(写真は前期モデル)
今回の【試乗評価】は「新型 メルセデス ベンツ Bクラス B180 Sports(W246・2代目)」。
2011年にフルモデルチェンジ(日本市場への導入は2012年)した、中小型クラスの5ドアハッチバックです。セダンやクーペといったボディバリエーションはありません。
今を遡ること13年前。2006年に登場した「初代Bクラス」は、メルセデスベンツ初のFF小型ハッチバック「Aクラス」をベースにボディをひと回り拡大した車です。5ドアハッチバックとミニバンの間を取ったような革新的パッケージングによって、二重フロア構造とそこそこ広い室内を両立してました。二重フロア構造とは、床下に二重底による空間を作ることで、後から燃料電池やバッテリーを搭載するスペースを確保した構造です。
世界市場での人気も高く、全世界で累計70万台以上の販売台数を記録しています。ミニバン好きで、さらにメルセデスベンツ好きでもある日本人にも受け、Aクラス以上の人気商品となってます。
憧れのメルセデスベンツをギリギリ200万円台(B170で2,992,500円)から買えるんですから、人気が出るのも当然でしょうねえ。しかも、コンパクトなんで取り回しが良く、室内もそれなりに広いとなれば文句の付けようが無いです。
ただし、革新的パッケージである「二重フロア構造」の影響で、重心が高く走りが安定しないとか、全高の割には室内が狭い、床が高いので乗り降りがしづらいなんてデメリットがあったのも確かです。
「新型 メルセデス ベンツ Bクラス B180 Sports(W246・2代目)」の概要
2011年にフルモデルチェンジした2代目は、初代のコンセプト「コンパクト、スポーツ、ツアラー」を受け継ぐキープコンセプトモデルです。初代の人気を受け継いで売上も好調。メルセデスベンツの大黒柱「セダン系」に次ぐ主力商品となってます。
スタイリングも初代の雰囲気に近くて、5ドアハッチバックとミニバンの間って感じです。
初代でちょっとばかり不評だった「二重フロア構造」は廃止され、普通のFFプラットフォームに刷新されてます。床が低くなった分、室内が広くなり、走行安定性も向上、乗り降りもしやすいです。全高も1605mmから1540mmへと下げられて、普通の機械式立体駐車場にも入れるようになりました。
さらに、パワートレーンも新世代へと切り替わり、走り、質感、エネルギー効率、安全性能とどれをとっても新世代って感じです。
初代と同じで同世代の「Aクラス」とはプラットフォームを共有してますが、サイズが拡大されてるんで、ひと回り大きな車に見えます。その分、室内も大きく、特に後席はCクラスと比べても余裕があります。
プラットフォームなど
プラットフォーム(車台)は、先代の「二重フロア構造」から普通のFFプラットフォームへと変更されてます。「Aクラスと同じプラットフォームを拡張して使う」という事情は変わりません。
車としての革新性は薄まったけど、使い勝手の良さとか走行性能、質感なんかは向上してます。
ライバルは
ライバルは、「BMW・2シリーズ アクティブツアラー」や「アウディ・A3スポーツバック」なんかの、プレミアムな中小型5ドアハッチバックです。
マイナーチェンジ情報
2015年にマイナーチェンジ。内外装の小変更と新型LEDヘッドライトの採用。新たにオーディオやナビ、ネットなどを統合的に制御する「COMANDOシステム」も搭載されました。
2017年にグレードの見直しを実施。今回の「B180 Sports」はラインナップから外され、「B180」に一本化されてます。
外観
ボディサイズ、全長4440mmX全幅1785mmX全高1545mm。ホイールベース、2700mm。
二重フロア構造の廃止によって全高を低め、先代よりもスポーティな印象を強めています。日本市場への導入にあたっては、スポーツサスを標準で装備。さらに全高を下げることによって、機械式立体駐車場にも対応。日本市場に合わせた心配りが嬉しいです。
