今回の旧型レポートは「初代 スマート フォーツー クーペ」。
1997年から2007年に渡って製造販売されていた、3ドアハッチバックのシティコミューターです。
日本市場ではスマート・ジャパンという並行輸入業者が1998年から販売していましたが、2000年になるとダイムラー・クライスラー日本が正規販売を開始しています。
当初、VWとスウォッチの間で立ち上がった「スマート・プロジェクト」ですが、VWが早々に離脱した後メルセデスベンツが加わりますが、しばらくするとスウォッチも撤退、結果的にメルセデスベンツ単体で運営していくことになります。
床下に二重構造を持たせる事によって衝突安全性能を高めた「Aクラス」と異なり、エンジンをリアに搭載する事によって前方に充分なクラッシャブルゾーンを確保しています。
外観
全長2540mmX全幅1515mmX全高1550mmのボディサイズを持ち、ホイールベースは1810mmとなります。
実験車的な色合いの濃い初代スマートですが、その未成熟な内容とは裏腹に、スタイリングは3世代の中で一番モダンで都会的。現在でも充分通じるカッコよさがあります。
全長が2.5mほどしかありませんので、入り組んだ狭い路地の多い都市部では抜群の使い勝手の良さを誇ります。
フロント
大きなフロントウィンドウと小さなノーズが一体化。涙型の可愛らしいヘッドライトが組み合わされ、近未来的なスマートさと、愛らしさを合わせもつカッコいいフロントフェイスです。
サイド
極端に短いホイールベースに、大きなキャビンが載せられます。横から見るとマンボウのような愛嬌がありますね。ボディをグルリと囲むシルバーカラーが効果的に全体を引き締めており、スマート独自のカッコよさも感じさせます。
リア
コンパクトなボディにぐっと張り出したフェンダーが絶妙な力強さを与えています。ボディをグルリと囲むシルバーカラーがリアエンドまで周りこみ、リアコンビランプと一体となって、効果的なアクセントとなっています。
内装
日本の軽自動車よりも小さなボディに、2人の大人がしっかりと乗れるスペースを確保しています。
樹脂の質感をそのまま活かした簡素な内装。といっても、妙に豪華に見せようとしていないため、貧乏臭さは微塵もありません。楽しい雰囲気のポップなデザインです。
シート
薄く幅の狭いシートが装備されますが、シートの裏には強固なバックシェルが組み合わされるため、腰が沈み込んで痛くなる心配はありません。中距離(30km)程度であれば、充分に快適な移動が可能です。
荷室
カップホルダーや、小物入れは最小限しか設置されていません。リアにエンジンを搭載しているため、その分荷室の床が高くなっています。といっても、二人で2泊3日旅行くらいなら充分可能です。
静粛性
エンジン透過音、ロードノイズともに大きめです。
エンジンとミッション
698ccの直列3気筒SOHCターボエンジンに、6速ATが組み合わされます。
エンジンは、61ps/5250rpmの最高出力と、9.7kgf・m/2000-4000rpmの最大トルクを発揮します。
車両重量770kg。10モード/10・15モード燃費は、19.2km/lとなります。
エンジン
0.7Lのシングルカム・ターボエンジンで後輪を駆動します。超軽量ボディと相まって充分な動力性能を持ちます。市街地など日常領域では、キビキビとした走りを堪能することができます。
トランスミッション
超高性能、6速のデュラルクラッチ・トランスミッションが装備されます。スポーティなステップ感と、ダイレクトなフィールを持った楽しいトランスミッションです。
足回りとハンドリング
前輪にマクファーソン・ストラット式サスペンション、後輪にはド・ディオン式サスペンションが装備されます。
足回り
バイブレーション、ピッチングともに大きめで、長時間ドライブは疲れます。しかし、このスマートはシティコミューターですから、近所の用事でうろちょろする程度であれば問題ありません。
ハンドリング
リアに重いエンジンが搭載されるため、前輪の接地感が乏しく、特に加速時は頼りないステアリングフィールとなります。
反面、コーナー手前でしっかりと減速して前輪に荷重を乗せてやれば、キビキビとした切れ味の良いコーナリングを楽しむことができます。
抜群の小回り性能を持ち、狭い路地でもクルリと切り返すことができます。
評価のまとめ
「小さなボディに大人二人を乗せる」という割り切ったコンセプトで登場した、メルセデスベンツが未来に向けて提案する新世代のシティコミューターです。
この初代スマートは、その斬新過ぎるコンセプトゆえ、自動車自体の完成度は今ひとつな部分もあります。しかし、その新しいコンセプトとカッコいいスタイリングは、他の車には無い大きな魅力です。
当時の日本自動車会社であれば、軽自動車の技術を活かしてこれ以上のシティコミューターが作れたはずです。しかし、iPhoneなどのスマホでも同じですが、ガラケーからスマホへの発想の飛躍が出来ないところに日本企業の限界を感じてしまいます(正確には、コンセプトモデルまでは作られるが、それにが承認されて製品化されるのが難しい)。
当初は、日本の軽自動車と比べて割高だった価格も、30万円を切るくらいまで値下がりしています(2017年7月現在)。信頼性に一抹の不安がありますが、気軽に買って走るところまで使い倒してやれば,結構楽しめそうです。
価格
新車当時の価格 | 1,543,500円(消費税込み)