今回の【試乗評価】は「新型 トヨタ マークX 250G(GRX130・2代目・中期モデル)」。
2009年にフルモデルチェンジした、Mクラスの4ドアセダンです。
そもそも「マークX」というモデル名には、「10番目のマークⅡ」という意味が込められてます。つまり、「マークX」は、昭和の時代を席巻したあの名車「マークⅡ」の実質的な後継車種なんですね。
その初代マークXが登場したのは2004年ですから、今(2018年)から15年近く前になります。それまでの地味なマークⅡ路線を打ち破るべく、上級車種クラウン(12代目・ゼロクラウン)のプラットフォームを採用。ワイドアンドローのアグレッシブなスタイリングで、エンジンやパワートレーンも一新され、走りとスタイリングの両方からスポーティなセダンを作り上げてました。
エンジンは従来のストレート6から、クラウン系にも搭載されるV6エンジンに。ラインナップは、2.5リッターと3.0リッターの二種ですが、2.5は従来の2.0とほぼ同じ価格帯に据え置かれてます。プラットフォームからエンジン、スタイリングまで一新されてこの価格ですから、かなりお手頃だと思います。ただ、その分、2代目と比較すれば多少安っぽいところもありましたが。
「2代目マークX」は、そんな先代のプラットフォームを継承するキープコンセプトモデル。全長やホイールベースは先代と変わりませんが、全幅やトレッドが拡大され、走行性能と見た目がグッと良くなってます。
今は箱型ミニバンやコンパクトカー、ハイト系軽自動車が人気の時代ですが、ちょっとだけ価格帯が上で上質感もある、さらに走りもスポーティということもあって、セダンとしてはまあまあ売れている方だと思います。
「新型 トヨタ マークX 250G(GRX130・2代目・中期モデル)」の概要
二代目マークXは、初代よりも全長で4cm、全幅で2cmほど大きくなりましたが、全高やホイールベースは変わりません(しかも総重量まで同じ)。つまり、スタイリングがローアンドワンドになってボディが大きくなったにもかかわらず、剛性をアップさせながらさらに軽量化まで行っているという事です。
エンジンは若干パワー、トルクともに控えめになりましたが、これはプレミアムガソリン仕様からレギュラーガソリンへと変更されたためでしょう。燃費はモードが違うため、単純には比較できませんが、一般的にJC08モードの方が10・15モードよりも1割程度悪くなると言われています。初代マークXの燃費が10・15モードで12.6km/l。二代目がJC08モードで11.8km/lなんで、実質的には二代目の方が若干燃費効率が良いということになります。レギュラー指定ということも考え合わせると、二代目のランニングコストはかなり安いです。
プラットフォームなど
プラットフォーム(車台)は、クラウンやレクサスGSにも使われる、Lクラス後輪駆動車用の上級アーキテクチャー。2004年に登場した初代マークXから使われているんで基本設計はかなり古いですが、、スポーティなハンドリングと上質な乗り心地のバランスは良いと思います。長い年月をかけて熟成されつくしたんでしょうね。
ライバルは
Mクラスの高級サルーンで後輪駆動、しかも4ドアセダンとなれば、BMW・3シリーズやメルセデスベンツ・Cクラス、国内ではレクサス・ISや日産・スカイランくらいしかありません。さらに手頃な価格(300万円以下)で買えるという条件を加えると、実質的にトヨタ・マークX以外の選択肢は無いです。
マイナーチェンジ情報
モデルライフが9年(2018年現在)と長いので、その間、二度の大きなマイナーチェンジが行われています。
一度目のマイナーチェンジは、2012年。外観のアップデートとともにボディ剛性の強化を実施。今回の試乗車はこの中期モデルです。
二度目のマイナーチェンジは、登場から7年後の2016年。外観のアップデートとともに、先進安全技術「Toyota Safety Sense P」が全車に標準装備されました。スポーティグレード「RDS」の追加も行われています。
外観
