今回の【試乗評価】は「新型 メルセデスベンツ Eクラス ステーションワゴン(S213・5代目)E220 d AVANTGARDE」。
2016年にフルモデルチェンジした、Lクラスのステーション・ワゴンです。
コンパクトな「Aクラス」からLLクラスの「Sクラス」まで、幅広く揃えるメルセデスベンツの中核を担う重要なモデルで。この他にセダンとクーペ、カブリオレもあります。
かつてのメルセデスベンツは、車の完成度を高めるために開発に莫大なコストを掛けていました。そんな時代に生まれたのが「W124型」と呼ばれる「初代 Eクラス(ミディアムクラス)」です。
「W124」を見た日本の技術者からは「これだけコストを掛ければそりゃすごいモノが作れるよ」なんて、感嘆のような諦めのような言葉が聞かれたそうですが、今でもその存在感は変わりません。驚くことに今での車作りのお手本として使われることもあるそうです。
今回の「5代目 Eクラス」は、そんな古き良き時代の流れを受け継ぐ由緒あるモデルです。
「新型 メルセデスベンツ Eクラス ステーションワゴン(S213)E220 d AVANTGARDE」の概要
「Eクラス」は、「Sクラス」より小さく「Cクラス」より大きい。世界的には王道のモデルで、「狭い日本の道でもギリギリ行けるかな」って感じです。
世界市場では一般的に「Sクラス」の方を「ショーファードリンヴン(運転手付きの車)」として使うことが多いんです。これが日本になると「Sクラス」では大きすぎるので、少しコンパクトだけど重厚感があって立派にも見える「Eクラス」の方が向いてます。
ただし、ステーションワゴンになるとセダンと違って「パーソナル」な雰囲気があるんで、社用車よりも普段使いの遊び車のほうがしっくりきます。まあ、遊びといってもそれなりに資金は必要になりますけどね。
「E220 d」にはディーゼルターボエンジンが搭載されますが、名前と違って排気量は2.0リッターしかありません。といっても出力自体は2.2リッター並。要するに名前は排気量じゃなくて「2.2リッター並の出力がある」という意味を表してます。
外観
全長4940mmX全幅1850mmX全高1465mmのボディサイズを持ち、ホイールベースは2940mmとなります。
ゆったりとしたボディに重厚感のある保守的なスタイリングが与えられ、モダンな中にも「古き良きメルセデスベンツの趣」を感じさせるデザインに仕上げられています。
フロント
一見するとCクラスによく似たフロントフェイスですが、Eクラスならではの余裕のあるボディを生かし、「これぞメルセデスベンツ」といったクラシカルで重厚感のある表情が与えられています。
この「アヴァンギャルド」グレードには、若々しいデザインの「スポーツグリル」が装備されますが、Eクラスには保守的で威厳のある「クラシックグリル」の方がよく似合います。
サイド
FRならではのロングノーズボディに、細長いキャビンが軽やかに重ねられ、優雅で美しいボディスタイルを表現しています。
表情豊かなパネル面のうねりと、キリッと締め上げれれたキャラクターラインのエッジが相乗効果を生み、上品で大人っぽいボディスタイルです。
先代のEクラスとの大きな違いは、リアに行くほど絞り込まれたテールエンドでしょう。それに伴ってルーフが緩やかに下降しているため、上品な優雅さを感じさせます。
リア
リアに行くほど絞り込まれたテールエンドには、横に細長いリアコンビランプが配置され、凝縮感とともにワイドな安定感を表現しています。
Cクラスと同じデザインテーマを踏襲しながらも、やはりEクラスには一回り上のクラスを表すどっしりとした重厚感と威厳があります。
内装
広々とした室内には、高級クルーザーのような開放感のある内装デザインが施されています。もちろんプレミアムクラスにふさわしい上質感も備え、目のこえたオーナーを幻滅させることはありません。
メーターナセルには、ワイドカラー液晶パネルによるデジタルメーターが装備されています。状況に応じて表示内容を任意に変更できるほか、普段は使い慣れた疑似アナログメーターとして表示させる事もできます。
シート
フロントシートには、強固なフレームにコシのある上質なクッションが組み合わされ、長時間のドライブでも腰が痛くなる事はありません。シート側面には適度なサイドサポートがあり、ワインディングでも体の安定感を失う事はありません。
