今回の【試乗評価】は、「新型 日産 ティアナ XV ナビAVMパッケージ(L33・3代目)」。
2013年にフルモデルチェンジした、Lクラスの4ドアセダンです。
ティアナと聞いて最初に思い出すのは、やっぱり初代ティアナでしょうねえ。
「モダンリビング」の思想を内装デザインに取り入れた意欲作で、緩やかな曲線を使ったシンプルな造形と、上質な木目や樹脂、メタリック素材との対比が素晴らしかったです。内装デザインのカッコよさだけなら、現行型ティアナよりも上だと思います。
モダンデザインの旗手、フランク・ロイド・ライトや、イサム・ノグチの作品をモチーフにしたCMもいい感じで、新しい生活を予感させる何かが表現されてました。初代が登場したのは2003年で、バブル景気が弾けて10年を経過してましたが、「イメージCMに影響されてなんとなく商品が欲しくなる」なんてバブル的な気分も多少残っていた気がします。
これに「車格の割に安い」とか、「高級イメージのあるV6エンジンを搭載している」なんて商品企画がバッチリはまって、日本を始めとして世界中で好調なセールスを記録しました。
ただ、デザインを優先しすぎたせいかペダル類が遠く、足の短い僕にはちょっとドライビングポジションが合いにくかったですねえ。あくまで個人的な感想ですけど。
「新型 日産 ティアナ XV ナビAVMパッケージ(L33・3代目)」の概要
そんなティアナも4ドアセダン市場(国内)の急激な縮小によって、現在はメインマーケットを北米と中国に移してます。日本市場への割当台数が少ないんで、当然ながらスタイリングも北米や中国市場を意識したダイナミックなデザインになってます。初代ティアナの丹精なデザインが好きだった人には、多少残念なモデルチェンジになったかもしれませんねえ。
サイズ的にはスカイラインに近いんですけど、あちらはもうちょっと上質なクルマづくりになってます。ティアナはそれに比べると、実用車寄りって感じです。正確には高級車未満、大衆車以上ってところでしょうか。大柄なボディにFFレイアウトを組み合わせているんで、室内が広くて使いやすいです。
コンセプトとしては、初代の「モダンリビング」に、2代目の「おもてなし」を組み合わせつつ、スポーティな走りの良さを上乗せしてます。ターゲット層は、50代から60代の子育てが終わった中高年層。最近の中高年は見た目が若々しいんで、これくらいダイナミックなデザインでも全然違和感無いです。
エンジンは直列4気筒のみ
搭載されるパワーユニットは、「2.5リッター・直列4気筒ツインカムエンジン」のみ。先代ティアナ(2代目)に用意されていた「V型6気筒エンジン」はありません。上質な回転フィールではV6エンジンにやや遅れを取るものの、ピックアップの良さやトルク感、エネルギー効率の良さでは4気筒も負けてません。
ということでグレード構成は、前輪駆動に4気筒ツインカムエンジン、CVTを組み合わせたモデルが中心。これに装備の違いによる3グレードが設定されてます。この中で試乗車の「XV」は、装備を充実させた上級グレードという位置付けです。
プラットフォームなど
基本となるプラットフォーム(車台)は、先代から継承するLクラスFF車用の「Dプラットフォーム」を使ってます。主要マーケットである北米や中国市場のニーズに合わせて、ボディサイズを一回り大きくしてます。
ライバルは
ライバルは「トヨタ・カムリ」や「ホンダ・アコード」などのLクラス4ドアセダン。日本市場ではLクラスに分類されますが、国土の広い北米市場ではMクラスになります。
日本市場では全然良いところの無いこの手の4ドアセダンですが、北米市場では人気が高くて、この3車種でベストセラーの座を争うほど売れてるんです。
マイナーチェンジ情報