フロント
ボリューム感のある短いノーズにD字型LEDヘッドライト。力強いダブルフィン・グリル、スポーティなエアロバンパーを装備。
プレーンな印象の前期型から、複雑な曲線を持ったCクラス風のダイナミックなデザインとなりました。
サイド
短いノーズに厚みのあるキャビン(居住空間)。うねりのあるサイドパネルには、ダイナミックなキャラクターラインが描かれます。
5ドアハッチバックにしては全高が高くノーズも短いため、どちらかと言えばミニバンに近い印象です。マイナーチェンジによる大きな変更点はありません。
リア
四角いリアエンドに、垂直に切り立つリアウィンドウ。分厚いリアコンビランプ。メルセデス・ベンツらしい、威風堂々とした後ろ姿。
マイナーチェンジによってリアコンビランプ内のリフレクター形状を変更。リアバンパーまわりのディティールも丁寧に見直され、上質感を向上させています。
内装
決めの細かい樹脂にメタリックパーツ(シルバー)。ほどよい若々しさを感じさせる上質な室内です。室内をLEDライトで彩る「アンビエントライト」は12色に増やされています。
メーターナセルには、シルバーリングで縁取られた大型二眼メーター。中央にはインフォメーションディスプレイが装備され、走行距離や燃費、シフトポジションなどを表示します。
センタークラスター最上段には、最新トレンドのフローティングディスプレイ(8インチ)を配置。ナビゲーション情報やオーディオ・ビジュアル情報、インターネット検索などを表示します。中央にはCOMANDシステムのコントロールユニット。最下段にはフルオートエアコン。ダイヤル式で手探りによる操作もしやすい。
革新的な二重フロア構造をやめて、ごく普通のFFパッケージを採用。ヒップポイントが下がり自然なドライビングポジションが取れるようになりました。2代目Bクラスにおける最大の改良ポイントです。
同じプラットフォームを使うAクラスよりボディが拡大されているため、室内には十分な余裕があります。リアシート周りの空間は、より上級のCクラスを上回り、Eクラスに匹敵するレベル。ショーファードリブン(運転手付き)として使うことも可能です。
先代よりも高くなった室内高と低められたフロア高によって、後席への乗降性が改善されています。
シート
フロントシートは、厚みのあるクッションに柔軟な表皮、適度なサイドサポートを備える快適なシート。適切なドライビングポジションで座れば、シート全体で均一に体を支えてくれるため疲れにくいです。
リアシートは、座面の長さ、背もたれの高さ共に適正で、体を支える機能が高い。硬めのクッションに柔軟な表皮が組み合わされ、座り心地も上々。ボディが拡大された事によって、足元、頭上空間にはたっぷりとしたスペースがあります。アップライトな姿勢で座るポジションと相まって、体感する余裕はCクラス以上です。
荷室
垂直に切り立ったテールゲートとボディサイズの拡大によって、荷室スペースも大きくなりました(488L)。スクウェアな荷室形状と相まって、ちょっとしたミニバンよりも使い勝手が良いです。
背もたれを倒すことによってさらに荷室スペースを拡大(1547L)。ステーションワゴンのような使い方もできます。
静粛性
車内にはたっぷりと遮音材と吸音材が施され、プレミアムブランドにふさわしい静粛性を確保。風切り音やロードノイズもよく抑えられています。ただし、アクセルを強めに踏み込むと、若干エンジンノイズが高まります。メルセデスベンツといってもBクラスはコンパクトカーですので、このあたりは仕方ありません。
エンジンとミッション
1595cc・直列4気筒DOHCターボエンジンに、7速DCTが組み合わされます。
エンジンは、最高出力122ps/5000rpm、最大トルク20.4kgf・m/1250-4000rpmを発揮。
JC08モード燃費16.7km/l。車重1480kg。
エンジン
