フレアナットレンチは、通常のメガネレンチと異なり、先端部分にパイプを通すための隙間があります。そのため、実際の形状はスパナとメガネレンチのちょうど中間のような形です(メガネレンチの先端が「O」だとすれば、フレアナットレンチの先端は「C」)。
スパナよりも先端部分の強度が高く、また先端にはパイプを通すための隙間があるため、クラッチホースやブレーキホースのボルトを緩めたり、締め付けたりする作業に向いています。
フレアナットレンチの概要
ブレーキホースやクラッチホースに使われているボルトは、やわらかい金属製である事が多く、普通のスパナで作業すると簡単にボルトをなめて(ボルトの山を壊す)しまいます。通常のスパナは先端の開きが大きく、2つの面でしかボルトを捉える事が出来ないからです。
これに対して「フレアナットレンチ」は、メガネレンチに近い特殊な先端形状によって4つの面でボルトを捉えます。
つまり、ボルトに掛かる力が2つから4つに分散されるため、それぞれのポイントに掛かる力が小さくなり、「ボルトをなめる事無く」安定した作業ができるようになるのです。
イチネンTASCO TA733TA-1 フレアナットレンチ17×22
クローフットレンチ
ただし、「フレアナットレンチ」にも欠点があります。持ち手(グリップ)が長いため、エンジンルームなど狭い場所での作業が難しいのです。そこで、そんな場所でも作業が出来るようにと「クローフットレンチ」と呼ばれるレンチが開発されています。
「クローフットレンチ」は、フレアナットレンチの先端(C型の部分)にごく小さな持ち手がついた工具で、狭い場所でも比較的簡単にボルトを回すことができます。ただ、持ち手が小さいので、フレアナットレンチのようにボルトに大きな力を掛ける事はできません。
フレアナットレンチの使い方
ブレーキパイプのボルトを回す場合は、まず、フレアナットレンチの先端(C型の部分)、先の開いた場所にブレーキホースを通します。
次にボルトとフレアナットレンチの先端を噛み合わせますが、ボルトが柔らかい金属で出来ている場合はボルトの山をなめやすくなります。しっかりとレンチの奥までボルトをはめ込み、ズレの無いようにしてください。
後はゆっくりとフレアナットレンチに力を掛けボルトを緩めていきます。しかし、ボルトの周りには色々な部品が複雑にレイアウトされているので、そのまま一気に緩め切る事は難しいでしょう。
その場合はボルト周りの空きスペースを活用して、「少しボルトを回してはレンチを外し、再びレンチをはめ込んでボルトを回す」といった事を繰り返しながら、少しずつ緩めてください。
フレアナットレンチ使用上の注意点
ブレーキホースやクラッチホースに使われているボルトは、硬く締め付けられている上に柔らかい材質である事が多いです。そのため、フレアナットレンチを使う時はボルトとレンチ先端部分がしっかりと噛み合わせてください。少しズレているでけでも、比較的簡単にボルトの山をなめてしまいます。
他のレンチやスパナと同様に、ボルトのサイズにピッタリと合ったフレアナットレンチを使うことも大切です。
また、狭いエンジンルーム内で使う時は、他の部品で手首を負傷する可能性があります。作業用手袋に加えて、手首を保護するための「アームカバー(腕抜き)」を巻いておくと安心です。