画期的なシステムです。
ホンダの「V-TECHエンジン」では、高速側と低速側の2つのカムを切り替えるだけでしたが、こちらは連続的にバルブのリフト量を調整する事が可能となっています。