世界中の自動車で広く使われているディスクブレーキ
現在の自動車に使われているブレーキは、ディスクブレーキという、キャリパーでディスクを挟み込む構造のブレーキが大半を占めています。
このディスクブレーキは放熱性が高く、ブレーキとしては理想的な特性を持っているからです。
ひと昔前のブレーキは、ドラムブレーキが主流
自動車のブレーキは、運動エネルギーを熱エネルギーに変えて、大気中に放出することで車を減速させる構造です。しかし、ひつ昔前に主流だったドラムブレーキは、その構造上、ブレーキシューが大気に触れていないため、一度ブレーキシューが熱を持つとなかなか冷却されず、フェード現象を起こしやすいという特性を持っていました。また、フェード現象が起きたブレーキでは制動力が得られず、車は減速や停止ができなくなってしまいます。
飛行機技術から生まれたディスクブレーキ
ディスクブレーキは、もともと飛行機の技術から派生した技術ですが、初めはレーシングカーに採用され、その後、一般的な乗用車へとその採用を広げていきました。
放熱性に優れたディスクブレーキ
このディスクブレーキは、ディスクをキャリパーで挟み込んで制動力を発揮する構造のため、ディスクの熱を効率良く大気中に放出することができます。そのため、ドラムブレーキに比べると圧倒的に熱の放出性に優れ、フェード現象が起きにくいという特性を持ちます。
また、最近のディスクブレーキは、この放熱性をさらに高めるため、ベンチレーテッドディスクという構造が使われています。これは、本来、1枚だったディスクを2枚に分割し、その間に20mmほどの隙間を開けてさらにディスクの放熱を向上させたディスクブレーキです。
初期のディスクブレーキは強い力で踏み込む必要があった
初期のディスクブレーキは、小さなキャリパーで大きなディスクを挟み込んでいたため、強く踏み込んでやらないと確実な制動力が得られないという特性がありました。そのため、一部の専門家の間に「ディスクブレーキは制動力が弱い」という誤解を広めてしまいました。
現代のディスクブレーキは強力なブレーキブースターで確実な制動力を持つ
初期のディスクブレーキでも、強く踏み込んでやれば確実に制動力を得られたのですが、現代の車は油圧や電動などのブレーキブースターでアシストが加えられており、小さな力でも確実に車を停止させることができるようになっています。
ただ、走行中にこのブレーキブースターが故障した場合は、普段より大きな力でブレーキを踏む必要があり、とっさの場合には十分な踏み込みを行えない可能性があります。ブレーキの効き具合に異常を感じたら、無理に運転を続けず、速やかに路肩や近くの退避スペースに車を入れて、レッカーなどの救援を要請した方が無難です。