1.6Lツインカムターボで前輪を駆動(FF)。アクセルに対するレスポンスが良く、必要なトルクを得やすい。低速からフラットなトルクを発生する扱いやすいエンジンです。1.6Lでありながら2.0L自然吸気エンジンなみのパワー感があります。
高回転域側の吹け上がりも素晴らしく、4000回転以上でさらに鋭さを増す印象です。
急な坂道や合流ポイントでもモタモタとすることはありません。流れをリードしてキビキビと走り抜けます。
トランスミッション
デュアルクラッチ式7速DCT(湿式)を装備。
クラッチを滑らし気味に制御することで、DCTならではのギクシャク感を最小限に押さえています。その分、ダイレクト感は薄まりましたが、スムーズで段付き感の無い変速を行います。プレミアムコンパクトにふさわしい上質なフィールです。
足回りとハンドリング
前輪にマクファーソン・ストラット式サスペンション、後輪にマルチリンク式サスペンションを装備。
ハンドリング
軽やかなステアリングフィールを伴って、ドライバーのイメージしたラインを正確に描きます。先代の鷹揚なフィールは薄まりましたが、スポーツカーのような鋭さもありません。安定感と軽快感がバランスした、穏やかで自然なハンドリングです。
二重フロア構造の廃止によって全高が低くなったとはいえ、コンパクトカーとしては依然高め。といっても、踏ん張りの良いワイドボディによって不自然なロールは発生しません。コーナーの連続するワインディングでも、上屋を揺すられることなく安定して走り抜けます。
最小回転半径、5.2m。狭い路地でも比較的簡単に切り返す事ができます。
乗り心地
装着タイヤは225/40R18。
ランフラットタイヤとスポーツサスの装備によって、乗り味は若干硬め。低速域ではコツコツと路面の衝撃を拾いがちですが、硬く引き締まったボディとガッチリと取り付けられたサスによって、不快な衝撃はキレイに遮断されます。重厚感を伴った上質なフィールが気持ちいいです。
高速域では高い路面追従性によってフラットな姿勢を維持。安定した姿勢でまっすぐに直進します。
その他
先進安全技術は、レーダー型衝突警告システム「CPA」にカメラ機能(単眼)を追加した「CPA+」を標準装備。ステアリングアシスト機能はありません。
衝突を予測して回避もしくは被害を軽減する「アクティブブレーキアシスト」や、ドライバーの注意力低下を検知して警告する「アテンションアシスト」が標準で装備されます。
「レーダーセーフティパッケージ」をオプションで装備すれば、斜め後方死角の車両を検知して危険を知らせる「ブラインドスポットアシスト」や、前車との最適な車間を維持して追従する「ディスタンスパイロット・ディストロニック」、車線内をステアリングアシストによって自動的に維持する「レーンキーピングアシスト」などが追加されます。
【試乗評価】のまとめ
「新型 メルセデス ベンツ Bクラス B180 Sports(2代目)」は、小型5ドアハッチバックでありながら、大きな居住空間と荷室によってミニバンに近いスタイリングを持つ使い勝手の良い車です。
搭載される1.6Lツインカムターボは、低速からたっぷりとしたトルクを発生する扱いやすいエンジン。ランフラットタイヤとスポーツサスによる乗り心地は、若干硬めではあるものの衝撃の角はしっかりと丸められており、メルセデスベンツらしい重厚感を伴います。
二重フロア形状の廃止によって革新性は薄まりましたが、乗り降りのしやすさや自然なドライビングポジション、低重心化による素直なハンドリング、スタリングの良さなど多くの部分に好ましい影響を与えています。
「300万円台で憧れのメルセデスベンツを所有したい」とか、「家族のために広い室内の車を探しているが、安全性や上質感も大切だ」といった人に最適な車です。
中古車市場では
2017年式「メルセデス ベンツ Bクラス B180 Sports」で300万円前後。最初の車検を終えたばかりの2014年式なら180万円前後(2018年6月現在)。
新車価格
3,950,000円(税込み)