5気筒エンジンとは
気筒(シリンダー)が車の進行方向に対して、縦に5つ直線的に並んだエンジンを「直列5気筒エンジン」といいます。
5つの気筒を1本ずつ交互に、2本と3本に分け、V型になるようにクランクシャフトに接続したエンジンを「V型5気筒エンジン」といいます。
4気筒エンジンに1気筒足したものと、6気筒エンジンからひとつ気筒を減らして作られる事が多く、始めから5気筒として作られるものは少ないのが現状です。
この5気筒エンジンは、6気筒エンジンほどはスムーズではなく、4気筒エンジンほどはコンパクトではないと、中途半端な印象であまり評判は良くありません。
ただ、こういった中でも、素晴らしい5気筒エンジンがいくつか作られています。
ボルボの直列5気筒エンジンと、ホンダの直列5気筒エンジンです。
ボルボの直列5気筒エンジン
ボルボは初め、直列5気筒エンジンを直列6気筒エンジンから1気筒取り去る事で成立させていました。
しかし、その後は専用の5気筒エンジンを開発しています。
エンジンをどこに積むのかとか、どういうミッションと組み合わせるのかという事を「パッケージング」といいます。
ボルボが優れているのは、直列5気筒エンジンを専用開発した事よりも、FFレイアウトの車にこの直列5気筒エンジンを横置きに搭載した事です。これは革新的なパッケージング技術といえます。
普通、FF車のボンネットの中は狭くて、直列5気筒エンジンのような長いエンジンを、横置きに搭載するのは困難です。
ところが、現在では直列6気筒エンジンのエンジンを、横置きに搭載しているモデルもあるほどです。
ホンダの直列5気筒エンジン
以前ホンダでは、乗用車用に直列5気筒エンジンというものがありました。
1989年にホンダから発売された「アコードインスパイア/ビガー」に搭載された新開発の直列5気筒エンジンです。
このエンジンは、SOHCながら160ps/6700rpmの馬力と、19.0kg/rpmのトルクを発生していました。
FFで高級車を成立させるというコンセプトの元、フロントミッドシップにエンジンを縦置きし、僅かにドライバー側にエンジンを傾けることで、低重心化と前後重量配分の適正化を狙っていました。
このエンジンは数値的には高回転で最高出力が発生しているので、低速トルクが少ない印象を受けます。
しかし実際乗ってみると、低い回転からそこそこのトルクが立ち上がる、運転しやすいフラットトルク型のエンジンでした。
またFF車らしからぬ高い動的質感と、フロントミッドシップによる優れた運動性能を持つ素晴らしい車でした。
ただ、このフロントミッドシップというレイアウトは、操縦性や運動性は高いのですが、坂道で前輪加重が抜けスリップしてしまうという欠点がありました。
そういう事もあり、ホンダでは現在このレイアウトと、直列5気筒エンジンの車は作っていません。