自動車ニュースサイトの「Automotive News Europe」によると、トヨタとスズキは技術提携に向けた話合いを行っていく事になります。
具体的には、次世代環境技術や安全技術、情報技術の分野でお互いの研究資源を持ち寄りより効率的な研究開発を行います。
次世代自動車技術のための提携
スズキは次世代の技術を開発するための提携先として、当初はドイツのフォルクスワーゲンを選んでいました。ところが両社の経営スタンスの違いから2015年に関係は解消されています。
それに対してトヨタ自動車はすでに国内のマツダやスバルと提携関係にあり、スズキにとってもある程度提携後の環境を予想することができます。
フォルクスワーゲンとの間に起きたトラブルから、次の提携先を探している鈴木にとってこれほど理想的なパートナーはありません。
自動車草創期を支えた二人
スズキの鈴木修会長は「トヨタは最先端の技術を数多く抱える最も信頼できる企業です」と述べています。また、トヨタの名誉会長である豊田章一郎氏とも事前にこの提携について話合ったといいます。
トヨタの豊田章男社長はこの事について、事前に名誉会長から「今日、修さんと逢ったよ」と伝え聞いたそうですが、その時の感想として「自動車の草創期を支えた二人ならではのあうんの呼吸のようなものを感じた」といいます。
自動車に人生を掛けた二人ならではの熱いものを感じます。こういった話は、他のビジネスでは感じられない自動車ならではのものですね。
気になるダイハツの存在
ただ、この提携で一番気になるのは、先日、トヨタの完全子会社となったダイハツの存在です。
国内の軽自動車市場において、このダイハツとスズキは一二を争うライバル企業です。マツダやスバルの様な下位メーカーとの提携とは事情が大きく異なります。
この点について、スズキの鈴木修社長は、会社の経営についてはあくまでも独力で行うことに拘ると言っています。当面は技術の提携のみに限定され、あくまで経営としては完全に独立性を保つというスタンスです。
話を国外の市場に向けると、スズキはインド市場において大きなシェアを占めています。対するダイハツはマレーシアやインドネシアでの販売に注力しており、新興諸国に関してはお互いに補完関係を築ける理想的なパートナーといえます。
トヨタのメリットは
トヨタはこれから成長の見込まれるインド市場で大きく出遅れています。今回の提携を足がかりにインド市場で先行するスズキの販売力を借りることができれば、インドでトヨタ車を売る足掛かりを作ることができます。
今後の可能性
現時点では技術分野のみの提携としていますが、今後の話合いによっては資本提携の分野まで踏み込んで提携が行われる可能性もあります。
また大きな費用の掛かる次世代自動車技術の開発は、スズキのような小さな会社だけでは賄いきれません。そのためスズキとしては大きな経営資源を持つトヨタとの技術提携は、なんとしてでも実現したい案件なのです。
通常こういった提携は、話合いが完全に纏まってから公式に発表される事がほとんどです。それに対して今回の早期発表には、早めに発表する事で要らぬ詮索を受けず、堂々と話合いを持ちたいという双方の配慮が感じられます。それだけ、この技術提携について両社が重要に考えているという事の現れでもあります。
(参考:Automotive News Europe)