車を運転する機会が少ないサンデードライバーや初心者の中には、その経験不足から「車の幅を感覚的に捉えるのが苦手」という人が結構多いです。
こういった感覚のことを「車両感覚」なんて呼びますが、「秋ろーの自動車ガイド」ではそんな「車両感覚」の掴み方とか練習方法についてこれまで何度か解説しています。
以前の記事については、以下のリストからどうぞ↓
今回は以前の練習方法をふまえ、さらに一歩踏み込んで新しい小技や練習方法について6つほど紹介します。これまでと違って今回はあくまでも「小技」なんで、それほど難しいものはありません。気軽にチャレンジしてみてください。
狭い路地や小さな駐車場の多い日本では、車両感覚の良さが運転のしやすさに直結してます。この中から気に入った小技をいくつか選んで、便利に使ってもらえらば嬉しいです。
実際の「駐車位置」と自分の「車両感覚」との「ズレ」をこまめに修正する
車両感覚を磨くには、以前紹介した練習方法をふまえ、実際の「駐車位置」と自分の中の「車両感覚」とのズレをこまめに確認して微調整していくことも大切です。
例えばスーパーの駐車場に車を止めるケース。こんな時も、ただぼーっと駐車するんじゃなくて、「駐車スペースのちょうど真ん中に車を停める」とか、「目安の白線から10cm程度の余裕を空けて駐車する」なんて具体的な目標をもって停車してください。
あとは車を目標の場所に停車してシフトを「P」に入れ、パーキングブレーキを引き、車を降りて自分の車が停車している位置を確認します。慣れないうちは頭の中のイメージと実際の位置が大きくズレているんで驚くかもしれません。といっても心配は無用。「前回は左に5cmズレていたんで、今回はその分微調整して右に寄せてみよう」なんて修正をしていくうちに、段々と正確な位置に停車できるようになってきます。
ただ、中には「人目の多い場所でいちいち車を降りて確認するなんて、ド素人みたいでかっこ悪い」と思う人もいるかもしれませんねえ。しかしこれは大きな勘違いで、熟練のベテランドライバーほどこういった地道な練習を長年に渡って繰り返しているもんなんです。「初心者の頃からビシッと正確な場所に駐車できる」なんて人はそうそういませんから。
まあ、それでも恥ずかしいという人は、「荷物を降ろしながらチラッと見る」とか「人目の無い時だけ確認する」って感じでも十分です。まったく確認しないよりは随分マシでしょう。小さな努力を何年も繰り返せば、その小さな違いが大きな結果となってあなたに直接返ってくるからです。
前車との適切な車間距離をつかむ
次は、信号待ちとかで「前車のすぐ後に停車する時に使う車両感覚」です。こういったケースでは、前車のバンパーやリアコンビランプ、タイヤの位置なんかが一応の目安となります。
といってもこのよう目安は、車の形やシートポジション、自分の体型によっても微妙に変わるもんですから、いくつかのパターンに分けて自分なりに記憶しておく必要があるんです。
例えば、あなたがセダンやクーペ、コンパクトカーといった背の低い車に乗っているケース。こんな時は、自車のボンネット上端(運転席から見た)と前車のタイヤ下端、もしくはリアバンパー下端が重なる位置が適正な車間距離となります。後はこの目安を基本に、自分の体型や車の形に微調整しておいてください(ぴったり重なる位置では近すぎるから、もう少し余裕を空けるとか)。
ただし、目安となる位置関係を覚えても、車に乗る度に「シートポジション」とか「ドライビングポジション」を変えていたんでは意味がありません(目線が変わることで位置関係も変わるから)。シートポジションとそれに伴う目線は、毎回同じ位置にあることが大前提です。
目線を上げて車両感覚をつかみやすくする
車両感覚が掴みにくくなる原因のひとつとしては、「目線(アイポイント)が低すぎる」というものがあります。
この場合の目線とは「ドライバーの目の位置」という意味ですが、これが低いとボディの端が直接見えないんで、ボディの大きさが分かりづらいんです。ということもあって、周りの障害物との位置関係も掴めません。
逆に目線が高い場合は、ボディの端を上から見下ろすようになるため、ボディと周りの障害物との位置関係が手に取るように分かります。背の高いSUVに割と運転しやすい車が多いのは、こういったことも関係してるんです。
目線の低さを改善する「シートリフター」
といっても、急に高額なSUVに買い換えられる人はそうそういません。コンパクトカーから大柄なSUVに替えれば、使い道が合わなくなることもあります。
そんな時に便利なのが、座面の高さを調整するための「シートリフター」。この便利な装置は、はじめからシートの調整機構として装備されていることが多いです。気になる人は、グローブボックスに入っている「取扱説明書」や「メーカーの公式サイト」を見るか、「普段付き合いのあるディーラー」なんかで聞いてみてください。