ボディサイズ、全長1975mmX全幅1500mmX全高1170mm。ホイールベース、2850mm。
2代目マークXの初期型は、「ちょっと地味めのおじさん用セダン」といった印象もあったんですが、マイナーチェンジでぐっとアグレッシブになってます。その分、大人の上質感みたいなのは薄れてますが、このあたりはトレードオフの関係なんである程度は仕方ありませんね。
フロント
今回のマイナーチェンジでフロントまわりが大幅に改良されてます。ヘッドライトは、3つのレンズが連なる上質なデザインから、鋭い印象のスポーティなデザインへ。フロントグリルは薄型の精悍なタイプ。フロントバンパーも大きく口を開けたスポーティなデザインになりました。
上質なまとまりの良さなら初期型ですが、スポーティなデザインが好きなら断然中期型でしょう。
サイド
初期型と中期型でサイドビューの大きな違いはありません。
ロングノーズ&ビッグキャビンのFRらしいスタイリングですが、BMWのようなショートオーバーハング(タイヤからボディ端までの距離が短い)じゃないです。最近のFRにしてはフロントオーバーハングが長く、Cピラー(一番後の柱)は末広がりに拡がる太いタイプ。サイドパネルにハッキリとしたキャラクターライン(ボディを前後に貫く彫刻的なライン)はありません。なんとなく「マークⅡ」っぽい感じがするのは、このあたりのディティールが原因でしょう。
リア
リアコンビランプは、ヘッドライトのデザインを踏襲した鋭利なデザイン。リアバンパー周りに薄いプレスラインを加えるなどの手直しが入ってますが、大きな変更点はありません。
ただし、印象自体はマイナーチェンジの前後で結構違います。フロント同様、前期型には「大人のセダン」といった上質感が漂いますが、中期型はよりアグレッシブな感じです。
内装
しっとりとした樹脂パネルに、上質な木目調ガーニッシュを組み合わせたシンプルな室内。二本のフレーム(シルバー)に挟まれたセンタークラスターが、メカニカルな重厚感を主張していて良い感じです。
メータークラスターには、砲弾型のベゼルを組み合わせた四眼メーター。ちょっと小ぶりなデザインですが、砲弾型のベゼルがクッキリとした陰影をつくりだしているので、視認性自体はそう悪くありません。
センタークラスター
センタークラスター最上段には、エアコン吹出口。その中央にはハザード用のスイッチがあります。緊急時に操作することの多いこの手のスイッチは、手の届きやすいこういう場所にあるのが一番です。
その直下には、ナビゲーションなどを表示する大型ワイド液晶ディスプレイ。最近流行りのフローティングディスプレイじゃありませんが、結構上にあるので視線移動が少なくてすみます。
中段には、エアコンのコントロールユニット。助手席と運転席でそれぞれ温度調整ができるデュアルタイプです。中央に大きな円形の操作パネルがありますが、形が丸いだけで僕の好きなダイヤル式じゃありません。この円形の操作パネル。ナビゲーションの方に張り出しているので、ナビとエアコンを統合的にコントロールするのかと思いきや、ただのエアコン用スイッチでした。といっても、操作パネルはそこそこの大きさがあるので、操作自体はやりやすいです。
シート
フロントシートは、肩周りまで包み込むように支えるデザイン。といってもスポーツシートじゃないですから、適度なゆったり感があって座りやすいです。
リアシートは、体の形にあわせて微妙なくぼみがあり、クッションの厚みも十分。ホイールベースが長いので、足元が広いです。ただ、Cピラー(一番後の柱)が太く、顔の横に若干張り出しているので、頭周りの開放感は少なめ。頭がルーフに当たる程じゃありませんが。
荷室
荷室空間は、幅、奥行き共に広いです。開口部も大きくガバっと開くため、重くかさばる荷物の出し入れも問題ありません。
静粛性
元々、マークXの静粛性は高かったんですが、マイナーチェンジで遮音材が追加され、ボディ剛性がアップしたこともあってさらに静かになってます。
エンジンとトランスミッション
2499cc・V型6気筒DOHCエンジンに、6速ATを搭載。