2015年にマイナーチェンジ。内外装の小変更とともに、安全機能もアップデート。フルモデルチェンジ直後は装備の無かった「プリクラッシュブレーキ(衝突被害低減自動ブレーキ)」も、このタイミングで追加されてます。
外観
ボディサイズ、全長4880mmX全幅1830mmX全高1470mm。ホイールベース、2775mm。
先代のイメージをしっかりと受け継ぎながらも、よりグラマラスに生まれ変わった3代目ティアナ。
フロント
うねりのあるフロントノーズに、ダイナミックな格子グリル。アグレッシブな印象のLEDヘッドライト。動きのあるデザインを取り入れながらも、しっかりと先代のデザインが踏襲され、ひと目でティアナだと分かる特徴的なフロントフェイスです。
サイド
なだらかなルーフに前後に長いボディ。ロングホイールベース(前輪と後輪の間が長い)。大人のセダンにふさわしい上質で伸びやかなスタイリング。先代の端正な美しさは薄まりましたが、その分、ダイナミックな力強さはこちらの方が上です。
先代ティアナに装備されていたサイド・アンダー・モールド(メッキ)は廃止され、若干のっぺりとした印象のサイドビューに。こういった大柄なボディにこそ、引き締め効果のあるアイテムが欲しいところです。
リア
傾斜の強いリアウィンドウに、ハイデッキ化されたリアエンド。グラマラスなヒップラインとが相まって、力強い後ろ姿を形づくっています。くさび型のリアコンビランプが装備され、ダイナミックな印象をさらに強調。大衆セダンにありがちな「地味」とか「控えめ」といった雰囲気はありません。
内装
しっとりとした樹脂にメタル調フィニッシャー。ピアノブラック調パネルを組み合わせた上質な室内。歴代ティアナの美点を受け継ぐ居心地の良い雰囲気です。
メーターナセルには、大型二眼メーター(ファインビジョン)を配置。くっきりとした見やすいフォントで視認性は上々。中央には「4インチ・カラーディスプレイ(アドバンスド・ドライブ・アシスト・ディスプレイ)」が装備され、航続距離や外気温、クルーズコントロール設定などの車両情報を表示します。
センタークラスター最上段にはエアコンの吹き出し口が装備され、離れた後席にも効率よく快適な空気を届けます。その下にナビゲーションなどを表示する大型ディスプレイ。最下段にはフルオート・エアコンを装備。調整ツマミがダイヤル式なので、手探りでの操作もやりやすいです。
センターコンソールには2つのカップホルダーや小物入れ、コンソールボックスなどを備えています。ルーフの下には、サングラスなどの収納に便利なオーバーヘッドコンソールもあります。
シート
フロントシートは、コシのあるベースクッションに柔らかな中間層、肌触りの良い表皮を組み合わせた3層構造。身体が僅かに沈んだところで包み込むように支えます。助手席には電動式のオットマン(足枕)が装備され、長距離ドライブも快適。この装備をポイントに奥さんを説得すれば、愛車の購入がちょっとだけ早まるかもしれません。
リアシートは座面の長さ、背もたれの高さともに適正で身体を支える能力が高いです。クッションのストロークもたっぷりで、表皮の柔軟性も申し分ありません。ホイールベースの拡大によって室内スペースも伸ばされており、大人二人が座ってもゆったりとした余裕があります。ただし後席のヒップポイントが低く、座高の低い人が座ると閉塞感があるかもしれません。
荷室
ボディの前後長が伸ばされたため、それに伴って荷室容量も拡大(506L)。家族4人であれば2泊3日旅行も余裕です。さらに背もたれを6:4で分割可倒すれば、ステーションワゴンのような使い方もできます。
静粛性
車内には遮音材や吸音材がしっかりと詰め込まれており、ロードノイズや風切り音の侵入も最小限。プレミアムセダンにふさわしい静かな室内です。
エンジンとミッション
2488cc・直列4気筒DOHCエンジンに、CVT(無段変速機)をマッチング。