調整方法はメーカーによってまちまちですが、レバー式とか、ダイヤル式、電動スイッチになっていることが多いです。これを調整することで、自分の体型と車の形に合わせた最適な目線の高さに設定できます。目線が低くて「車両感覚が掴みづらいなあ」と感じていた人は、これを調整して最適な高さに合わせましょう。
ただし、目線を上げるといっても、ペダル類に足が届かなくなるようではかえって危険です。「座高が低く、足も短い」なんて小柄な人の場合は、そのあたりのさじ加減も見ながら調整する必要があります。
ドアミラーを使った車両感覚のつかみ方
車の運転中は、安全確認のために何度かドアミラーを確認します。
この時、余裕があれば、「白線がミラーのどの位置に写っているか」についても確認してみましょう。ドアミラーには車のボディと白線が一緒に写り込んでいますから、今、自分の車がどのくらい白線に寄っているか大体分かります。
普段の練習で車両感覚がしっかりと身についていれば、車は予想通りの位置にあるはずです。そうで無い場合は、それなりの位置にズレているかもしれません。要するにこれは、「車両感覚」についての「小テスト」を毎日繰り返しているのと同じことなんです。
こういった地道なトライ&エラーを繰り返していけば、あなたの車両感覚はドンドン磨かれていきます。結果的に、どんな時でも正確な場所にピタリと車を寄せられる、いわゆる「ベテランドライバー」が誕生するって寸法です。
タイヤの正確な位置を把握する
狭い場所で対向車とすれ違う時は、路肩ギリギリに車を寄せる超精密な「車両感覚」がいります。タイヤの位置を数センチ読み違えるだけで、側溝にタイヤを落としたり、最悪の場合は「車ごと谷底へ真っ逆さま」なんてこともあるからです。
超精密な「車両感覚」を身につける方法として、ひとつに「道路の白線を利用する」ってのがあります。といっても普通の白線じゃなくて、線の上をタイヤが通過すると「ガー」という異音を発生する特殊な白線のことです。この白線の表面には、横縞で僅かな凸凹が連続的に付けてあって、この上をタイヤが通過することで共鳴音を発生する仕組です。
この白線を見つけたら、周りに他の車がいないことを確かめて、ジワジワと白線にタイヤを乗せていきましょう。白線にタイヤが乗ると異音を発生しますから、そのタイミングと自分の車両感覚のズレによって、車両感覚を調整していくというわけです。
ただし、危ないんで「センターラインや見通しの悪い場所、人とか自転車、車のいる場所」ではやらないでください。
正確な「内輪差」のつかみ方
「車両感覚」の小技シリーズ。最後は「内輪差のつかみ方」についてです。
「内輪差」とは、車の進路を大きく曲げる時、前輪の通るラインと後輪が通るラインがズレる現象で、後輪のほうがより内側を通ります。ホイールベースの長い車ほどこのズレが大きく、交差点で自転車を巻き込む大型トラックの事故がよく問題になってます。
内輪差の出方や大きさについては、同じ乗用車であっても、その車両の特性によって微妙な違いがあります。ということで、車に不慣れな初心者だけじゃなくて、新しい車を購入したばかりの人もチェックしてください。
駐車場を使って「内輪差」をチェックする
内輪差をチェックするには、人や車の少ない空いた駐車場が便利です。もしくは、擬似的に「L字型の通路」が再現できる場所、土の上に通路を描くとか、白っぽい小さな石を並べるとかでも構いません。
左折する時の「内輪差」をチェックするケースで説明すると、まず、駐車場の通路を「本線」、駐車スペースを「脇道」と想定します。
次に、通路の左端ギリギリをゆっくりと徐行で走りながら、目的の駐車スペースへと接近してください。目的の駐車スペースに到着したら、駐車スペースの左ラインギリギリを左前輪が通るようにゆっくりと左折していきます。つまり、頭から駐車スペースへと進入するわけです。
車全体の2/3くらいが駐車スペースに入ったら、一旦、車を停めて車外に出ます(この時、シフトを「P」に入れて「パーキングブレーキ」も忘れずに)。車外に出たら、車の左後輪がどの位置にあるかチェックしましょう。左前輪が通ったラインより大分内側にあるはずです。この前輪が通ったラインと後輪が通ろうとしているラインの差が、あなたの愛車の「内輪差」です。しっかりと覚えて、いつでも正確な「内輪差」がイメージできるようにしてください。
正確な内輪差が頭にあれば、左折や右折する時に側溝にタイヤを落としたり、縁石にタイヤをヒットするなんてトラブルは無くなります。「反対方向に大きく膨らんでから曲がる」、なんて不格好で危ない運転をする必要もありません。