高度成長期の頃、大量に発生していた「当たり屋」という犯罪ですが、平成の今でもその形態を変え、しぶとく存在し続けています。
当たり屋の手口
当たり屋のオーソドックスな手口は、朝から昼にかけ、通勤途中の車を狙います。
信号機で停車している車が動き出したところへわざと身体をぶつけ、その場に倒れ込んで怪我をしたふりをするのが王道の手口です。
その他にも、狭い路地を通る時とは、直角に曲がるコーナーとか、車が低速で走らなければならない状況を狙って現れます。当たり屋といっても生身の人間ですから、速い速度で走る車にぶつかって本当に怪我をするのは怖いんです。
車にぶつかって、その場に当たり屋が倒れ込むと、辺りから数人の仲間が現れ、ドライバーを追い詰めるというのもお約束の手法です。
その後は、「俺は日雇いで1万円稼いでいる、怪我をすれば20日間は働けない」と言って、「20万円を支払えば、警察にも届けないし裁判に訴えることもしない」と、若干の譲歩を匂わせながら交渉します。
被害者のドライバーも、「警察に届けられては面倒だ」という心理が働き、結局お金を支払ってしまうのです。
新しい手口
最近はこの王道の手口に、「スマートフォン」や「自転車」を絡めた手口も頻発しています。
予め壊れたスマートフォンを懐に忍ばせておき、車に接触した後にドライバーに見せて、スマートフォンの修理代をせびるというのがその手口です。
この時、提示される額は、「数千円から一万円」位。その場でなんとか払えそうな額というのが巧妙ですね。
また、自転車を使った手口は、ふつうに車にぶつかるのではなく、低速で走る自転車にぶつかって事故を装うという手口です。自転車は車よりも小さくて遅いですから、当たり屋の安全性がぐっと高まるというわけです。
また、自転車は車と違って、保険に加入している事がほとんどありませんので、保険会社に通報されたり、保険会社の調査が入ったりといった心配もありません。
車対車の手口
その他には、車対車の当たり屋も存在します。わざとノロノロと走って後続車をイライラさせ、煽ってきた所でサイドブレーキを引いて、ブレーキランプを点灯させずに急停車、後続車に追突させるというのがその手口です。
その他にも2台一組となって、標的の車を間にはさむというやり口もあります。それは、後ろの当たり屋が標的を煽り、標的の車が焦って注意力を失った頃を見計らって、先行する当たり屋が急ブレーキを掛けて追突を誘うというものです。
当たり屋に遭った時の対処法
当たり屋はその場で話を付けて、賠償金をせびるというのが目的です。下手に警察を呼ばれると困るわけです。
そのため、当たり屋に遭ったら、一番に警察に通報するというのが最大の防衛手段となります。普通の当たり屋であれば、「警察」と聞いただけで逃げ出すでしょう。
といっても当たり屋もプロです。なんとか警察に連絡させまいと、あの手この手で揺さぶりを掛けてくるはずです。
こういう時は先手必勝です。車を降りる時から電話を耳に当て、「大丈夫ですか?今、警察に連絡していますから・・・」と、当たり屋に話しかけてください。といってもこういう咄嗟の時に、普通はそこまで機転は回りません。ただし、普段からイメージトレーニングを何度か繰り返していれば話は別です。
また、この迅速な通報のシミュレーションは、本当に事故を起こした時にも大きな効力を発揮します。やっておいて損はありません。
警察は民事不介入
まあ、普通の当たり屋であれば、警察に通報するだけで逃げていくはずですが、中にはそれでも居座り続ける強情な当たり屋もいます。
こういった時には、警察に話を付けてもらおうとしても無駄です。警察には「民事不介入」という減速があるため、「損害賠償の支払いについてはお互いに話し合って決めてください」と言われるだけです。
ただし、警察によって作成された調書は、後日、裁判や示談の大きな根拠となりますので、必ず正確に状況を伝える必要があります。
当たり屋の名前や勤務先、住所などを聞いておき、事故現場の詳細な写真を自分で撮影しておくことも大切です。当たり屋が、嘘を言う可能性もありますが、その時はその矛盾点が自分の正当性を立証する助けとなります。
ドライブレコーダーを装備しよう!
自分の正当性を立証する一番の証拠となるのが、事故の状況をリアルタイムで撮影した「ドライブレコーダー」の動画です。これを見れば、当たり屋がわざとぶつかっている事は一目瞭然です。最近は1万円代から結構高性能のドライブレコーダーが販売されていますので、出来れば購入して愛車に装備しておいてください。
自動車保険には「弁護士特約」を付帯しておく
また、自動車保険には「弁護士特約」というものがあります。この特約は、万が一交通事故が裁判になった時、弁護士費用を保険会社が全額支払うというものです。それほど高い特約ではありませんので、余裕があれば加入しておきましょう。また、弁護士には交通事故に強い弁護士とそうでない弁護士がいますので、あらかじめ調べておくと咄嗟の時に慌てなくてすみます。
また、保険会社にはその地域の「当たり屋」情報が共有されています。自分のやるべき対処をしっかりと行ったら、後は保険会社におまかせするのが一番です。
当たり屋に付け入らせない為の予防法
当たり屋に付け入らせないためには、知らない土地で狭い路地に入り込まないとか、前車がノロノロ走っていても、イライラして煽らないといったことが挙げられます。
また、信号機が青になった時、急激に加速して発進しないとか、後ろから煽られても焦らないといった事も大切です。後ろから煽られた場合は、ムキにならず、適当な路側帯でかわすのが一番安全な対処法です。