今回の旧型レポートは「メルセデスベンツ ミディアムクラス 300E(初代 Eクラス・W124)」。
1985年から1995年に渡って製造販売されていた、Mクラスの高級4ドア・セダンです。
1992年にマイナーチェンジが施され、同時に名称も「ミディアムクラス」から「Eクラス」へと変更されています。
ボディタイプはこのセダンの他に、2ドアクーペ、ステーションワゴンがライナップされていました。この後、少し遅れてオープントップのコンバーチブルがラインナップに加わります。
外観
全長4740mmX全幅1740mmX全高1445mmのボディサイズを持ち、ホイールベースは2800mmとなります。
最近のモダンに洗練されたメルセデスベンツには感じられない、圧倒的な存在感があります。
フロント
重々しいフロントノーズに大型の格子グリル、存在感のある角型ヘッドライトが組み合わされ、威風堂々としたフロントフェイスを構成しています。メルセデスベンツならではの、近寄りがたいオーラーがありますね。
サイド
ロングノーズ&ビッグキャビンの古典的FRルック。直線基調のラインが与えられ、優雅さの中にもどっしりとした力強さを感じさせます。
リア
がっしりとした面と線で構成された、重厚感あふれるリアビュー。他者を圧倒する孤高の存在感があります。
内装
現代のメルセデスベンツと比較すると、まさに質実剛健、実用性重視の無骨なデザインです。メーターナセルには大型の三眼メーターが装備され、使い勝手も良好です。
ボディの見切りもよく、大きさの割に運転のし易い車です。
シート
どっしりとした質感と、たっぷりとしたストロークを併せ持つ座り心地の良いフロントシート。立体的な形状で、長時間ドライブでも快適に身体を支え続けます。
リアシートの質感もフロントと遜色ありません。足元、頭上ともにたっぷりとしたスペースが確保されており、成人男性が余裕を持って座ることができます。
荷室
スクウェアな開口部を持つ使い勝手の良い荷室スペース。前後左右にたっぷりとした容量が確保され、4人家族なら十分キャンプも可能です。
静粛性
車内にはたっぷりと遮音材が施され、抜群の静粛性をほこります。といっても完全な無音ではなく、遠くで気持ちの良い6発サウンドを奏でます。
エンジンとミッション
2960ccの直列6気筒SOHCエンジンに、4速ATが組み合わされます。
エンジンは、185ps/5700rpmの最高出力と、26.5kgf・m/4400rpmの最大トルクを発揮します。
車両重量1470kg。10モード/10・15モード燃費は、6.6km/lとなります。
エンジン
3.0Lのストレート6で後輪を駆動。ウルトラスムーズな回転フィールと、低速から湧き上がるような豊かなトルクを持った力強いエンジンです。このミディアムクラスの重量級ボディを軽々と加速させます。日常領域はもとより、坂道や合流地点でも力不足を感じることはありません。
日常の足として市街地を走るだけなら、下位グレードの230Eでも全く問題ありません。
さらに圧倒的な加速力を必要とする方には、400Eや500Eなどの上級グレードがオススメです。
トランスミッション
エンジンのトルクが厚いため、4段ギアでもまったく問題ありません。高級セダンにふさわしい上質なフィールです。
足回りとハンドリング
前輪にショックアブソーバー・ストラット式サスペンション、後輪にはマルチリンク式サスペンションが装備されます。
足回り
少し引き締まった印象の上質な乗り味。高速域では抜群の安定性で、矢のように直進します。
ハンドリング
中立付近にダルな領域のある、スローなハンドリングフィール。全体に緩慢な印象を受けるのは、長時間ドライブでの疲労を軽減するという、メルセデスベンツならではの確固たる哲学があるからです。
評価のまとめ
メルセデスベンツがかつて持っていた企業哲学「最善か無か」によって作られた最後のMクラスセダンです。この哲学の裏には、一切の妥協を許さないという強い信念とともに、自社が開発・製造した車に対する強い責任感が隠されています。
しかし、当時アメリカ市場に現れた「レクサスLS(セルシオ)」によって、このミディアムクラスは大きな痛手を負ってしまいます。また、そのことが原因となってメルセデスベンツは一時的に過剰なコストダウンに走り、同時にこの素晴らしい哲学を見失うことにもなるのです。
そのため、この時代のメルセデスベンツを味わうには、うってつけのネオクラシックカーとなります。ただしベストコンディションで維持するには、相当なコストを覚悟しなければなりません。
「普段は仕事に使い、週末は家族で長距離ドライブやレジャーに出かける」といった使い方をする人にピッタリなグランドツアラーです。
価格
新車当時の価格 | 7,330,000円