エンジンは、173ps/6000rpmの最高出力と、23.9kgf・m/4000rpmの最大トルクを発揮。
JC08モード燃費は、14.4km/l。
エンジン
2.5リッター・ツインカムエンジンで前輪を駆動(FF)。中低速でフラットなトルクを発生する扱いやすいエンジンです。先代のV6エンジンは廃止され、直列4気筒のみに一本化。スムーズな上質感は薄れましたが、低速トルクやピックアップの良さではこちらが上でしょう。
車両重量1480kgに対して23.9kgf・mの最大トルクが与えられ、日常域での力強さは充分。フラットなトルク特性とCVTのマッチングも素晴らしく、スムーズで粘りのある走りをみせます。
急な坂道や合流ポイントでは若干ノイズを高めますが、4気筒にしては静かなエンジンです。
トランスミッション
ベルトとプーリーによって無段階に変速するCVTを搭載。
トルクフルなエンジンの美味しい所を存分に引き出して、低速域ではスムーズで力強い走りを。高速巡航ではエンジン回転を抑えて静かで効率の良い走りをサポート。CVT特有のモワーとしたフィールも最小限に抑えられています。
足回りとハンドリング
前輪にストラット式サスペンション、後輪にはマルチリンク式サスペンションが装備される。
ハンドリング
穏やかさを基本とする素直なステアリングフィール。エンジンが4気筒になったため、鼻先が軽くなりハンドリングの軽快感も向上しています。操舵フィールにやや曖昧な部分があるものの、ハンドリング自体は正確。ドライバーのイメージしたラインを外すことはありません。
コーナリング中、内側に二輪に軽くブレーキを掛けて姿勢を安定させる「アクティブトレースコントロール」を搭載。外側に膨らもうとする車の動きを抑えて、正確でスムーズなハンドリングを支援します。
最小回転半径は、5.7mと少々大きめ。狭い路地では切り返しに苦労しそうです。
乗り心地
装着タイヤは215/55R17。
固く引き締まったボディに、ストロークの長いサス。大径17インチタイヤが組み合わされ、適度に引き締まったしなやかな乗り味をみせます。
低速域では路面の凸凹を拾いやすいものの、衝撃の角自体はまろやか。車内に不快な突き上げ感を伝えません。
ロングホイールベースを生かして高速域での安定性も高く、フラットな姿勢でまっすぐに直進。進路を乱されにくいです。
その他
先進安全技術は、衝突を予測して回避、もしくは被害軽減を図る「エマージェンシーブレーキ」と、駐車場などでアクセルとブレーキの踏み間違いによって起こる衝突を防止する「踏み間違い衝突防止アシスト」を全車標準装備。さらに「ナビAVMパッケージ」には、LDW(車線逸脱警報)やBSW(後側方車輌検知警報)も追加。
試乗評価のまとめ
「新型 日産 ティアナ XV ナビAVMパッケージ」は、北米や中国市場を見据えて開発された世界戦略車。大柄なボディにダイナミックなスタイリングが与えられますが、歴代ティアナの美点である居心地の良い室内空間もしっかりと継承されています。
トルクフルで静かなエンジンに、穏やかで自然なハンドリング、適度に引き締まったしなやかな足回りをマッチング。先代よりも拡大されたボディを活かして、室内空間も広々。大容量の荷室も装備されます。
「家族のために大柄なセダンを探しているが、上質感やおしゃれな雰囲気も大切」とか、「高級車は嫌だけど、実用性が高く上質な乗り味を持ったセダンが欲しい」なんて人に最適な一台です。
「上質なセダンでスポーティな走りも楽しみたい」という人には、スポーティなスカイラインをオススメします。
中古車市場では
2017年式「新型 日産 ティアナ XV ナビAVMパッケージ」で250万円前後。2014年式「新型 日産 ティアナ XV」で100万円台後半(2018年5月現在)。
新車価格
3,513,240円(税込み)