今回は「新型ホンダ S660 α(MT)」を試乗レポートします。
このS660は、2013年に東京モーターショーで参考出品された「HONDA S660 Concept」の市販ヴァージョンです。
Nシリーズがホンダの鈴鹿製作所で製造されているのに対して、S660は関連会社の八千代工業で製造されます。
軽MRオープンスポーツの先駆け「ビート」が生産を停止してから、実に19年目ぶりの軽MRオープンスポーツの復活です。
外観
個性的で、アグレッシブなかっこいいデザインです。
同じMRというパッケージングという事もあり、どことなく全体のスタイリングにも「ビート」の面影が見え隠れします。
ボディ各所に設けられたエアスクープと、直線的なカクカクとしたキャラクターラインが、未来的で軽快なリズム感を生んでいます。
屋根を閉じた状態であっても、キャビンがブラックアウトされている為、オープン時のスポーティな軽快感を失いません。
キャビン後方には二つの大きなバルジが設けられ、斜め後ろから見たスタイリングは小さいながら独特のオーラを感じます。
内装
軽自動車としては上質な質感の内装です。また室内はタイトで囲まれ感が強いです。
アイポイントが極端に低く、座っただけでレーサー気分に浸れます。
正面の計器類は大きくて見やすく、デザインもすっきりしていてかっこいいです。
ドライバーを囲むインパネ類は、最終型スープラを彷彿とさせるコクピット感あふれるものです。
シートは小さめながらしっかりした構造で、体圧が集中するような事もなく快適です。
このシートは長時間ゆったり座っていられるという種類のものではなく、運転という作業に集中するためのものです。
内装の実用性は低く、トランクや書類入れの容量もミニマムで、必要最低限の物入れしかありません、
しかし、こういったある種の割り切りのある車ですから、これは問題にはなりません。
エンジンとミッション
660ccの直3ターボエンジンに、6速MTが組み合わされます。エンジンは運転席後方の車体中央に搭載されます。
このエンジンはNシリーズと共通のエンジンをベースに、新開発のターボチャージャーを組み合わせたものです。
64ps/6000rpmの最高出力と、10.6kg/2600rpmの最大トルクを発生します。
どちらかというと中低速のトルク重視型で、ホンダらしい高回転型エンジンを想像すると肩すかしをくらいます。
数値的にはN-BOXなどよりも、さらに低速に最高トルク発生回転域がふられており、非常に扱いやすいエンジンです。
日常域で気持ち良く走るというのが、この車のコンセプトですから、この設定は妥当なものです。
出力的にも、自分の手の中で意のままに振り回すには必要十分な動力性能です。
エンジンサウンドの質感は平凡で今ひとつですが、乗用車用ユニットを流用しているのでこの辺はしかたありません。
クラッチは適度に重さがあって、シフトもカチカチと決まる気持ちの良いフィールです。
マニュアルトランスミッションによる、ダイレクトでリニアな加速フィールが味わえます。
足回りとハンドリング
軽自動車ながら、前輪にはマクファーソンストラット式サスペンション、後輪にはデュアルリンクストラット式サスペンションが装備されます。
程よい重さのあるステアリングフィールで、じわっとロールしながらスッと鼻先が向きを変えます。
前後重量配分45:55のミッドシップなので、フロントが軽く素直なハンドリングです。
多少早めのスピードでコーナーに侵入しても、姿勢が安定しているため不安感はまったくありません。
がっしりしたボディ剛性と、良く動くしなやかで引き締まったサスペンションのおかげで、硬めながら快適な乗り心地です。
法定速度内であっても体感スピードが高く、常用域で転がしているだけで十分楽しめる車です。
評価のまとめ
このS660は、マツダロードスターよりさらに趣味性が高く、実用性はほとんどありません。
車のキャラクターも、よりゴーカート的な軽快感とダイレクト感のあるもので、その点でもマツダロードスターとは違います。
一見似たもの同士のこの2台ですが、実際に乗ってみればこの両者で迷う人は少ないと思います。
主要諸元と価格
全長X全幅X全高 | 3395mmX1475mmX1180mm
JC08モード燃費 | 21.2km/l
価格 | 2,180,000円(税込み)