プリウスは1997年に登場した「量産車初のハイブリッドカー」で、その後、世界中にこの素晴らしいシステムを広めた功労者でもあります。
プリウスのハイブリッドシステムは、ガソリンエンジンに電気モーター、大容量の駆動用バッテリーを組み合わせた「シリーズ・パラレル方式」を採用。普通のガソリン車と比較すると圧倒的に燃費が良く、小さく軽いコンパクトカーでさえプリウスの燃費には勝てないくらいです。
そんなプリウスも、初代が登場した時は「4ドアセダンタイプ」だけだったんですが、その後、3代目あたりからファミリーというか派生車種が続々と増えて、今では「あれ、こんなプリウスもあるの?」なんて状況になってます。
普通の「プリウス」に加えて、プラグインハイブリッドシステムを搭載した「プリウスPHV」、ステーションワゴンの「プリウスα」、海外では「プリウスC」と呼ばれるコンパクトカーの「アクア」まで含めると4種類もあります。
ということで今回は、そんなプリウスの種類について解説していきます。
普通のプリウス
ここで普通のプリウスと呼ぶのは、1997年に登場した「初代プリウス」の系譜を次ぐ、中小型の5ドアハッチバック(初代は4ドアセダン)のことです。その後、2代目、3代目とモデルチェンジして、現在発売されているモデルで4代目となります。
誰が見ても「プリウス」だと分かる形
スタイリングは、プリウス伝統の「トライアングル・シルエット(横から見た形が三角形)」&「ワンモーションフォルム」を継承。誰がどう見たって「あっ!プリウスだ」って形になってます。小学生でもすぐに分かります。
ワンモーションフォルムというのは、一筆書きで一気に描いたような形のことで、鼻先のフロントノーズからフロントウィンドウ、ルーフ、リアエンドにかけてなだらかな曲線で連続的に繋がってます。
4代目のモデルチェンジにあたって新開発された「TNGA」プラットフォームが採用され、ルーフが随分低くなりました。ということで、今までのプリウスと違ってスポーティな感じが強いです。
ハイブリッドシステムは、「シリーズ・パラレル方式」を採用
プリウスの心臓である「パワーユニット」には、1.8リッターのツインカムターボと電気モーターを組み合わせたハイブリッドシステムを使ってます。トランスミッションはハイブリッドシステム全体でCVTのような働きを担う「電気式CVT」を採用。
方式は「シリーズ・パラレル」なんで、電気モーターとエンジンを巧みに使い分けて駆動します。プラネタリーギアを介して電気モーターからの動力と、ガソリンエンジンからの動力を自由に組み合わせることができます。その分構造は複雑になりますが、エネルギー効率に優れるというメリットがデカイです。
室内は、2列シート5人乗り
室内は、2列シート5人乗りで、これにハッチバックの荷室が付きます。
ルーフが低い割に、室内の広さはまずまず。大人5人は流石にきついですが、大人4人なら十分座れます。荷室はスクウェア(四角い)で開口部も広いため、4人家族なら2泊3日旅行も十分可能です。荷室容量としても502リッターあるんで、同クラスのセダンと比較しても遜色はありません。
プリウスPHV
次に紹介するのは、プラグイン・ハイブリッドシステムを搭載した「プリウスPHV」です。初めはリース仕様のみとして2011年に登場し、翌年の2012年から一般にも販売されてます。
プリウスよりプリウスらしいスタイリング
「初代PHV」は3代目プリウスの完全な派生車種だったんで、見た目も普通のプリウスとほとんどかわりません。
2017年には「4代目プリウス」をベースにした「2代目プリウスPHV」にモデルチェンジ。初代と違って専用のデザインが与えられ、尖ったデザインの「4代目プリウス」に対して、有機的で優しい印象のデザインになってます。それでいてプリウスらしい近未来感も表現されているんで、「4代目プリウス」よりプリウスらしいです。
実際に市場からの受けも良くて、「4代目プリウスのデザインが気に入らないんで、ちょっと高いけどPHVにした」なんて人もいました(その後、4代目プリウスのデザインも、マイナーチェンジでアクが取れて優しい感じになってます)。
最大の違いはハイブリッドシステム
普通のプリウスと「PHV」最大の違いは、心臓部であるパワーユニットです。普通のプリウスが「シリーズ・パラレル方式」のハイブリッドシステムを搭載するのに対して、「PHV」は「シリーズ・パラレル方式」をベースにした「プラグイン・ハイブリッドシステム」を搭載してます。
「プラグイン・ハイブリッドシステム」というのは、電気モーターとガソリンエンジンを併用して走るハイブリッドシステムに、外部からの充電機能を加えたシステムのことです。
普通のプリウスが電気モーターを使っているといっても、その動力源となる電気を生み出しているのはガソリンエンジンです。電気そのものを外部から充電することはできません。これに対して「プラグイン・ハイブリッドシステム」には、外部からの充電機能があるんで、自宅や外出先にある「充電ステーション」が使えます。
プリウスより大容量のリチウムイオン電池を搭載
電気を蓄えるバッテリーもプリウスより大きくて、大容量(8.8kWh)のリチウムイオン電池を搭載してます。そのおかげで、フルに充電されていれば68.2km(カタログ値)を電気だけで走ることができます。僕が若い頃は片道50kmを往復していましたが、まあ、そんな人はほとんでいません。普通に考えて68.2kmもあれば十分往復に使える数値です。ということで、通勤通学に使うだけなら、電気自動車のような運用も可能でしょうねえ。