リアシートの足元にたっぷりとした空間が確保されています。ショーファードリブン(運転手付き)としても十分に使えそうです。シートバックの長さ、座面の角度ともに違和感はなく、フロントシート同様に長時間のドライブも全く苦になりません。
荷室
Lクラス・ステーションワゴンの名に恥じる事のない、クラス最大級の積載スペース(670L)を持ちます。4人家族でキャンプに行くくらいなら十分にこなすことができます。加えて、さらにリアシートを折り畳むことで、積載スペースを1820Lにまで拡大することができます。
静粛性
ステーションワゴン形式のボディは、ラゲッジルーム周辺でこもり音が発生しやすいのですが、このEクラスステーションワゴンには、防音対策としてたっぷりと遮音材が詰め込まれており、上級高級車クラスのすぐれた静粛性を持ちます。
エンジンとミッション
1949ccの直列4気筒DOHCディーゼルターボエンジンに、9速ATが組み合わされます。
エンジンは、194ps/3800rpmの最高出力と、40.8kgf・m/1600-2800rpmの最大トルクを発揮します。
車両重量は1870kgで、JC08モード燃費は、21.0km/lとなります。
エンジン
搭載されるディーゼルターボエンジンは、先代型から200ccダウンサイジングされたものの、逆にパワーと効率は向上しており、低速から必要十分の強力なトルクを発揮します。
同時にオールアルミ構造となり、コンパクト化と共に35kgあまりの軽量化を実現しています。
トランスミッション
組み合わされるトランスミッションには、多段化された9速ATが装備されます。一切の変速ショックを感じさせることなく、スムーズかつダイレクトなフィールでエンジンをサポートします。トルクフルで懐の深いディーゼルエンジンと相まって、上質なガソリンエンジンのような加速フィールを感じさせます。
足回りとハンドリング
前輪に3リンク式サスペンション、後輪にはマルチリンク式サスペンションが装備されます。
足回り
ボディが70kgほど軽量化されているため、先代よりも軽やかなフィールを持ちます。だからといって先代Eクラスの持っていた独特の重厚感は失われてはおらず、しなやかな乗り心地の良さと、Eクラスらしい重厚感が見事にバランスしています。
足回りには「エア・ボディコントロール」が装備され、車速や路面状況に応じて車高やタンピングを自動調整してくれます。そのため、少々の凸凹道であれば何事も無かったかのように通りすぎることができます。ボディ姿勢が乱れることも少なく、常にフラットライドな安定感を保ちます。
ハンドリング
アルミ素材を多様した軽量高剛性ボディに、よく動くしなやかな足回りが組み付けられています。このコストの掛かった高品質な足回りのおかげで、キビキビとした軽快な身のこなしと、適度な重さを伴ったしっとりしたハンドリングフィールが巧みに両立しています。
その他
ステアリングから手を離せば「ステアリングに手を戻すように」と促す警告音が鳴りますが、そのまま何もせずに放置していると、次第に速度が下がりハザードを点灯して車は自動的に停車します。これは、ドライバーに万が一の事があった時、最悪の自体を避けるためのものですが、高齢ドライバーの多い日本では、Eクラスのような高級車だけではなく全車に標準装備してほしい装備です。
評価のまとめ
Eクラスは、CクラスとSクラスの間に挟まれているため、メルセデスベンツの基幹車種として重要な意味があります。そのため、新型車が投入される時には、次のメルセデスベンツを担う様々な先行技術が積極的に採用されています。
対象となるユーザー
Eクラスは日本で使うにはギリギリのサイズ感といえます。そのため、都市部の狭い路地を頻繁に利用する人にはちょっと使い勝手が悪いかもしれません。
また、これよりさらに大きなSクラスとなると、もうドライバーズカーとして買う人はいないでしょうから、このEクラスはドライビングの楽しさと快適性、車の上質感など高次元で両立させたい人の、最後に残された至高の選択肢となります。
加えてこのEクラスステーションワゴンには、セダンでは味わう事のできない広大な室内スペースによる使い勝手の良さと、ステーションワゴンを持つという豊かな生活のイメージを併せ持ちます。
そのため、お金に余裕があって自分が運転する使い勝手の良い車を探しているけど、上質感や高級感にも妥協したくないと考えている人にピッタリの一台となります。
新車価格
7,940,000円(消費税込み)
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