大きなバルブのデメリット
クロスフロー方式を採用することで、大きな吸排気バルブを得て、エンジンの燃焼効率は上がりました。
しかし、その後の技術革新でエンジンがDOHC化されると、さらに高い回転でエンジンが作動するようになります。
これにより吸排気バルブも高速で作動する必要がありますが、大きくなりすぎたバルブでは重量が重くなってしまいます。
この重くなったバルブを高速で作動させると、慣性重量が大きくなり過ぎ、エンジンはスムーズに回転出来なくなってしまいます。
マルチバルブとは
この対策の為に開発されたのが、「マルチバルブシステム」というバルブの構造です。
マルチバルブシステムとは、シリンダーヘッド内に2つの大きなバルブ開口部を設置するより、小さく4つバルブ開口部を開けた方が、バルブ開口部の合計面積は大きくしたまま、逆に1つずつのバルブは小さく軽く出来る、という理屈から考え出された画期的なシステムです。
これにより吸排気量は大きなままで、なおかつ小さく軽くなった吸排気バルブによって、高回転エンジンにも対応できるようになったのです。
マルチバルブのデメリット
ただ、このマルチバルブシステムにもデメリットがあります。
シリンダーヘッドの構造が複雑になりすぎるということです。
しかしこれについては、ロッカーアームを排除することで、2本のカムシャフトで直接カムが吸排気バルブを開閉出来る様に改良し、ずいぶんとシンプルで効率的な構造に改善されています。
5バルブエンジンの登場
その後、さらに高回転のエンジンを開発しようという事になり、吸気バルブ3本と排気バルブ2本の合計5本のバルブを使った、いわゆる「5バルブエンジン」が開発されます。
この5バルブエンジンは、吸気効率を上げるため3本の吸気バルブが設置されていましたが、シリンダーヘッドが複雑でコストがかさんでしまい、高価なエンジンとなってしまいました。
また理想的な燃焼を行う為に、燃焼室はきれいな半円形が望ましいのですが、吸気バルブ3本に排気バルブ2本といういびつな構造だったため、その設計はかなり難しいものでした。
さらに吸気バルブ自身も狭いスペースに3本も設置されていたため、効率の良い燃焼をさせようとすれば、それぞれが複雑な形になって逆に吸気効率が悪くなってしまうというデメリットもありました。
このように手間とコストが掛かる割に、大して効率が良くないという事が分かってきて、以降は徐々に使われなくなってしまいました。