今回は「新型 BMW 6シリーズ 640i グランクーペ」を試乗レポート。
2012年に登場した、Lクラスのラグジュアリー・4ドアセダンです。この他に2ドアクーペと、2ドアカブリオレがあります(2ドアクーペは前年の2011年に先行して発売)。
ベースとなるプラットフォーム(基本骨格)には、5シリーズセダンが使われ、低いルーフの採用によって流麗なスタイリングを手に入れています。
先行して発売されている、メルセデスベンツCLSやアウディA7スポーツバックと同じ、俗に言う「4ドアクーペ」というやつですね。
実はこういた背の低いセダンは、20世紀末の日本市場でも一時高い人気を得ていたことがあります。当時は、自動車評論家に散々酷評されていたはずですが、現在欧州市場でこういったスタイルの車が流行しても誰も文句を言う人はいません。勝手なもんです・・・。
※忙しくてあまり時間の無い人は、文末の「試乗評価のまとめ」をどうぞ。
外観
全長5010mmX全幅1895mmX全高1390mmのボディサイズを持ち、ホイールベースは2970mmとなります。
フロント
低くワイドなフロントノーズに、柔らかな線で構成されたひし形のヘッドライト。BMW伝統のキドニー・グリルが小さくレイアウトされ、ワイルドでありながらちょっと上品な雰囲気も称えるフロントフェイス。いわゆる「ちょいワル」な感じです。
サイド
前後に長いボディとロングホイールベース。ルーフの低いキャビンが相まって、伸びやかでスポーティ、「ちょっと妖しい雰囲気を持つ大人のセダン」って感じです。
リア
低いルーフに小さなリアウィンドウ。幅の広いリアエンドが相まって、2ドアクーペのような美しいスタイリングを構成しています。
内装
しっとりとした樹脂に上質なウッドパネル、本革シートのコンビネーションによる高級感あふれる室内空間。センターコンソールを斜めに横断するラインが効果的に室内デザインを統一しています。
センターコンソール中央には、10.2インチの高精度デジタルディスプレイが装備されます。最近流行のフローティングタイプではなく、オーソドックスな埋込み式ですが、視認性や使い勝手に問題はありません。メーターナセル内には、BMW伝統の緻密な二眼メーターが装備されます。
シート
ヒップポイントが低く、やや寝そべった状態となるドライビングポジション。
前席にはしなやかなダコタ・レザーがおごられ、適切なコシとストロークを持つ上質なクッションが組み合わされます。長時間ドライブでも疲れの少ない快適なシートです。
後席は成人男性二人がしっかりと座れるサイズを確保しています。3人掛けシートですが、中央席の足元には出っ張りがあるため実質的には2人用です。ルーフが低いこともあって頭上空間にはやや窮屈感がありますが、足元には適度な余裕が確保されています。
荷室
構成のなサスペンションが装備されるため、サス周りの出っ張りがかなり荷室を圧迫しています。それでも、車体が大きいため荷室容量自体には十分なサイズがあります。家族4人であれば、2泊3日旅行も十分可能です。
静粛性
車内にはたっぷりと遮音材が詰められており、ラグジュアリー4ドアセダンにふさわしい静粛性を持ちます。
エンジンとミッション
2979ccの直列6気筒DOHCターボエンジンに、8速ATが組み合わされます。
エンジンは、320ps/5800rpmの最高出力と、45.9kgf・m/1300-4500rpmの最大トルクを発揮します。
車両重量1860kg。JC08モード燃費は、12.4km/lとなります。
エンジン
3.0Lの6気筒ツインカムターボで後輪を駆動。
1300回転という極低回転から最大トルクを発揮。出足から中高速域までこの重量級ボディをものともせず、グイグイと力強く加速します。
アクセルを踏み込めば鋭いレスポンスでシャープに吹け上がり、淀みのないスムーズなエンジンフィールを披露。ビート感のある6発サウンドを楽しむことができます。
トランスミッション
トルクコンバータ式の8速ATを装備。
たっぷりとした低速トルクを活かして、低いエンジン回転のうちにシフトアップ。スムーズなドライブフィールと、高いエネルギー効率を実現しています。「スポーツ・プラス・モード」を選択すると、ディラルクラッチ・トランスミッションのようなダイレクトな変速フィールになります。
乗り心地とハンドリング
前輪にダブル・ウィッシュボーン式サスペンション、後輪にはインテグラル・アーム式サスペンションを装備。前後ともにスタビライザーで強化されます。
乗り心地
「エコ・プロ・モード」では、快適性を重視した柔らかな乗り味。ちょっと足回りが硬めとなる「スポーツ・モード」でも、適度に引き締まったしなやかな乗り心地を維持します。ただ、最もスポーティな「スポーツ・+・モード」を選択すると、さすがにコツコツとした衝撃が気になります。
ハンドリング
50:50の優れた前後重量バランスに、適度に引き締まったスポーティなサス、がっしりと鍛え上げられた高剛性ボディが相まって、FRらしい素直なハンドリングを実現しています。
コーナーの連続するワインディングに持ち込んでも、大きなボディを感じさせることなく、ヒタヒタと軽やかなフットワークで駆け抜けます。
試乗評価のまとめ
4ドアセダンの実用性と、2ドアクーペのカッコよさを両立した欲張りなラグジュアリー4ドアセダンです。
スポーティで上質な足回りに、スムーズな回転フィールを持つ力強いエンジンが組み合わされ、走りにもラグジュアリーセダンにふさわしい質感があります。
ただし、実用性が高いといってもルーフが低く設定されているため、後席の頭上空間には多少の圧迫感があります。乗り降りのしやすさもセダンと比べれば今ひとつです。
「高級なラグジュアリーセダンを探しているが、クーペのカッコよさも捨てがたい」とか、「多少の不便さを我慢しても、カッコいい車が欲しい」と考えている人にピッタリな一台です。
中古車市場では
2017年式「640i グランクーペ ハイライン」で、740万円前後。2012年式の初期型「640i グランクーペ」で、350万円~430万円(2017年11月現在)。
価格
価格 | 9,860,000円(消費税込み)