今回は「初代 アウディ A8(1995年式)」を試乗レポートいたします。
このアウディ A8は1994年に登場した、Lクラス・プレミアムセダンです。日本市場では1995年より販売が開始されています。
当時の量産車としては珍しい、オールアルミボディが与えられています。
アウディのアルミ素材は始めの数回を目処にボディ用素材として利用され、アルミの質が下がってきた所でエンジンブロックに使う事で、長いサイクルでの再利用が可能となっています。
アルミボディの難点はその生産性の低さですが、アウディはこのA8を皮切りにアルミ技術を磨き続け、この後に続く車種に幅広く展開していく事になります。
外観
全長5035mmX全幅1880mmX全高1435mmのボディサイズを持ち、ホイールベースは2880mmとなります。
直線を基調とした端正なボディながら、空力を重視した角の丸いデザインが与えられ、都会的でスマートなアウディならではのスタイリングを形作っています。
フロント
四角い横長のヘッドライトに、同じく横長の四角いグリルが組み合わされ、抑制の効いた華やかさが演出されています。
サイド
この当時のアウディは今と違ってフロントオーバーハングが長めです。そのため若干保守的な印象が漂いますが、巨大なボディと相まって重厚感のある格調の高さに昇華されています。
リア
巨大なボディに横長の四角いリアコンビランプが組み合わされ、プレミアムセダンにふさわしい重厚感のあるリアエンドです。
内装
フラッグシップモデルにふさわしい上質感溢れる内装デザインです。デザインは外観と同じくいたってオーソドックスなものですが、その分使い勝手は良好です。
シート
張りのある大きなシートが装備され、長時間座っていても腰が沈み込んで痛くなる事はありません。
車内空間がたっぷりとしているため、リアシートの居住性も申し分ありません。ショーファードリブン(運転手付き)としても十分に使うことができます。
荷室
大型セダンにふさわしく余裕のある広大な荷室が用意されています。4人家族で2泊3日程度の旅行であれば十分にこなすことが出来るでしょう。
静粛性
当時、アウディ最高の技術を集めて作られた車だけあり、車内の遮音性にも十分な配慮が施感じられます。僅かにエンジンの鼓動を感じさせながらも、上質で快適な最高の移動空間を味わうことができます。
エンジンとミッション
4172ccのV型8気筒DOHCエンジンに、4速ATが組み合わされます。
エンジンは、300ps/6000rpmの最高出力と、40.8kgf・m/3300rpmの最大トルクを発揮します。
車両重量は1810kgで、10モード/10・15モード燃費は、7.5km/lとなります。
エンジン
搭載される4.2Lエンジンはスムーズかつ強力で、フルサイズボディのA8を苦もなくスルスルと加速させて行きます。
この後、3.7LエンジンのFFバージョンが登場していますが、高速移動の少ない日本ではこのFFバージョンでも十分な力強さと安定感があります。
トランスミッション
今や普通車でも見る事の少なくなった4速ATですが、分厚いトルクを活かしてリズミカルに変速していくため違和感はありません。スムーズで力強い変速フィールです。
足回りとハンドリング
前輪に4リンク式サスペンション、後輪にはトラペゾイダル式サスペンションが装備されます。
アルミスペースフレーム構造の上にアルミボディが組み合わされ、大幅な軽量化が行われています。
足回り
当時のライバル車種である「メルセデスベンツSクラス」や「BMW7シリーズ」と比較すると10%以上の軽量化が行われています。そのため加速やハンドリング、ブレーキングなど全ての面で挙動が軽快かつスッキリとしています。
クワトロシステム(4輪駆動)による高い走行安定性も、このA8の大きな魅力です。
ハンドリング
ハンドリングの操舵力は比較的軽めで、重量級プレミアムセダンとしてはもう少し重厚感があってもいいのかなと感じました。
ロールは大きめながら、操舵フィール自体は自然で中立的な印象です。ドライバーの意図したラインを素直にトレースしていきます。
評価のまとめ
ピエヒ会長の陣頭指揮により、A4から始まるアウディ大刷新の一貫として、当時、アウディの技術を結集した最高の車作りが行われています。
しかし、先進的なコンセプトと次世代を睨んだ車作りは、当時の日本人にはあまり理解されず販売実績は今ひとつという結果に終わりました。
今のアウディに繋がる先進的なコンセプトを感じさせながらも、クラシックで保守的な美しく枯れたスタイリングを味わうことができます。
価格
新車当時の価格 | 9,500,000円