今後EV(電気自動車)が急速に普及すると、自動車業界はかつての家電業界のように大きな構造変化が起こると言われています。
複雑化する自動車の構造
自動車の発展の歴史は、言い換えれば「構造の複雑化」の歴史でもありました。
はじめは単純な構造だった自動車ですが、シングルカムからツインカムエンジン、自然吸気からターボチャージャーやスーパーチャージャーの過給機付きエンジンへと効率化とハイパワー化を求めて次第に発展していきます。
また、燃料噴射装置では、キャブレターから電子燃料噴射装置への発展。排気対策としてCVCCエンジンの登場の後、三元触媒フィルターによる有害物質を除去するための技術などが考え出されました。
加えて、安全対策技術のABSやトラクションコントロール、エアバッグやプリクラッシュブレーキなどが搭載され、実際の事故発生頻度も激減していきます。
さらに近年では、ハイブリッドシステムの登場により、自動車の構造はますます複雑化するばかりです。
特殊な部品は系列内で開発と製造が行われる
その結果、自動車に使われている部品も特殊な部品が増え、一部の汎用部品を除いて、自動車メーカーの支配下にある系列部品メーカーが一体となって独自に開発が進められます。
EV(電気自動車)は構造が簡単
それに対してEV(電気自動車)の開発と製造では、構造が簡単でシンプルなため、使われる部品点数も圧倒的に少なくなります。
使われる部品の質も変わり、簡単に量産が可能な汎用部品が中心となります。
EV(電気自動車)は参入障壁が低い
ガソリン車に使われているエンジンでは、開発や製造段階において、図面や数値に表しきれない情報が重要な役割を占めています。そのため、これがガソリン自動車製造の新規参入を阻む大きな参入障壁となっていました。
ところが電気自動車の場合は、構造が簡単で部品の多くが汎用部品であるため、ガソリン自動車にあったこの参入障壁が事実上存在しません。
使われているバッテリーも、設計通りの性能を計算により引き出すことが可能で、個体による性能差もそれほどありません。つまり、汎用化しやすいということが言えます。
パソコンのようになるEV
モーターやバッテリーが汎用化しやすいということは、標準規格を設定するだけでパソコンや電気製品のように、世界中のサプライヤーから一番安く性能のいい部品を供給してもらうことが可能になるということです。
その結果、部品を組み上げることさえできれば、自動車の開発と製造を比較的簡単に行えるようになります。そのうち家電売り場やネットショップでも、安くて手ごろなEV(電気自動車)を買うことができるようになるかもしれませんね。
電気自動車はメンテナンスフリー
また、電気モーターはガソリンエンジンに比べるとほぼメンテナンスフリーです。今まで、自動車のメンテナンスによって成立していたビジネスモデルは少し苦しい状況となるでしょう。
逆にユーザーにとっては、エンジン関係のメンテナンス費用がまるまる浮くことになるので、大いに助かりますね。
ただ、なんだかんだと理由をつけて、車検制度だけはしっかりと守られそうな気がします。