今回の試乗レポートは「プジョー 106 S16」。
1991年から2003年に渡って製造販売されていた、コンパクトな3ドアハッチバックです。欧州市場では5ドア・ハッチバックも販売されています。当時のプジョーでは、一番下の価格帯に位置するエントリーモデルです。
日本市場では、1995年に「XSi」が限定車として販売され、翌1996年からホットバージョンの「S16」がカタログモデルとして導入されています。
欧州市場ではごく普通の1.0Lモデルや1.2Lモデルも販売されていますが、日本市場では他メーカーのモデルと差別化するため、このスポーティな「S16」のみが販売されます。この「S16」は、ホットハッチとして一世を風靡した名車「205GTi」の実質的な後継車種にあたります。
また、同時期に販売されていた「シトロエン・サクソ(シャンソン)」とは、プラットフォーム(基本骨格)を共有する兄弟車の関係にあります。
外観
全長3690mmX全幅1620mmX全高1370mmのボディサイズを持ち、ホイールベースは2385mmとなります。
スポーティなかっこよさとかわいらしさが上手くバランスしたキュートな外観。
フロント
軽快感あふれる直線で構成されたフロントノーズに、ちょっとつり上がった角型ヘッドライトが装備されます。キビキビとした軽快感を感じさせる、スポーティなフロントフェイスです。
サイド
サイドから見ると、名車「205GTi」と非常によく似ています。短いホイールベースに前後ギリギリまで切り詰められたオーバーハング(タイヤからボディ端までの長さ)。傾斜のキツイCピラーが相まって、スポーティでキビキビした雰囲気を見事に表現しています。
リア
ヒップアップされたかわいらしいリアエンドに、ヘッドライトのモチーフを繰り返すリアコンビランプが装備され、キュートな後ろ姿を構成しています。いつまでの眺めていたくなる完成度の高いデザインです。全体から漂うキビキビとした軽快感によって、いますぐにでも運転したくなる衝動を抑えきれません。
内装
黒一色で統一されたスポーティなインテリア。
シート
フロントには、ハーフレザーによるがっちりとしたシートが装備されます。ややサイズが小ぶりなものの、適度な硬さとコシのあるクッションが詰め込まれ、長距離ドライブでも快適にこなすことができます。
リアシートにもがちりとした厚みのあるシートが装備されます。ただし、足元、頭上空間ともに窮屈で、足先をフロントシートの下に入れることでなんとか座るといった印象です。
荷室
コンパクトなボディの割に、荷室にはそこそこの空間が確保されています。4人家族であれば、ぎりぎり2泊3日旅行も可能です。リアゲートの開口部が大きく開くため、嵩張る荷物の出し入れも楽々です。
静粛性
ツインカムエンジンのスポーティなサウンドが気持ちよく車内に響きます。
エンジンとミッション
1587ccの直列4気筒DOHCエンジンに、5速MTが組み合わされます。
エンジンは、118ps/6600rpmの最高出力と、14.5kgf・m/5200rpmの最大トルクを発揮します。
車両重量960kg。10モード/10・15モード燃費は、–km/lとなります。
エンジン
1.6Lのツインカムエンジンで前輪を駆動。高回転型エンジンであるため、低速トルクが若干不足しています。しかし、マニュアル・トランスミッションを使ってしっかりとエンジンを回せば、どこまでも吹け上がるような気持ちの良いフィールと、湧き上がるパワーでキビキビとスポーティに走ることができます。
絶対的なパワーではシビックタイプRに及びませんが、走りの楽しさや味わいでは甲乙つけがたいものがあります。
トランスミッション
剛性感のあるスポーティなトランスミッション。ややシフトストロークが大きいものの、ゲートにシフトを入れる時の手応えが素晴らしく、気持ちよく操作することができます。
足回りとハンドリング
前輪にマクファーソン・ストラット式サスペンション、後輪にはトレーリングアーム式サスペンションが装備されます。
足回り
適度に引き締まったスポーティな足回り。目地段差ではコツコツと衝撃を拾いますが、全体のバランスがスポーティにまとめられているため、不快な印象はありません。
ハンドリング
ステアリングセンターから、僅かな操舵に対しても正確に反応して自然にノーズの向きを変えます。コーナーの連続するワインディングに持ち込めば、ヒラヒラとした身のこなしで軽快なハンドリングを楽しむことができます。
ボディの割にステアリングの切れ角が小さく、狭い路地での切り返しに苦労します。これはLクラスセダン並の最小回転半径ですね。
評価のまとめ
コンパクトでキュートなスタイリングに、スポーティなパワーユニットと軽快感あふれるハンドリングが与えられた走りの楽しい車です。
プジョーのエントリーカーとして設計されているため、室内はやや狭いのですが、大人4人がなんとか座れるスペースは確保されています。
何よりも運転が好きで「電子デバイス満載の最近の車はツマラナイ」と感じている人や、「運転が楽しくおしゃれな欧州車が欲しい」とか、「普段は通勤や通学に使い、週末は軽くワインディングも楽しみたい」と考えている人に最適な車です。
販売終了からすでに15年以上が過ぎていますが、こういったモデルには根強い人気が集まるため、状態の良い最終モデルであれば、100万円前後の高値が付いています(2017年10月現在)。
価格
新車当時の価格 | 2,250,000円