プリウスと違って、発電用のジェネレーターを駆動モーターとして使うという機能もあります。つまり通常の駆動用モーターと合わせて2つの電気モーターで走るわけです。EVモードのみに限られますが、走りはかなりパワフルでスムーズな感じです。
さらにメーカーオプションの「ソーラー充電システム」をルーフに装着すれば、最大6.1km/日、平均2.9km/日まで、太陽光で発電した電気だけで走れます。といってもこれはカタログ値なんで、実際は2kmくらいでしょうか。近所のコンビニに行く程度の発電量ですが、電気自動車よりさらに先の「ゼロ・エミッション社会」をちょっとだけ味わえます。
プリウスα
「プリウスα」は2011年、3代目プリウスの時に登場した「ステーションワゴン版」のプリウスです。その後、プリウス本体は4代目にモデルチェンジしてますが、「プリウスα」は今でもそのまま販売されてます。
基本となるプラットフォームは、3代目プリウスと同じ「新MCプラットフォーム」。ハイブリッドシステムも同じです。
ステーションワゴン仕様のプリウス
最大の違いはスタイリングで、「プリウス」がワンモーションフォルムの5ドアハッチバックなのに対して、「プリウスα」はワンモーションフォルムをベースにルーフ(屋根)をリアエンドまで延長したステーションワゴンになってます。正確にはちょっと寸詰まり感があるんで、ミニバンとステーションワゴンの間ってとこでしょうか。
プリウスの特徴を散りばめたプリウスらしいデザインですが、実際にはボディパネルからインパネまでα専用のデザインです。
ボディがひと回り拡大
ボディサイズもひと回り大きくて、ホイールベースで+50mm。全長で+150mm、全幅が+30mm、全高も+85mm拡大されてます。
そのおかげで室内は広々、ステーションワゴンなんで荷室も大きいです。長いホイールベースと全長を活かして、3列7人乗りシートが選べるのも「プリウスα」の特徴です。もちろん、ステーションワゴンぽく使いたい人のために、2列5人乗りシートもあります。一般のユーザーからはステーションワゴンとして見られているようで、販売台数としては「2列5人乗りシート」の方が多いです。
乗り心地が良い
価格はベーシックグレードの「S」で、2,622,437円。4代目プリウスのベーシックグレード「E」が2,518,560円なんで、「α」の方が10万以上高いです。ベースとなった3代目プリウスと比較すると、3代目のベーシックグレード「L」が2,232,000円なんで、「α」の方が30万円近くも高いことになります。
30万円も高いということは、ボディバリエーションによって価格が変えてあるというよりも、「プリウスα」の方が若干上質な作りになっているということです。
その証拠に、室内の作りは上質だし、乗り心地にも適度な重厚感があります。ホイールベースやトレッドの拡大、車重の増加なんかもあって、とにかく乗り心地が良いです。遮音性も優れていて、ロードノイズや風切り音も気になりません。
このあたりの上質感とか乗り心地の良さも、「2代目プリウス」にはない「プリウスα」だけの特徴です。
ハイブリッドシステム
プリウスαのパワーユニットは、1.8リッターツインカムターボに電気モーター、電気式CVTを組み合わせた「シリーズ・パラレル方式」を使ってます。基本的にはベースとなった2代目プリウスと同じですが、「α」の方が車重が重いため若干セッティングが違います。
低速からフラットなトルクを発生するんで、扱いやすいです。出力自体も必要十分で、1.5t近くのボディをスムーズに加速させます。
アクア
アクアは2011年に登場した、コンパクトカークラスの5ドアハッチバックです。海外では「プリウスC」として販売されてるんで、今回はプリウスのエントリーモデルとして紹介します。
一応ハイブリッドシステムは古いプリウス由来のものをベースにしていますが、ボディパネルやプラットフォーム、内装デザインはプリウスと全然関係無い別ものです。
2代目プリウス由来のハイブリッドシステム
アクアはコンパクトカーなんで、プリウス用の大きなシステムが積めません。ということで、2代目プリウスに搭載されていた「THS-Ⅱ」をベースに小型軽量化したシステムを改良して使ってます。1.5リッターツインカムエンジンに電気モーターを組み合わせており、トランスミッションはプリウスと同じ「電気式無段変速機」です。
プラットフォーム(車台)はヴィッツと同じ
基本となるプラットフォーム(車台)は、ヴィッツと同じ「Bプラットフォーム」。その後、ヴィッツにもハイブリッド仕様が出たんで、結果的にこの二車は非常に近い関係になってます。
プリウスっぽいスタイリング
スタイリングは、プリウスを意識した「ワンモーションフォルム」に「トライアングルシルエット」の組み合わせ。ルーフがボディ後端までまっすぐに延長され、そこでスパッとカットされてるんで、普通のプリウスよりは「プリウスα」に近いです。
家族用に大きな「プリウスα」を買って、その横にセカンドカーとして小さな「アクア」を並べれば、ぜったい面白い感じになると思います。
室内は、ヴィッツよりほんの少し狭い
大きなリチウムイオン電池をリアシートの下に入れてるんで、後席、荷室ともに十分な広さがあります。ただし、ルーフがヴィッツより低いんで、リアシートの頭上空間に余裕はありません。