今回は「新型スズキ イグニス HYBRID MZ(セーフティパッケージ装着車)」を試乗レポートします。
Aセグメントという小さなクラスに分類される「コンパクトクロスオーバー」というカテゴリーのSUVです。
「イグニス」という名前は、海外で初代スイフトに使われていた名前です。海外では旧カルタスを「スイフト」として販売していたのがその理由です。
かつてクラスは違いますが、同じようなキャラクターで「スズキ Kei」という軽自動車がありました。
スタイリングからみれば、「スズキ フロンテ クーペ」という昔の軽自動車にも似ています。
今回の「イグニス」は全くのブランニューモデルですが、かつての往年の名車の面影が見え隠れする、懐かしくも新しい不思議な車です。
外観
サイドビューは、かつてのスズキフロンテクーペにそっくりでちょっと嬉しくなりました。
最初は気付かなかったフロントフェイスも、その後で見ればなんとなく「フロンテクーペ」に似ています。
軽自動車のアルトと同じく、キャビンはぐっと絞り込まれスポーティな印象です。
このせいでキャビンが小さく感じますが、後部座席の頭上高は最低限確保されています。
実際にしぼり込まれているのは、荷室の範囲だけだからです。
内装
シンプルで質感の高い内装です。変にテカテカの質感やアールで丸く可愛くしたりといった、みっともない演出が皆無で気持ちのいいデザインです。
共用部品のステアリングには若干生活感が漂っていますが、これはコストの関係上仕方ありません。
また内装の配色は、オフホワイトとブラックのツートンに、ボディ色のオレンジが一部組み合わされ、落ち着いていながらも楽しい印象です。メーターも大きく、ナビゲーションも適正な位置にあり、とても使いやすいレイアウトです。
センターコンソールの側面には、Cピラーで使われた3本のラインと外板色のオレンジが反復されます。遊び心あふれる心憎い演出です。
シートはしっかりした造りでクラスの標準的な質感です。日常的な使用なら問題ありません。
後部座席の室内空間は、絞り込まれたキャビンのため、広々とはいきませんが十分なサイズです。
エンジンとミッション
1.2Lエンジン+電気モーターのマイルドハイブリッド搭載車です。ミッションは副変速機付きのCVTが組み合わされます。
エンジンは、91ps/6600rpmの馬力と、12.0kg/4400rpmのトルクを持ちます。
電気モーターの出力は、3.1psの馬力に、5.1kgのトルクです。
ただ、この電気モーターはマイルドハイブリッドなので、30秒だけのアシストとなります。
アイドリングストップからの復帰にも、この電気モーターが使われます。
これはギアを用いた通常のセルモータと違い、静かでスムーズな発進が可能です。
このCVTの特性で、発進や加速時はややもっさりした印象を受けます。もう少しダイレクトでレスポンスが高いと、気持ちの良い運転ができるのですが。
ただ最近のダウンサイジング化の流れから、ライバル達が3気筒エンジンを採用しているので、イグニスの4気筒エンジンは相対的にスムーズです。
エンジン特性も電気モーターと相まって、日常域で不足はありません。
足回りとハンドリング
前輪はマクファーソンストラット式サスペンション、後輪はトーションビーム式サスペンションが装備されます。
素直な操舵感で気持ち良くコーナーをクリアでき、車高の高さから想像するようなロール感はありません。
しかし、ステアリングの中立付近に若干曖昧な印象が残ります。
引き締まったしなやかな足回りで、路面追従性も高く地面に吸い付くように走ります。
プラットフォームはソリオと共通ながら、軽量ボディゆえに切れ味のある軽快な乗り味です。
ただ、ハーシュネス処理がいまいちで、大きな段差などでは嫌な衝撃を車内に伝えてしまいます。
評価のまとめ
新型プラットフォームを使ったまったく新しいブランニューモデルなので、一部に煮詰めの甘いところが見られます。
しかし、全体としてはよくまとまっており、最近のスズキらしく味のある楽しい車です。
ライバルと比較すれば、コンパクトな軽量ボディと、スムーズな4気筒エンジンがアドバンテージとなります。
押し出しのある外観で、人とちょっと違った車が欲しいと思っている方にもオススメできます。
主要諸元と価格
全長X全幅X全高 | 3700mmX1660mmX1595mm
JC08モード燃費 | 28.0km/l
価格 | 1,738,800円(税込み)