エンジンは、最高出力203ps/6400rpm、最大トルク24.8kgf・m/4800rpmを発揮。
車両重量1510kg。JC08モード燃費、11.8km/l。
エンジン
2.5リッターのV6エンジンで後輪を駆動(FR)。
2.5リッターは、ハイオク仕様からレギュラー仕様へと変更されました。その分、トータルとしてのランニングコスト(燃費性能とガソリン代)は良くなってますが、出力やトルクは若干控えめです。
といっても、1.5t少々のボディに203馬力ですから絶対的な出力としては十分でしょう。街中を流れに乗って普通に流すだけなら、「ECOモード」に入れっぱなしでも不足はありません。もっとキビキビと走りたければ「SPORTSモード」もありますしね。
上り坂や合流ポイントでも十分に力強いんですけど、流石に、荷物や人を満載して急な上り坂をグイグイ駆け上がるような余裕はありません。そんな「2.5リッターじゃ物足りない!」という人には、パワフルな3.5リッターをオススメします。
V6エンジンといえば、僕が昔乗っていた「マツダ・ランティス」を思い出しちゃいます。モーターのような緻密なフィールで楽しいエンジンだったんですが、マークXのエンジンにそんな面白さはありません。あくまでも実用的パワーユニットといった感じで、アクセルを踏み込んでも多少がさつなフィールが増すだけです。
乗り心地とハンドリング
前輪にダブルウィッシュボーン式サスペンション、後輪にはマルチリンク式サスペンションを装備。
乗り心地
装着タイヤは、215/60R16。
マイナーチェンジでボディ剛性の向上と、新たに微振動感応型ショックの採用を実施。ストロークのある足回りがボディに硬く組み付けられているので、乗り心地が良いです。嫌な微振動も少なく、スッキリとした感じです。
FRならでなの優れた前後重量バランスと、絶妙なボディコントロールによって、うねりのある路面でもフラットな姿勢を維持。右へ左へとコーナーの連続するワインディングに持ち込めば、ヒタヒタと気持ちよく走り抜けちゃいます。ハンドリングを損なわず、乗り心地を向上させているのが素晴らしいですね。
ハンドリング
FRらしい素直なステアリングフィールが気持ち良いです。スポーツカーのようなキビキビ感こそ無いものの、穏やかな反応の中にもリニアな素性の良さが見え隠れしてます。250Gはソフトな足回りなので、若干ステアリングフィールにしっかり感とか重厚感が足りません。まあ、この辺りは好みもあるので一概には言えませんが。
快適性とハンドリングとのバランスを重視するなら、250Gのような16インチタイヤ装着。スポーティなハンドリングを楽しみたいなら、18インチタイヤを装着した「RDS系」が良いでしょう。
最小回転半径は、5.2m。ボディサイズの割に、小回り性能は高いです。
【試乗評価】のまとめ
「新型 トヨタ マークX 250G(GRX130・2代目・中期モデル)」は、ちょっと上質でスポーティなMクラスの4ドアセダンです。
今やこのクラスで希少なFRレイアウトを生かして、素直なハンドリングと上質な乗り味を得てます。今回のモデルチェンジで、全長および全幅がわずかに拡大され、室内や荷室も大きくなりました。
モデルチェンジは今から10年近く前の2009年ですから、最近の車としてはかなりロングランな方でしょう。といっても、その分、二度のビッグマイナーチェンジを経て、相当熟成されているのも事実。次のモデルチェンジでFF化されるという噂もありますので、上質な大人のFRセダンを手頃な価格で探しているという人は、これが最後のチャンスかもしれません。
「家族のために使い勝手の良い車を探しているが、上質感とかスポーティな味わいも欲しい」と考えているお父さんや、「所有感をそれなりに満たしつつ、コストパフォーマンスの良い足車を探している」なんてシニア世代にピッタリな車だと思います。
中古車市場では
2017年式「トヨタ マークX 250G(GRX130・2代目)」で200万円台前半。2014年式なら150万円前後となります(2018年11月現在)。
新車価格
2,916,000円(消費税込み)